092:攻撃フェイズがある2ターン目②

 魔王サイドのケイトのターンが終了し勇者サイドのイチゴのターンが開始する。


「私のターンだぁ」

 イチゴは小さく細い指で4面ダイス取り優しく転がした。転がる4面ダイスはすぐに静止し1の数字が出された。獲得フェイズで1は武器カードを表す。イチゴは武器カードの山のトップを引く。

 引かれたカードはニンジンの槍だ。ニンジンの槍の効果は攻撃力が+1され攻撃対象の隣のプレイヤーに防御力を無視して1のダメージを与える。特殊な効果がある強力なカードだ。


 獲得フェイズが終わり選択フェイズに移行。再び4面ダイスを3の目が出る。攻撃対象はケイトに決定した。

 続いて攻撃フェイズだ。イチゴも心を痛めながら4面ダイスを持った。そして心の中で何度も謝りながら4面ダイスを転がす。

 4面ダイスは2の数字を出した。ニンジンの槍を持っているイチゴの攻撃力は1だ。攻撃フェイズで出た2を足して合計3のダメージをケイトに与える。しかしケイトは黄金のお皿を持っているので受けるダメージを無効にしその分のHPを回復することができる。

 そしてイチゴが装備しているニンジンの槍の効果が発動しケイトの隣のプレイヤーに1のダメージ。ケイトの隣にはトレイとシンクがいる。この場合はトレイとシンクの2人に防御力無視の1ダメージが与えられるのだ。


「3人に攻撃しちゃった……」

 イチゴもまた相手を思いやる気持ちが強く攻撃を与えたことに対して素直に喜べない。むしろやるせない気持ちでいた。


 勇者サイドのイチゴのターンが終了し魔王サイドのシンクのターンが開始する。


 シンクは4面ダイスを小さな手のひらをいっぱいに使い掴んだ。そのまま真下に落とす感じで4面ダイスを振る。4面ダイスは垂直に落下しそのまま回転することなく目が決定する。4面ダイスの頂点には3が書かれている。

 獲得フェイズでシンクは回復カードを引いた。引いた回復カードは焼きニンジン。効果はHPを2回復するだ。

 勇者サイドのあらゆる攻撃を受けてHPが23になっていたが焼きニンジンの効果によりHPを2回復し残りHPが25になる。


 続いて攻撃対象を選ぶ選択フェイズ。再び4面ダイスを取り最期ほどと同じように垂直に落下させた。4面ダイスの角がテーブルに刺さる勢いで垂直落下したが角は刺さることがなく別の角が天を向く。

 選択フェイズで出た数字は4だ。つまり攻撃対象はノリに決定した。

 その瞬間ノリは攻撃を受ける体制を取った。もちろんマッチョポーズだ。実際に攻撃を受けるのは己の分身のウサギのコマだがノリは己も受けるのだという心構えや覚悟をマッチョポーズで示しているのだろう。


 そして攻撃フェイズが始まる。今度は4面ダイスを転がすように振ったシンク。転がる4面ダイスは3の数字を頂点にし静止する。

 シンクの攻撃力は1。攻撃フェイズで出た数字は3。よってノリに4のダメージが与えられる。防御力0のノリはそのままシンクの攻撃を受け残りHPが25になった。


 魔王サイドのシンクのターンが終了し勇者サイドのノリのターンが開始する。


 まずは獲得フェイズ。ノリはマッチョポーズを取りながら4面ダイスを太い指で摘みそのまま指で弾いた。ノリの最大値スキルの効果によって4面ダイスは必ず4が出る。4は勝敗を左右する能力カードだ。ノリはマッチョポーズを変え能力カードの山のトップを引いた。

 引いた能力カードは王族の手紙だ。王の手紙の効果は、次の自分のターンまで攻撃力と防御力が+1される。そしてHPを1回復する。


「ふんぬっ!」

 マッチョポーズを変え強力な能力カードを引いたことに喜ぶ。その後、シンクの方を見てマッチョポーズが弱々しくなった。

 ノリは4面ダイスを振らなくても最大値スキルによって選択フェイズと攻撃フェイズで出る目がわかる。攻撃対象になり、これから最大火力の4のダメージを受ける中学生ほどの女子のシンクを見てノリのメンタルは弱まってしまった。

 マッチョポーズで自分の心の弱さを誤魔化し、弱々しい姿を見せまいとしていたが死のゲームではそれは無理だ。自分の攻撃で中学生ほどの女の子が死ぬかもしれないから。


 ノリの選択フェイズと攻撃フェイズで出た目は最大スキルが発動し4面ダイスの1番大きい数字の4が出る。よって4のダメージと王族の手紙の効果で+1され合計5のダメージがシンクに与えられることになる。

 シンクの防御力は0なのでそのまま5ダメージを分身のウサギのコマが受けた。残りHPが20になってしまった。シンクは参加プレイヤーの中でダントツでHPが低くなった。


「くっ……」

 ノリは自分の攻撃でダメージを受けてしまったシンクを見ながら唇を噛みしめた。攻撃をしたのは自分だ。しかし攻撃をしたくてしたわけではない。これから先のターンも最大値スキルの効果でシンクに攻撃をし続けるだろう。そんなことを考えるノリは心が耐えられなくなり苦しくなったのだ。

 それはボドゲ部全員同じ気持ちだ。


 こうして全員の2ターン目が終了した。その後、3ターン、4ターンとターンは過ぎていき全員のHPは減っていった。そして最初の脱落者が現れたのは7ターン目だった。

 脱落それは死を意味する。

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