031:凄まじい生命力
潰れた緑ヘビの頭の横には緑色に輝く球が落ちている。
様々なマッチョポーズをとり続けるノリの視界に緑色に輝く球が目に入った。
「ん?」
モストマスキュラーポーズのポーズをとった時に視線がちょうど足元にいき気が付いたのだった。
ノリが緑色に輝く球に気を奪われている時、キンタロウの叫ぶ声がノリの耳に届いた。
「ノリィィイイ! しゃがめぇえ!」
「!?」
ノリはキンタロウの言葉を受けしゃがもうとするが体の反応は間に合わない。キンタロウの言葉を頭で理解して筋肉に信号を送る刹那の一瞬でノリは吹っ飛ばされてしまった。
横一線にノリの背中を何かが攻撃したのだった。
「ぐはぁ!」
ノリは近くにあった木に腹から激突した。そしてそのまま倒れる。
ノリには何が起きたのかさっぱりわかっていない。しかし『しゃがめ』と指示したキンタロウには何が起きたのかはっきりとわかった。
「ノ、ノリ大丈夫か。おい。マジで大丈夫かよ」
「うぅ……だ、だいじょうぶだ……」
キンタロウは吹っ飛ばされたノリの元へ駆けつけた。
ノリが着ているタンクトップはめくれ上がっていてノリが受けた傷があらわになっている。背中は内出血し紫色に腫れている。そして腹と胸には木との激突時に受けた打撲傷がある。
「ヘビの野郎。なんて生命力だ。クソ」
キンタロウは動かなくなった緑ヘビの尻尾を思いっきり踏みつけた。
ノリはキンタロウの言葉でようやく理解した。自分はヘビの尻尾に鞭打ちになり吹っ飛ばされたのだと。
たったの1撃だけで致命傷を負ってしまったのだ。
頭を潰して死んだはずの緑ヘビだったが生き物の生命力は凄まじい。命を奪われてもなお己を殺したものに攻撃を仕掛けてきたのだ。
緑ヘビ自体は死んだが神経や細胞はまだ生きていたということだろう。半身にされ切られた魚が動くように緑ヘビも同じように動いたのだ。
「ふー……はぁ……」
ノリは痛みを堪えながら呼吸を整えている。背中の内出血が激しいが内臓へのダメージ、そして骨などは折れていないようだ。内出血だけで済んだのはノリの鍛え上げられた筋肉のおかげだ。
もしも緑ヘビの最後の一撃を喰らっていたのがキンタロウなら間違いなく死んでいただろう。
「立てるか?」
「あぁ……なんとか……」
ノリに手を差し伸べるキンタロウ。その手を取り立ち上がったノリは、腰と胸に負担がかからないように腕だけで軽くマッチョポーズをとった。
ノリなりの『大丈夫だ』というアピールだろう。
当然だが致命傷を負ったノリの足取りは遅い。そんなノリに肩を貸して一緒に前に進むキンタロウ。
このままここで休んでもいいのだが、ここは緑ヘビのテリトリーだ。今倒した緑ヘビ以外に別の緑ヘビがいてもおかしくはない。むしろいる可能性の方が高い。
だが、他の危険生物は寄ってこないだろう。わざわざ緑ヘビのテリトリーには来ないはずだ。それは自然の摂理だろう。
ここで別の危険生物に遭遇してしまった場合キンタロウとノリに命はない。どちらにせよ休んでいる暇はキンタロウとノリにはないのだ。だから前に進まなくてはいけない。
「とりあえず、ゆっくり隠れながら進もう」
「すまん……キンタロウ……」
「謝るなって。ノリありがとうな」
筋肉男のノリに肩を貸すキンタロウ。そんなキンタロウも無傷ではない。緑ヘビに締め付けられた痛みをジンジンと感じながらモリゾウたちとの合流を目指す。
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