島へ上陸

「それじゃ、色々と素材を集めなきゃいけないわけだけど。どうやって集めよ?」


 そう言って海を見下ろす。

 船の下には、小さな魚の魚群が見えるが……


「動物性の肉なら何でもいいのかな?」


『おそらくそうだと思いますよ?』


「だったら魚でも大丈夫なのかなぁ?」


 そう言うとナビは苦言を呈した。


『魚……まあ試してみてもいいですが、どうやってとるんです? 釣り竿なんてありませんよ。やるとしたら手づかみですが、体一つ分+食料分を取るのは骨が折れますよ』


「そっか、まあそうだよな」


『あ、あと骨で思いましたが、今のマスターは水にすぐに沈みますからね。魚の速度に追いつけるとは思えません』


「そうな……え? 俺水に浮けないの?」


『ええ、普通に立ってたら沈みますよ。骨ですし』


「え、でもさっきは海に浮けてたじゃん」


 そう言うとナビは『ああ、あれは……』と衝撃のネタバラシを説明した。


『……あれは私が足を高速でバタ足させ、その水圧で無理やり体を浮かせてたんですよ。まったく、大変でした』


「そ、そうなんだ」


 そんなカラクリがあって浮かんでたのか……


「……ってまって、今『私が』って言った?」


『ええいいましたね』


「まさかと思うけど、ナビってこの骸骨の体動かせるの?」


 そうナビに訪ねると……


『あ、はい。なんかできましたね』


「いや、すごいあっさり」


 そう言った時、左腕がいきなり動いた。


『ほら、こんな感じに』


「へぇ……変な感覚だな」


『とまあ、こんな感じに足を動かしてさっきは浮かんでいたんですよね~』


「へぇ……でも、そうなると浮かべるから魚取るのもできるんじゃないの?」


『いや、まあ……無理すればできるとおもいますけど、ですがマスターそんなことしなくてもいいと思います』


 そう言うとナビは左腕を動かして、一点を指さした。


『近くに陸地があるじゃないですか』


 そう言われて、ふと島を見る。

 小さいながらも、小さなジャングルがあり、ここから見えるだけでも果物などが取れそうなのが分かる。


「確かに、無理やり足を動かして浮かんだりしなくても陸地で資材を集めればいいのか」


『そうですそうです……それに、獲物が取れなかったとしても釣り竿を作るために必要な素材を集めることもできるはずです』


「なるほどね~」


 だったら行くか、島に。

 そう言って俺は島の方へと顔を向けたのだった。


 …………

 …………


 青い海、白い砂浜!

 まさに南の島って感じだな~。


『やっぱり浮力があると楽でいいですね』


「だな~」


 島へと上陸した俺たちは、そう言って持ってきた樽をそばに置いた。


「本当は小舟の方が良かったけど……」


『もう素材がありませんでしたからね』


 そう言って俺は頷いた。


 そう、俺は本当は樽ではなく、【船体改造】にて制作した小舟で島に上陸しようとしていたのだが、残念ながら浮いている木材では素材が足りなかったのだ。


 ……尚、【船体改造】って名前のくせして、別の船作れるのかって話だけど、上陸用の小舟だから船の設備扱いになっているのだろう……たぶん。


「……まあ、兎も角だ。島に上陸できたわけだし……探索しに行くか」


『そうですね……あ、そう言えばなんですけど。その骸骨、船から離れても行動が可能なんですね』


「あ、言われて見ればそうだな」


 そう言って俺は遠くに見える船を見た。


「うーん、感覚だが……まだまだ離れることはできると思うな。やっぱりこの骸骨有能アイテムなんじゃなかろうか?」


『そうですね~、私と同じくらい有能だと思います』


 そう、ナビが言ったのを聞いた俺は少し首を傾げた。


「……有能かな?」


『え? いま、骸骨有能だって言ったじゃないですか』


「いやそっちじゃなくて……」


『うーん? ……はっ⁉ まさか、私のこと言ってます⁉』


「……とりあえず、島を探索しようか。あの子も起きちゃうだろうし」


『ちょっと、マスター私って有能スキルですよねぇ⁉ 大体、マスターは変な誤解していて……』


 そう言って俺は『ワーワー』騒ぐナビを無視して、森へ入って行く。

 ……とりあえず、果物とか取って行ってあげるか。何も食べてないだろうし、ココナッツとかいいのかな?


『ちょっと、マスター無視しないでくださいよっ!』


「さーて、何が見つかるかな~」


『聞けよっ! このマスターがあーーーーーー!』



 こうして、俺と騒がしいナビの島探索が始まったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る