091:攻撃フェイズがある2ターン目①
ここからは獲得フェイズに加え、選択フェイズと攻撃フェイズの3つのフェイズがあり本格的な戦いが始まる。
2周目。魔王サイド1番手のデュースのターンから始まる。
獲得フェイズでカードを引くためにデュースは4面ダイスを軽く転がした。4面ダイスの頂点には1の数字が書かれている。1は武器カードだ。そのまま流れに沿って武器カードの山のトップを引くデュース。
引いた武器カードはニンジン爆弾。ニンジン爆弾の効果はこのターンのみ攻撃力が+3されるものだった。
そんな強力なカードに驚くことなくデュースは選択フェイズに移る。
選択フェイズでも4面ダイスを振る。出た目の対戦相手が攻撃対象になるのだ。振られた4面ダイスの頂点には2の数字が書かれている。つまり攻撃対象はモリゾウに決定した。
「僕が攻撃を受けるってことですね」
初めて攻撃対象に選ばれたモリゾウは身構える。
攻撃対象がモリゾウに決まりデュースは攻撃フェイズに移行する。攻撃フェイズでも4面ダイスを振り出た目の数字分のダメージと装備されている武器の攻撃力を計算し相手へダメージを与えるのだ。その時、攻撃を受ける側は装備されている防御カードの防御力を計算し攻撃プレイヤーの攻撃力から差し引く。それによって出た合計ダメージを受けるのだ。
攻撃フェイズで出た4面ダイスの目は2だ。つまりモリゾウに2ダメージを与える。そして獲得フェイズで手に入れたニンジン爆弾の効果により3のダメージが追加。現在のモリゾウは防御カードを装備していない。よって防御力0のモリゾウに合計5ダメージを受けることになった。
「大ダメージですね……」
30しかないHPで5もダメージを受けてしまったモリゾウは焦る。
実際にダメージを受けるのはモリゾウではない。モリゾウの分身でもあるそっくりなウサギのコマがダメージを受けるのだ。
小さく可愛いウサギのコマだが攻撃する姿はリアルでグロテスク。そして攻撃を受ける姿も血を流し吹っ飛ぶ様がリアルで可愛らしさは一切ない。
死のゲームにおいてHPが削られるということは命が削られていることと等しい。このHPが0になった瞬間に1つしかない自分の命を失わなければいけないのだ。
実際にはダメージを受けていないがその分の恐怖が心を支配し精神的なダメージを与えている。
魔王サイドのデュースの攻撃フェイズが終了し勇者サイドのキンタロウのターンが開始される。
「なんか良いカード引かないとまずいな」
キンタロウは願いを込めながら4面ダイスを優しく転がした。なぜだろう。人は願いを込めれば込めるほどサイコロを振る時、優しくなるのだ。
キンタロウが転がした4面ダイスの頂点は2の数字が書かれている。獲得フェイズで数字が2。キンタロウは2の装備カードを引いた。
引かれた装備カードは姫の首飾りというものだ。姫の首飾りの効果は、この装備がある限り自分が受けるダメージを-1する、という強いものだった。まるでキンタロウの願いが叶ったかのように強力なカードを引き当てたのだ。
「姫の首飾り強い。姫ってことはニンジン姫の首飾りか? 大事にしないとな」
そんな感想を述べながらキンタロウは選択フェイズに移るため4面ダイスを再び振る。4面ダイスの頂点に書かれている数字は3だ。つまり攻撃対象はケイトに決定した。
続いて攻撃フェイズになる。キンタロウは申し訳なさそうに4面ダイスを振る。ゲームに参加している誰もが攻撃などしたくないはずだ。けれど攻撃フェイズでは強制的に攻撃をしなければならない。
これは死のゲームだ。躊躇していれば自分が真っ先に死んでしまう。
攻撃フェイズで振った4面ダイスは1の数字が出ている。よって1ダメージと攻撃力0の合計1ダメージのキンタロウの攻撃がケイトに与えられる。しかしケイトには防御力1の普通のヘルメットが装備されている。なのでケイトに与えるダメージは0ダメージになった。
プレイヤーの分身でもあるウサギのコマは先ほどの攻撃とは裏腹に呆気なく終わる。
「せっかくの攻撃なのに0ダメージか……」
落ち込むキンタロウだったが内心、罪のない女性を傷付けなくて良かったと思っている。何度も言うが死のゲームで相手を気遣うのは不要だ。
勇者サイドのキンタロウのターンが終わり魔王サイドのトレイのターンになったが、先ほどのターンでイチゴが引いた能力カードの封印の壺の効果により、トレイのターンはスキップされた。
ターンがスキップされたことによってモリゾウのターンが訪れる。
「僕のターンですね。先ほどは大ダメージを受けたので回復し解きたいですが……なにが出るのやらっと」
モリゾウは削られたHPを回復したいと願いながら4面ダイスを振った。しかしモリゾウの願いは叶わず4面ダイスは1の目を出している。1は武器カードを引くことができる。
モリゾウは仕方ない様子で武器カードの山のトップを引く。引いたカードは普通のメリケンサックだった。効果は攻撃力が+1される。
そのまま普通のメリケンサックは分身のウサギのコマに装備される。
続いて選択フェイズ。攻撃対象を選ぶために再び4面ダイスをモリゾウは振った。出た数字は4。つまりモリゾウの攻撃対象はシンクだ。
攻撃対象が決まると攻撃フェイズに移る。この攻撃フェイズに振る4面ダイスは想像以上に心を痛める。
「ごめんなさい。振ります」
モリゾウは申し訳なさそうに謝罪をし目を閉じながら4面ダイスを転がした。転がる4面ダイスは静止し3の目を出した。
モリゾウの攻撃フェイズ。3のダメージと普通のメリケンサックそして普通の剣で合計5のダメージが確定した。そのまま分身のウサギのコマはシンクのウサギのコマに向かって攻撃を仕掛ける。
シンクの防御力は0。よってシンクに5のダメージが与えられた。
大ダメージを受けたシンクは焦る様子もなく動じていない。むしろダメージを受けたことによって口元が微笑んだようにモリゾウは思った。
違和感を感じ取ったモリゾウはすぐさま探偵スキルを使いシンクの心情を読み取る。万能な探偵スキルに頼ってしまうモリゾウの悪い癖だ。しかしその悪い癖のおかげで違和感の正体に気が付いた。
(死のゲームでダメージを受けたのになんで……なんで歓喜の色なんですか。まさか彼女たちは自ら死を望んでいる?)
シンクから暖かいオレンジ色の歓喜の色をモリゾウは感じ取った。彼女たちはピエロに奴隷にされて死にたいと思っているのだ。だからこそ死のゲームでダメージを受けて死ぬことを望んでいる。
先ほどピエロが右手を挙げた時に死を拒んだのは、自分たちを奴隷にしたピエロには殺されたくないという意志の現れだろう。ピエロ以外になら殺されてもいい。それがピエロが仕掛けたゲームだとしても。
「ますますやり辛いですね……」
心情を読み取ったモリゾウは誰にも聞こえない声で小さく呟いたのだった。
勇者サイドのモリゾウのターンが終了し魔王サイドのケイトのターンが開始する。
ケイトは獲得フェイズでカードを引くために4面ダイスを振る。手のひらからこぼれ落ちるように転がった4面ダイスは転がる摩擦によって静止。頂点に描かれた数字は4だ。ケイトはそのまま能力カードの山のトップを細長い指を使い1枚引いた。
引かれた能力カードは黄金のお皿だ。黄金のお皿の効果は、1回限り使用でき、自分がダメージを受けた時、その分のダメージは回復に変わる。というものだった。
ランダムで選択される攻撃だ。いつ攻撃を受けるかわからないが黄金の皿は、かなり強力なカードである。
強力なカードを引いた喜びも無く無表情のまま選択フェイズに移行。4面ダイスが出した数字は1。攻撃対象に選ばれたのはキンタロウだった。
「俺か。でも俺には姫の首飾りがある。ダメージを軽減できる」
攻撃を受けるキンタロウは身構え自分の分身であるウサギのコマの首にかかっている姫の首飾りを見た。その間にケイトは攻撃するダメージを決定するために4面ダイスを振る。
出た目は2だ。
攻撃力が上がる装備品は装備していないのでそのまま2のダメージがキンタロウに入る。しかしキンタロウは姫の首飾りを装備している。姫の首飾りの効果によって1ダメージ軽減され受けるダメージは1ダメージのみになった。
「1だけしか削られなかったけど重たい1だな」
30しかないHPで0になれば命を落とす。そう考えただけでも1のダメージは相当重たいものだ。
魔王サイドのケイトのターンが終了し勇者サイドのイチゴのターンが開始する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます