第4話 惑星デザルトム十年前
採掘場に、けたたましいサイレンが鳴り渡る。出稼ぎの作業員である幼体の虫人達が顔を見合わせる。
「なんだ?」
「何事だ??」
「朝、所長が言ってただろうが、久しぶりに人族の新入りが送られて来ると。それよりも作業を続けるぞ」
幼体のなかでも一際大柄な個体が、ざわめきながら身を捩らす仲間たちに声をかけた。
「稲妻のアニキ…人族って事は…俺たちと違って…」
「ほら、ポートに軍の輸送機が着くようだぞ」
イナズマと呼ばれた大柄な幼体が無数の短く蠢く脚の代わりに頭部を向けて指し示す。
「軍の輸送機ってことは、やはり囚人??」
「そうだな、採掘場送りの重罪人だろうな…五十年ぶりの」
興味が無いとばかりにイナズマは、仲間の方を見もせずに応え、身に纏った二機の特注のブレイカーを振り下ろすのであった。
デザルトムの採掘場で産出される鉱石は、可燃性が強く圧力に弱いため大型の掘削機などが使えず昔からツルハシなどをつかった人力の手掘りが主流だった。
鉱夫の賃金は高給ではあったが、鉱石の性質上爆発等による死亡事故が多く、人手不足を補う為に生死を問わない重罪人が当てられていた。
しかし近年は多くの偽善団体などの圧力で、その数も減っていた。
そこに目をつけた幼体の虫人が削岩機を胴にくくりつける事によって採掘するスタイルで多く入り込むようになっていった。
普通の人族と比べ、例え幼体であっても頑強で力もある彼らは、手先の使えない幼体の姿でも出来る割の良い仕事にしか過ぎなかったからである。
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