幼女とキスっ⁉

「……さてと、もうやることはやったかな?」


 そう言って、俺は【船体改造】にて制作した簡易的なベッドに幼女を寝かせてそう言った。


『マスター……まだ、まだです。まだ肝心の事をしてませんよ?』


「肝心の事って?」


『マスターまだキスをしてませんよ?』


「ふぇっ⁉ ……って、人工呼吸の事?」


『いえ、違いますよ。キスです。普通のチューです』


「何言ってんのあんたはッ⁉」


 そう思わずナビに突っ込む。

 

『だってほら、おとぎ話のお姫様ってキスで目を覚ますじゃないですか。この世界の女の子もキスで目を覚ますんですヨー』


「へ? マジ?」


 そうナビに言われ、俺はごくりと喉を鳴らす。

 キスか……キスで目を覚ますのか。


 褐色の肌の上に浮かぶ、ぷっくりとした小さな唇。

 

 ……こ、これは別にやましい行為じゃないんだ。その~医療行為……そう!この子を助けるために行う行為なんだ!


 決して合法的にロリとキスできてヤッホーなんて思ってないからな!


『まあ冗談なんですが』


「……冗談、まあそうだよな」


 そう、キスをしようとしていた俺は、ナビのその言葉にガクリと思わず肩を落とした。

 別に、ロリと合法的にキスできなくなった、ガーンなんて思ってないからな……。


 そんな俺の様子を見て、ナビはニヤニヤと笑っているように感じた。

 ってか絶対笑ってる。


 だって……


『え? もしかしてマスター本気にしちゃってました~w いやー、キスで目覚めるとか、そんなわけないでしょ~……ププー』


 こんなこと言ってるもんな。


「こ、こいつ……」


 そんなことをしていたら、ベッドの上でもぞもぞと少女が起き上がった。


「ここは……ひっ……っ」


 幼女は、起き上がり、キョロキョロとあたりを見渡していたが、俺を見つけビクンッと、身体を縮こませた。


 幼女は、まるで怪物に襲われるとでも言うような顔で、目に涙を浮かべ、過呼吸を繰り返している。

 いや、何もそこまで怖がらなくてもいいじゃ……


「あ、そうだ……」


『そう言えばマスター骸骨でしたね』

 

 そうだ、今の俺骸骨だ。

 そこまで怖がらなくてもいいじゃねえよ。普通に骸骨が居たら怖いわ。

 しかも、ただでさえあるだけで怖いのに動いてるわけだからな。


 まあでも、これは慣れて貰うしかないか?

 とりあえず、フレンドリーに話しかけてみるか~。


「安心して……俺は悪い骸骨じゃないよっ!」


「っ!」


「って言っても、やっぱり怖いものは怖いよなー」


 そう言って俺は、カタカタと頬をかく。

 肉はないから正確に言えば頬骨だが。


「……貴方、貴方の目的はなんですか?」


 どうしようと悩んでいる俺に、幼女は震えながらにそう言った。


 も、目的?


 別に、目的なんてないけど……しいて言えば、助けただけなんだけどなて……


「別に目的なんて、しいて言えば君を助けただ……」


「ぜ、絶対に屈し屈し……きゅ~」


 そう伝えようと口を開いた瞬間、幼女はそう言って白目をむいて気絶した。


「大丈夫⁉」


 倒れた幼女を抱きかかえそう声をかける。


『安心してください、ただ気絶しただけです。まあ仕方ありませんよ、漂流で体力を消耗して目が覚めたら目の前に骸骨がいて……普通なら気絶位しますよ』


「そっか、それは良かった」


 そう言って俺は胸をなでおろす。


「……とりあえずまた目を覚ますまで待つか」


『そうですね……あ、次に目を覚ました時の為にこの時間でご飯作ってあげておくのはどうでしょう? 何も食べてなくて、お腹すいてるでしょうし……それに、ご飯を用意すれば、多少は警戒もほぐれるでしょうから』


「あ、それいいね。あ、あと料理もそうだけど、この見た目を変えておきこうか」


『見た目を変えるですか? ……服でも着てってことですかね?』


「まあそれもあるけど……」


 そう言って俺は【船体改造】の画面を開く。

 確か骸骨の見た目を変えられる改造オプションがあったよな。


 俺がそうナビに言うと、ナビもまた『そう言えば、そんなのありましたね』と言った。


「確か……ほらあったあった。この骸骨の生前の姿を取り戻せれば、多少は恐怖もなくなるだろ?」


『分かりませんよ~、筋肉モリモリマチョメンの変態になってしまうかもしれませんよ~?』


「それでも骸骨よりはいいでしょ~……とりあえず、必要な素材は……動物の肉か~」


 そう言って俺は、諸々の用意をするために部屋を後にしたのだった。

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