「少年、力が欲しいか?」不遇バッファーの独身町エルフは今日も少年を騙す

@paniesan

第1話 私だけの魔法

私が冒険者パーティを追放されたのに深い意味はない。

パーティメンバーを追放するのがこの迷宮都市で流行っているからだ。

きっとそうだ、そうに違いない、そうでなければ私が街外れの公園で初心者パーティの少年を騙してバフをかけて貢献度で経験値を稼がなければならないこの状況に説明がつかない。



精霊と戯れ森の恵みを甘受する森エルフの里で育ち、陽の光の下で毎日を華やかに暮らす生活に耐えれず町に逃げ冒険者ギルドに登録したまではよかったんです。

まさかバッファーが不遇だなんて思うわけないじゃないですか。


私のことを守ってくれるかっこよくて爽やかな剣士様を強化して頭なんて撫でられて感謝されて、いつもはちょっと冷たいけどいざ戦闘が始まると私の前に立ってあとは僕の仕事だって魔法で敵を薙ぎ払う中性的な顔立ちの魔法使い君なんかに囲まれてお姫様みたいに扱われると思ってましたよええ。

けどそういう人たちはそういう人たちでパーティを組むんですよね。


いざ私の冒険者ライフが始まると思ったら、

パーティを組めなかった新人に対するギルドからの救済処置で、素行不良で村から追い出されたゴブリンのような顔立ちのチンピラに、オークのような体つきの家から追い出されたひきこもり、そんな2名と組まされましたよ。


もとより暴力に抵抗が無く恵まれた体躯を遺憾なく発揮するチンピラ。

想像力が強さに直結する魔法職として持ち前の想像力を活かし様々な魔法を繰り出すひきこもり。

唯一使えるバフをかけたら後ろで隠れ、バフした分の貢献度で経験値を頂く私。

初心者認定が外れ単独でのダンジョン入場が許可される5階層のボスを討伐した次の日めでたく追放されましたとさめでたくないわ。


私が使える唯一の魔法、【スワロウエレメント】エルフの中でも特に精霊に近い存在にのみ使える、一時的に身体能力と精神力を上昇させるバフ、これだけ聞けば強いと思うじゃないですか、引く手あまただと思うじゃないですか。

実際は戦士職なら誰もが使える筋力を上げる【ウォークライ】や魔法職の使う精神力を上げる【コンコード】の5分の1程度の上昇値ですしなんならそれらは使い手の熟練度で性能が青天井なんですよ。

一方スワロウエレメントは、付与対象に私自身の加護をつけるため私の細腕分の筋力補助にしかなりませんし集中力があんまりない私が試験前日の時にする集中力それもすぐに部屋の掃除とか始めちゃうその程度の集中力を底上げする程度です。

しかもたちが悪いのが私の¨加護¨を付けるがゆえに他のバフを上書きするし効果時間中他のバフが乗らないんですよね・・・。


けどあれですよ?普通の補助魔法の効果時間は精々30分程ですけど私の加護は1日持ちますからね?

余計に迷惑?加護ではなく呪詛?やめてください私はダークエルフではなく立派な市民権を持つ町エルフです。

この現状を変え理想のパーティを作り毎日野草と硬いパンの生活を脱却するためにはレベルを上げて新しい魔法を覚えるしかないと思うのです。


そんな私ですが1人で迷宮に潜れる筈もなく今日も迷宮帰りの初心者の少年に夕暮れの公園で強者感を出しこういうのです。


「少年、力が欲しいか?」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「少年、力が欲しいか?」不遇バッファーの独身町エルフは今日も少年を騙す @paniesan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ