第14話 怪しい通路

 悲劇を乗り越え、準備をすませた俺たちは自 室セーフゾーンを出た。


「さあ、行こうか」


「そうですね」


 ユッキーさんはうなずいた。


 なお俺のユニークスキルタオル巻きし者は、カバンは大丈夫だが靴下と下着はダメらしい。昨夜パンツ一枚に腰タオルを試してみたのだが、いつもより動きが鈍くなっていた。靴下も同様であり、どうやらそれらは着衣状態であると判断されるらしい。


 つまり、いまの俺の姿は昨日に引き続いて全裸にタオル一枚。おかげでユッキーさんはふたたび俺から顔を逸らすようになっていた。


 でもしかたない。この状況を生き残るためにはぜひともユニークスキルの力が必要なんだし。だいたい、人としての尊厳ならついさっき破壊されている。つまり俺には失うものなどなにもない……ハハッ!



コメント

・腰タオルニキ泣くな

・ユッキーとニキの芸人気質が呼び寄せた悲劇

・おもしれーコンビだな

・漫才コンビ結成

・ここのリスナーにもアレの所有者はいるから……

・君はひとりじゃない。俺だって持ってるよ



 目から塩水流していたらコメントで慰められた。


 その横でユッキーさんが「漫才コンビてなんやねんっ!!」と叫んでた。





「……う~ん……」


 探索中、俺とユッキーさんは怪しげな通路の前でたたずんでいた。


 その通路は全体的に石床がひび割れていた。持ち上がった床が凹凸を形成してお

り、大きなものでは俺のすねくらいの高さまで跳ね上がっている箇所もある。


 横幅もいま俺たちが立っている場所よりひと回り以上広がっていることもあり、通路というよりむしろ"縦長の部屋"という方が近いかも知れない。


 なんにせよ、警戒心が湧かずにはいられない雰囲気の場所だった。


「……ここからじゃ向こう側がどうなっているのか分かりませんね」


「うん。進んでみないことには確認できないね」


「進むおつもりですか? いったん引き返して安全そうな場所から探索するという選択もありますよ?」


「このダンジョンのどこが安全かなんてどのみち分からないでしょ。昨日みたくなんでもない場所でいきなり強敵に襲われる可能性だってある訳だし。階段探すためにはむしろ、怪しいところは積極的に調べていった方がいいと思うんだ」


「なるほど……みなさんはどう思います?」


 ユッキーさんはリスナーたちに意見を仰ぐ。



コメント

・慎重になった方がよくない?

・いいと思う

・腰タオルニキに一票

・後回しでいい

・ただの通路って感じじゃないですね

・多少の冒険はしかたない

・やばそう



 ……う~ん。だいたい半々ってところか。まあ、ここから見ただけで確信を持てるほどの情報なんて得られる訳はないか。俺たちですらそうだし、聖霊カメラ越しの視界でしか確認できないリスナーならなおさらだ。


「……どちらとも言えない……だったら進んで確認しよう。それが俺の探索者としての方針だし」


「ですね。救助が期待できる状況ならまだしも、現状ではある程度の危険は覚悟のうえです」


「決まりだね。〈罠探知〉スキルは初歩レベルだけど使えるから、俺のあとをゆっくりついて来て」


「あ、それなら私も初歩ですが使えます。ふたりで協力して探しましょう」


「分かった、じゃあそうしよう」


 俺たちスキルを使用して足下を確認しつつ慎重に通路へと進入した。サンダル裏を踏み入れた拍子に、割れた石床がカタンと音を鳴らした。


「……ずいぶんボロい場所だな。こんな風に創る意味なんてあるのか?」


「隙間に罠を紛れさせているのかも。気をつけてくださいね」


 会話しつつゆっくりと進んでいく。もっとも、スキルで注意深く確認しても罠は見当たらなかった。俺たちの技量では探知できない高度なものを仕掛けられているんじゃないか、と考えていたが……結局、何事もなく反対側まで渡ることができた。


 拍子抜けしつつも先に進んでいくと――


「……っしゃ! 宝箱トレジャーだ!」


 突き当たりの部屋に、三つの宝箱を発見した。




━━━━━━━━━━━━━━━

お読みいただきありがとうございます。

よろしければ、下部の「♡応援する」および作品ページの「☆で称える」評価、フォローをお願いいたします。

執筆の励みになります。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る