第19話
結局、抵抗する方が余計に時間を使うし無駄に疲れるかなと思い、知らない人の車に乗ってしまったわけだが。
これからかかる時間が分からないわけだし無視して帰った方が早かったかなと少し後悔。
でもまた後日来られる可能性もあるわけで、面倒事はやっぱり早めに無くすべきか。
なんてことを考えていれば、車が向かった先は僕がバイトをしているところとはまた別の、オシャレな喫茶店であった。
いや、これは喫茶店じゃなくてカフェって言うのか?
店に入ってから席に案内されている間も店内を見回したが、二つの違いが分からないため。
スマホを使って調べてみれば、アルコールを出せるか出せないかの違いであるらしい。
店の装飾なんて何ら関係のないものであった。
カフェが出せる方で喫茶店が出せない方。
うーん、少し気になっただけだから明日には忘れていそうな情報だな。
「あの……?」
「ああ、すみません。僕はカフェオレで」
気付けば店員さんが注文を取りにきており、彼女はすでに頼んだようで僕待ちだったようだ。
「それで、僕を知ってるみたいだけど」
「あ、すみません。私、
「そうなんだ」
「はい」
店員に注文をし、少しでも早く終わらせるよう話を促せば、自己紹介をして終わりであった。
分かったのは彼女の名前と、僕のことを知っていた理由を推測できるぐらいだ。
先輩から話を聞いて僕のことを知ったのだとして、何の用だろうか。
それをさっさと話してほしいのだが、彼女は安っぽい笑みを浮かべてジッと僕のことを観察している。
話そうとする気を感じないのでスマホを弄っていれば、飲み物だけなのでそれほど時間を置かずに頼んだものが運ばれてきた。
切った春巻きみたいな置物に伝票を刺して去っていく店員を横目にカフェオレを一口飲み、外へと視線を移す。
元気に鳴く蝉の声が耳に届き、涼しい店内であるのに外の暑さを思い出して少しだけ怠さを感じる。
たとえ彼女の話が終わらなかったとしても、これ全部飲み終えたらさっさと帰ろう。
そういえばお昼もまだだったな。
ここで食べていっても構わないのだけれど、話が面倒だった場合すぐに立ち去れない。
やっぱり今日は帰るべきだったと、ものすごく後悔し。
思わずため息をつく。
「……あの」
「ん?」
「初対面でその態度は失礼じゃないですか?」
「……話があるからと言うから付き合う義理もないのに来た僕に対して、話もせず人のことジッと観察していた君は失礼じゃないとでも?」
まだ半分以上残っているものを一気飲みは少しもったいない気がしたけども、これ以上ここにいる方が無意味だろう。
思っていたよりも美味しかったので今度一人で来よう。
「それじゃ僕、帰るから」
「え、はい」
伝票を手にレジへと向かっていく。
彼女の分も払うのはこんな無駄な事に付き合った自分に対する勉強代だ。
レシートとお釣りを受け取り、店から出ようとしたところで呼び止められたような気がしたが、僕の意識は外の暑さへと向いていたため気付くことはなかった。
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