第21話
「それで、本来の用は?」
「あ、ええ、そうですね……」
黙ったままなので促したはいいが、口をもごもごとさせるだけで話そうとしない。
まだ料理も残っているのでこれ以上促すことはせず、美味しいハヤシオムライスを食べ進めていく。
マスターのはマスターでまた違った味わいがあるけども、これはこれで僕の好みである。
早食いは健康によろしくないけれど、気がつけば皿の中は空になっていた。
カップの中も飲み干してしまったので店員さんを呼び、飲み物のお代わりとデザートを注文する。
「あの……」
デザートを楽しみにしつつボーッとしていたらようやく話すことが纏まったのか、少し遠慮がちに声をかけてくる。
「本来は葵姉様との関係についてお聞きしたかったのですが……それよりも今は私個人としてあなたに興味があります」
「そう」
「もし、お時間があるのでしたら私と一緒に遊んでいただけませんか?」
「や、めんど…………ん? うーん……?」
反射的に断ろうとしたが、何となく思考に待ったがかかった。
この場でどちらがいいか考えるだけ無駄なため、今の気分的に普段なら断るところなのだが。
明確な何かがあるわけではなく、第六感的なものだが行った方がいいと言っているような……。
いや……これは単純にしばらくの間、遊びに行けてないからフラつきたいだけか。
「うん。遊び行こうか」
昨日ほど面倒な相手とも今は感じないし、嫌になったら別れればいいだけだ。
「僕、神宮桜。高二」
「改めて私、鈴仙女学院一年、三椏玲香です。よろしくお願いします、神宮先輩」
自己紹介をしてから思ったが、そういえば彼女は僕のことを調べて知っているんだった。
けれど何を思ってなのかは分からないが、彼女も自己紹介をしてくれたため。
もう一度名前を聞けたのは良かった。
「どこ遊び行きたい?」
遊び行く前の腹ごしらえと、彼女もサンドイッチを頼み、食べ進める中。
何をするのか決めていなかったので声をかける。
「あ、そうですね……映画などはどうでしょう?」
「僕はどこでも」
どこでもと言いつつ、初対面の二人が行こうと思うところなんて限られている。
そんな中でも映画が一番無難なところだろう。
観ている間は互いに話さないし、終わった後は映画の話をすればいい。
……そもそも、なぜ初対面なのに遊びに行こうといった話になったんだったか。
互いに食事を終えたあと、食休を兼ねながら何の映画を見るか決め。
現在、大きなショッピングセンターへと来ていた。
というか、前に先輩と映画を見た時にも来た場所だ。
見るのは今、世間で話題になっているアニメ映画である。
気になっていたけど観にこれていなかったので、ちょうど良かった。
そういえば、映画のチケットを買った時やカフェの支払い時に、自分の分を払ったら三椏は少し驚いた表情をしていたが。
その理由に心当たりはないし、少しだけ考えて見たがサッパリ分からない。
けどそんな考えは映画が始まれば頭の片隅に追いやられ、終わる頃にはそのような事を考えていた事すら忘れていた。
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