島の探索

 森へと足を踏み入れて数分。

 俺は、森の中を進みながらナビと話をしていた。


「……うーん、森だなぁ」


『森ですね』


「木ばっかだな」


『木ばっかりですね』


「動物居ないね」


『動物居ませんね』


 そう言って俺たちはため息をついた。


「こんなにいない物なの? 動物って?」


『うーん、どうなんでしょうね? もしかしたら、マスターという得体のしれない存在に対して警戒しているとかかもしれませんね……』


「それかな~?」


 そう思って歩いていると、反対側の海岸に出てしまった。


「あ、もう海岸か」


『意外と短かったですね』


 そう言って俺は頷き、腰掛けた。


「うーん、しかし……思ったようにはいかない物だね」


『まあ仕方ありませんよ、っていうかふと思ったんですけど、今のマスターって丸腰ですよね? どうやって野生動物を狩ろうとしてたんですか?』


「え? どうって、そりゃ……この腕っぷしで?」


 そう言って俺は骨の腕を叩いた。

 カランといい音が島中に鳴り響く。


「……いや、分かってるよ? 無謀すぎるってことだろ、ナビが言いたいのは。いや、まあ確かに……少し無謀すぎたかもしれないけどさ、できる可能性……って、ちょっと聞いてるか⁉」


『聞いてませんよ……はあ、そもそも最初から無謀だったってことでしょうね』


「うぐっ……」


 そう言われて俺は、小さくため息をついた。


『……とりあえず、果物とかはありましたし、それ取って船に戻りましょうか』


「そうだね」


 そう言って俺は立ち上がって、来た道を引き返す。

 森の中はやはりというか、木々がうっそうと茂っており、歩きづらさがある。


 ツタをかき分け先に先にと進んでいると、行きの時には気が付かない洞窟があることに気が付いた。


「あれ? こんな洞窟あったっけ?」


『いえ、来た時には見えてませんでしたね……おそらく、この角度だと来たとき完全に死角になってて気が付かなかったんでしょう』


「ねえナビ……」


『ん? 何でしょうか?』


「せっかくだしさ、少し入ってみないか?」


『なにが折角か分かりませんけど……入りたいなら入ってみてはいかがでしょうか?』


 そう言うとナビは何処か呆れたようにしつつ言った。


「ああ、それじゃ入ってみるか!」


 そう言って、俺は洞窟の中に入って行く。


『あ、でもあまり奥まで行かないでくださいよ。船に小さな子供一人でいるんですから』


「分かってるって、よっと」


 そう言って、俺は洞窟を進んでいく。


『……ふむ、なんというか泥が多いですね』


「泥?」


 俺はそう言って、壁を触る。


「確かに……これ、泥だ」


『おそらくは、海近くなので海水が地下までしみてるか……いえ、上に森があったことを考えると地下水がしみだしてるんでしょうね』


「そっか……あれ? ってことはこれ真水ってこと?」


『おそらくそうでしょう。やりましたね。貴重な水分ゲットです』


「うーん……そうかもしれないけどさ、別に俺って水必要ないからな……」


 そう言うと、ナビは何処か呆れた様な声を出した。


『何言ってるんですか、貴方の為の水じゃないですよ。女の子の分の水分です』


「ああ、そう言う事」


『ええ。確かにマスターは水分を必要としない身体であることは変わりありませんが、あの女の子はただの人間です。水分や食料、助けるのでしたら他にも様々な物が必要になってきますよ?』


 ナビからそう言われ、それもそうだな……と俺は納得した。


 そんなことを話しながら先に進んでいると、洞窟は突然その広さを増した。

 高さは三メートルくらい、奥行きは七、八メートルはありそうだ。


「ここで行き止まりみたいだね」


『そうみたいですよ……あ、マスターあそこ見てください。何か奥にありますよ』


 そう言って奥の方に俺も目をやると、そこには大きな何かがあった。

 表面はごつごつとしており、一見すると周りの土の壁だとも思えるが、何か違う。


「何だろう? 岩かな?」


 そう思って俺はその物体へと近づいて行く。

 

 そうして、三メートルくらいの距離となった時……俺は気が付いた。


 これが、だという事に。


「……これ、岩じゃないっ⁉」


『たたた、大変なことになりましたよ⁉』


 そう言って俺と、ナビは焦り始め……そして俺は、その生物の名を呟いた。


「こいつはデカい……蟹だっ⁉」

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