蟹装備
「よし、こんなところでいいか?」
『おお! マスターすっごいかっこいいですよ!』
「そうだろそうだろ~」
そう言って俺は、その身を包んだ鎧と剣を眺めたのだった。
俺はあの後、装備一式といくつかの道具をクラフトした。
そのうちの一つが、上着と、ズボンだ。草の繊維を崩して作っているため、草をそのまま使ったものよりも着心地が良くなった。
次に簡易的な下着だ。
正直いらないだろうと思っていたのだがナビから『女の子の体はデリケートですからっ!』と言われて作らされた。
そしてそんな服の上から、俺は鎧を纏っていた。
材質は……そう、先ほどの島で手に入れてきた蟹の古い殻だ。
鎧の上半身は、一つの殻が胸を覆うようにつけられ、両腕には小手のように蟹の殻が付けられている。
背中側には、殻はなく、動きやすい軽装になっている。
下の方はスカート呼ばれる腰の装甲と、ふくらはぎから下を全て守る硬い外骨格のブーツを履いていた。
「それに~、この剣! めっちゃカッコいい!」
そう言って俺は、腰につけていた剣を引き抜いた。
形として、まるで海賊が使うようなサーベルと呼ばれる剣に似たその剣は、木で作られた持ち手に、蟹の甲羅で作られた刃を持っている。
単純な構造になっているこの剣だが、その刀身はまるで鉄で作られた剣のように鋭く、触るだけでキレそうなほどの輝きを放っている。
『まさか、カニの甲羅が七色に輝くようになるとは思いませんでしたよ』
「だよなー」
そう言って俺が振り下ろすと、木の板がすっぱりと切れる。
「切れ味も凄いし」
『ですね』
そう言って俺は、蟹の甲羅で作られた鞘へと剣を仕舞った。
魔物の死骸から作った、まさに異世界定番の魔物装備。
ロマンofロマンッ! 最高にカッコいいなぁ……
「……さて」
そう言って俺は、蟹装備を脱ぐ。
チェストプレートを外し、ブーツを脱ぎ……剣を置く。
『あれ? 脱いじゃうんですね』
「いや、だって……嵩張るし、見た目より重いし……ぶっちゃけ今使わないし……なんか、ね?」
『まあ、そりゃそうですよね……なんで作ったんです?』
そう言われ、少し考え……答える。
「しいて言うなら、かっこいいから?」
『なるほど、わからん』
……まあ、分からなくていいよ。
趣味だし。
『全く、なんでそんな使わない物を作ったのか……』
「……まあ、いつかは使うでしょ……たぶん」
『そうですかね? いや、そうですね……たぶん使うことになるでしょう……おそらく』
そう言って、地面に蟹装備を置くと他に作った道具を持って二階へと向かう。
実は俺は、蟹装備以外にも複数の道具を作っていた。
それこそまさに食器や、ナイフなどの道具である。
俺は、キッチンの隣にある、部屋に入ると【船体改造】を使用する。
瞬間そこはボロボロな部屋でありながら、立派な机といすの置かれた食堂へと様変わりした。
俺はそうして作られた机の上に、フォークや皿などを置いていく
「小さなナイフと、フォーク……後木材の皿と……よしこれでOK」
そうして、並べられた食器に、俺はさっそく島で取ってきた果物を置いていく。
因みに、蟹の肉も置くか考えたが……試しに食べた時クソまずかったので候補から外れてしまった。
普通に土の味しかしなかったからな……アレ。
そんなことを考えながら、俺は果物を並べ終えた。
「こんな感じで……よしっ!」
我ながらいい感じに並べられたのでは?
そう、自画自賛をしていると……ナビが話しかけてきた。
『あの、マスター……ちょっといいですか?』
「へ? なに」
『その……置き方がダサいです』
そうナビに指摘された。
そんなにダサいか? 俺の並べ方。
『いやもう、ぐちゃぐちゃですし……果物がまるでかわいそうなほどの並べ方ですよ……センスないですね、マスター』
「は、はぁ⁉ そ、そんなことないだろっ!」
『いいえ! そんなことありますよっ‼』
「な、何だと―‼ だったら、ナビがやってよ‼」
『分かりました、やりますともっ‼』
そう言って、俺の体をナビは動かして、果物を並べていく。
しばらくして、果物はまるで宝石のような輝きを放って机の上に並べられていた。
『どうですか?』
「お、おぅ……ぶっちゃけ言うと、凄いです」
『ふふんっ、そうでしょうそうでしょう?』
俺は少し、ナビを見直したのだった。
そして、そんなことがありながら食事の準備を終え甲板に上がると、丁度起きてきた幼女ちゃんを準備が終わったばかりの食堂へと迎え入れたのだった。
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