骸骨は美少女だった。
少し時間は遡る。
「さて、肉片を手にいれたし……早速改造始めるか」
そう言って俺は【船体改造】を開く。
「……はてさてどんな感じの見た目になるのやら」
『できれば、いい見た目にしてくださいお願いします』
「あ、ナビちゃんもそう思うんだ」
『そりゃそうですよ、私って言わばマスターの一部なわけじゃないですか? つまり、マスターの見た目=実質私と言っても過言ないわけですよ。そりゃあ、できれば自分の見た目はいい方がいいじゃないですか』
「……そう言う物なの?」
『そう言う物なのですよ』
そう言って頷くナビ。
ところで、ナビはおそらく忘れてるんだろうけど……一応言っておく。俺の本体って別に骸骨じゃなくて、船の方なんだよな………つまりは、俺の見た目=ナビの見た目なら、ナビの見た目はこのボロボロの沈没船ってことになるんだよね。
……まあ言わぬが吉って言うこともあるだろうし、黙っておくか。
そう思いつつ【船体改造】……基、骸骨の改造を開始する。
「……それじゃ、スタート」
そう言って【船体改造】を使用した瞬間、樽の中に詰められた蟹の肉が俺の周りを飛び、俺の体を作っていく。
筋肉、内臓……そして肌と。
さながらその姿は、某巨人の漫画の巨人化のようなグロさがあった。
「……おお、なんか変な感じ」
そう言っている間に、身体の構築があっという間に完了した。
「うーん、肌感は……あまり変わったようには思えないな」
そう言って俺は、細くて小さい手を開いて閉じてを繰り返す。
『あ、髪の毛も作られるんですね』
「あ、本当だな」
そう言って俺は風に揺られる髪の毛に触れてみた。
赤色……暗い赤だ。
「まるで血みたいな赤だな」
俺がそう感想を漏らすと、ふと思いついたかのようにナビが呟いた。
『それにしても、ノリで改造しましたけど……冷静に考えると変な感じですよね。だってこれ蟹の肉ですもん』
「そうか? 人間に限らず動物は別の動物とか植物の体を自分の細胞に作り変えてるわけだし……そんな変な感じでもないんじゃねえか?」
『そう言われれば、そうなんですかね?』
そう言って頷いた俺は、それにしても……と改めて自分の体を見た
「この骸骨、女だったんだな」
そう言って、自分の姿を見た。
細い手足に、少し膨らんだ突起のある胸、股間はツルツルで、慣れしたしんだ突起はない。
そんな丸みを帯びた、女の子の体となっていた。
しかし……あれだな、それは分かるけど顔の方はやっぱこのままじゃ見えないか……鏡とかあれば顔を見れるんだが。
『そうですねぇ……むさくるしいおっさんではなかったみたいです。それに顔も……文句ないほどの美少女ですし。ってか、マジで可愛すぎるんですがこれは』
そう思っていると、ナビが突然そう言った。
「え? ナビ俺の顔見れるの?」
『ん? ええ、船の方に視線を変えてますから客観的に見えますよ』
「……? ああ、そう言う事」
ナビの言葉に、俺は「なるほど」と呟き、ナビと同様、俺も本体の方に視線を飛ばす。
(えっと、どこ……あ、いた……って――)
腰まで伸びた赤い長髪、釣り目気味の青い瞳。
まるでアニメキャラが現実世界に飛び出してきましたと言わんばかりに整った顔立ちをしている。
(どちゃくそ可愛いじゃねえか⁉)
『ですよねっ⁉ マスターもそう思いますよねっ‼』
そうナビがハイテンションで話しかけてくるが……ナビがハイテンションになるのもわかる。
俺も凄いハイテンションだもん。
(……ん? そう言えば、この子って船の檻で手枷繋げられてたんだよな?)
『え、ああそう言えばそうでしたね』
(なんというか……なんというかだな)
凄い、エッな同人でありそうなシチュエーションだったのかもしれない。
拘束されてあんなことやこんなこと……
「……まあ……うん……と、とりあえず見た目が整ってて良かったか? これだけ見た目が良かったらあの子も怖がらない……だろ?」
『あ、中に戻ったんですね……それじゃ私も。……そうですね、少なくとも悪感情は抱かないと思いますよ。可愛いって正義ですし』
そう言ってナビと俺は骸骨……いや、美少女の中に戻る。
『それにしても、身体は出来上がりましたけど……今全裸ですよね?』
「まあ、そうだな」
『最低限、服を用意しといたほうがいいんじゃないですか? あの子が起きる前に』
そう言われて、俺も頷く。
「そうだな……」
『あ、でも服ってどうやって用意すればいいんですかね? ハンモックの残骸とかは残ってますけど……服の方は一通り見た感じなかったですし』
そう、ナビが言っている中で俺は【船体改造】を操作して新しい施設を作る。
「ああ、それについては考えてあるんだよな」
『ほう? 考えとは?』
「ほら、さっき島で蟹とか果物以外にも木材とか、後植物取ってきただろ?」
『そう言えば取ってましたね』
「アレと使って服とか作れるんじゃねえかって思ってな」
『まあ、作れるとは思いますけど……加工めんどくさいですよ? 道具とかもないですし』
「まあ、今はないけどよ……【船体改造】でそれっぽい施設あってな。木材と、最低限の資材があれば……よし、できた」
そう言って、俺は船に新しい施設が完成したのを見てにやりと笑った。
「それじゃ、道具作りでもすっか!」
そう言って俺は、新たな施設『作業部屋』へと向かったのだった。
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