赤髪の美少女

「……貴方、貴方の目的はなんですか?」


 そう、私は目の前の骸骨に問いかけました。


「私の目的? 決まっているだろう? お前を生きたまま喰うんだよ!」


「ひ、ひぇえぇええ」


 …………

 ………………


「骸骨……骸骨が、骸骨がぁ……おそってこないでくださいぃ……わたしをたべてもおいしくないよぉ……………う、うーん。はっ、夢でした……」

 

 いやな夢を見ました……最悪な目覚めです。

 そう思いながら目を覚ました私は周りを見渡す。

 

 ボロボロの壁に床。見るからに古びて、今にも穴が開きそうな木造の部屋です。

 部屋の端には、壊れた家具や、何かの布? が積み重ねられていて……正直に言って、あまり清潔感があるとは思えなかった。


 ここは何処だろう、記憶があいまい。


 そう、記憶の糸を手繰り寄せていた私は、潮の匂いを感じ……そして、思い出した。


 私が乗っていた船が嵐によって沈没してしまったという事を。


「そうだ、私が乗ってた船が嵐で沈没して、それで……私だけが生き残っちゃったのか」


 誰もいないから、もしかしたら生きているかも……そう思ったけど、でもそんなことを思ってしまった。

 私しか、生き残れなかったんだって。


「みんな……みんな……死んじゃったの? 誰もいないの?」


 ぐすんと、鼻を鳴らして、毛布を手繰り寄せる。

 

 そうしてしばらく泣いていた私のお腹が、グゥ……と小さく鳴った。


「……お腹すいた」


 お腹がキリキリと痛むほどに、お腹が空いていた私は、ふとどこからかいい匂いが漂ってきていることに気が付いた。


「……いい匂い」


 私は、その匂いに釣られるようにして、立ち上がり……部屋の扉に手をかけた。


「……あ、開いてる」


 そう言ってノブを回して外に出た瞬間、私の髪を潮風が撫でた。


「……船の上?」


 どうやら、この船は現在島の付近に停泊中の様だった。


「凄いボロボロ」


 私は船を見てそう思った。


 マストは今にも折れそうで、帆は破れ、穴が目立つ。

 甲板を見てみると、穴だらけで……とてもじゃないが、まともな船と思えない。


 そんな船を思って、ふと私は物語に出てくる幽霊船のお話を思い出した。


「はっ……ま、まさか……私……幽霊船に乗ってるの⁉」


 そう言って私はガクガクと体を揺らして、ふと夢の事を思い出した。


『お前を、喰ってやろうか~』


 そう言って、カタカタと迫ってくる骸骨。


「も、もしかして……骸骨って夢じゃない?」 


 そう思っていると、カツリカツリと音を立てて、甲板中央の階段から誰かが上がってくるのが見えた。


「ひっ、は、早く逃げないとっ……」


 そう思って、歩こうとするが、完全に腰が抜けてその場に転んでしまった。


「大体お前は……って、ん……起きたのか」


 声の主は、私が転んだ音を聞いて私に気が付いたのか声をかけてきた。


「ひゃっ……ころしゃないでっ」

「いや、殺さないよ」


 そう言って声の主は、目を瞑って震えている私の元へとゆっくり近づいてくる。


 コツコツと足音を立て……やがて、その声の主は私の前で立ち止まった。


「あぁ……あんまり怯えないで……ほしいなぁ……って?」


「……喰べないでぇ」


「いや、食べないって⁉」


 本当に?

 そう思って、私は少し目を開ける。


 そんな警戒心Maxな私を見て、、その人は何処か困ったように言った。


「まあ……なんだ、とりあえずご飯できてるからよ………一緒に食べねえか?」


 そう言って、その声の人は……私の目の前で手を差し出した。

 

 人の腕……骸骨じゃない。

 お化けじゃないの?


 そう思って怯えつつ、ゆっくりゆっくりと私が顔を上げるとそこには、赤い髪のお姉さんが立っていた。


「わぁ……」


 凄い綺麗な人……

 

 真っ赤に染まるその赤髪は腰まであり、青い海のような瞳は強気に吊り上がってる。だ

 整った顔立ちに、細身の体……そんな彼女は、私を見て元気にニカっと笑っていた。


 



 ……それからしばらくして、私は、そのお姉ちゃんに連れられて、食堂の方に通された。

 通された食堂ではすでに食事の準備がしてあった。


「凄い…おいしそう……」

「そいつは良かった」


 思わずそう言ってしまうほど、豪華な食事だった。

 果物しかない……けど、甘いもの好きな私にとっては最高だった。


 赤髪のお姉ちゃんはそんな目を輝かせる私が座りやすいように椅子を引いてくれ、私は座る。


 ……じゅるり。はっ、駄目駄目。私はお姫様……はしたない事なんて……じゅるり。


 そう、よだれを垂らしている私を見て、お姉さんはニコッと笑って言った。


「お腹空いてるだろ? 食べていいぞ」

「はいっ!」


 そう言って私は、果物に手を伸ばす。


 手に取った、そのオレンジの果実は一口かじっただけでみずみずしい甘さを口の中いっぱいに広げてくれた。


「……はぐっ、はぐっ」


 美味しいっ。おいしくて……美味しい!


 そう言って、私は無我夢中で果物を頬張る


「喉に詰めないように気を付けろよ?」


「はーい」


 そう返事して私はは果物を食べ続けた。


 ……そう言えば、夢の中で出てきた骸骨と声がおなじだけど……きっと気のせいだよね?

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