020:ぶくぶく太ったウサギ

『第2層11マス』

 ここは、今まで通ってきた白い空間に、ニンジンの家具や置物があちらこちらに置かれたマスだった。

 簡単に表現をするならば『ニンジン好きのちょっと広い部屋』だ。これで壁や床、天井がオレンジ色だったら完璧だ。


 キンタロウたちは警戒しながらも辺りを見渡す。そしてニンジンのソファーの上に案内兎がちょこんと座っているのを発見する。


「ようこそ第2層11マスへ~。ここは『召喚獣』を1匹もらえるしれないマスだよ~」


 ボドゲ部の全員が見覚えのある茶色でぶくぶく太ったウサギが出迎えた。


「もしかして妹ウサギちゃん!? ボンってウサギの!」とイチゴがぶくぶく太った茶色いウサギに向かって真っ先に言った。

 その言葉に反応してニンジンのソファーから降りてこちらにゆっくりと歩き出すぶくぶく太った茶色いウサギ。


「その通り~。お兄ちゃんに会ったということは第1層に行ったのね~。あなたたち順調ね!」


 妹ウサギは順調と言った。しかし全く順調ではない。キンタロウたちは謂わばコンティニュー状態だ。一度『神様が作った盤上遊戯ボードゲーム』のゲームに敗北している。

 ドラゴンという名の恐怖の暴力に敗北しているのだ。

 だから順調ではない。


「って、待ってよ。お兄ちゃんに会ったっていうこうとは……あたちの恥ずかしい写真を見たってことなのねー!」


 ぶくぶくと太った妹ウサギは、その体型から想像がつかないほどの速さで飛んだ。そしてニンジンのソファーの裏に隠れた。否、太りすぎていてニンジンのソファーから体がはみ出ている。

 体を隠し切れていなかった。

 そんな可愛くソファーからはみ出しているお尻に向かってモリゾウは口を開く。


「あの~質問いいでしょうか?」

「なにかしら……」


 恥ずかしそうに顔をひょっこりと出す妹ウサギ。


「ここは召喚獣を1匹もらえるマスなんですよね? それって1人1匹ですか? それともチームで1匹ですか?」

「チームで1匹よ~」


 小さな手のひらを出している。おそらく指で1を表しているのだろう。小さすぎて見えないが。

 そんな妹ウサギは「ただし……」と言葉を繋げた。


「あたちとのサイコロバトルに勝ったらもらえるわよ~。負ければ召喚獣は無し! どう? 簡単でしょ?」

「サイコロバトル?」とキンタロウが首を横に傾げながら反応した。


 妹ウサギは説明に夢中になりニンジンのソファーからペタペタと歩きながら姿を現した。


「ルールは簡単よ。1体1でお互い6面サイコロを振るわ。サイコロで出た目の数が大きいプレイヤーの勝利よ。これを5ターン行って勝利数が多いプレイヤーの勝利。あなたたちの場合は、あたち対あなたたち4人になるわね。1人多く戦ってもらうわよ。どう? 簡単でしょ?」


 妹ウサギはサイコロバトルのルール説明をした。

 モリゾウは「1つだけ確認いいですか?」と問いかける。

 妹ウサギの垂れている耳がスーッと動いたので聞く気があるということだろう。


「もしも対戦相手と同じ数字だった場合はどうなるんでしょうか? ジャンケンのようにあいこになるとかでしょうか?」

「その場合は主催者側つまり、あたちの勝ちというルールになってるわ~」


 妹ウサギは凶悪な笑みになりモリゾウの問いに答えた。その表情にゾッと背筋を凍らせるボドゲ部の4人。


「な、なるほど……勝率はそちらの方が上ということですね」とサイコロバトルの秘策を考えながら答えるモリゾウ。


「俺も質問いいか?」とキンタロウが手を上げた。

「なにかしら~?」


「召喚獣って……どんなやつがいるの?」

 キンタロウは目を輝かせながら質問した。


「それは勝ってからのお楽しみね。でもあたちが勝つけどね」

 妹ウサギは自信満々の表情でキンタロウの問いに答えた。


「ぜってー召喚獣手に入れてやる! 召喚獣がいればドラゴンにも勝てるかもしれねぇからな!」


 キンタロウは拳を妹ウサギに向けた。

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