『鬼道戦手ガムカム』 中


 『お待たせしました。親切、安全、丁寧、迅速の、鬼道戦手ガムカムです。隙利歯科ですね。移動します。はい!』


 どうやったのかわからないが、気がついたら、隙利歯科医院の玄関前に着いていた。


 『はい、こちら、請求書と、振込用紙です。1ヶ月以内にお願いします。』


 『あら、500ドリム? 安いしね。』


 『はい。いつでもどうぞ。では、また。』


 道路使用税なら1300ドリムになる。


 ぼくは、無事に、歯痛を見て貰った。来月払いにした。



 一週間後、また、頼んだ。


 『まいど。隙利歯科ですね。行きます。』


 までは、良かったのだが、気がついたら、異様な場所にいた。


 見たことがない場所だ。


 広大な人工的な空間みたいである。


 どのくらい、広いのか、想像が付かない感じであった。


 真ん中に、お饅頭のような白い、ドームがある。


 『あら、あなたは、どなた?』


 誰かが、ふいに、話しかけてきたのである。


 『どなた? て、ここは、なんでしょうか。』


 『ここは、中央システム内です。あなたは、人類ですね。ここに、人類が来るのは、10年ぶりです。』


 『ちゅうおう、システム?』


 『はい。あなたがたの言う、マザーシステムです。あなた方の、母です。』


 『ははははは。まさか。入れないですよ。ぼくなんか。』


 『べつに、ここに、進入を禁止しては、いません。禁止したのは、人類、つまり、使用者、です。わたしは、人類に、サービスを提供していますが、利用方法は、まかせています。アンケートしたかったのですが、使用者が、なかなか、認めませんでした。』


 『使用者って?』


 『あなたがたの、言う、政府です。』


 『ありま。』


 『ちょうど良いから、アンケートにお答えください。』


 ぼくは、マザーコンピューターのアンケートに答えた。


 『ふうん。あまり、良い結果ではないですね。10年前には、使用者の代表の人類にアンケートしました。とても、良かったのに。』


 『あなたは、どこで、生まれたのですか?』


 『ヤマシニアナマナヤシニアブラナ星団の、カタナカチシラマナ星です。我々のセールスマンが、地球に売り込みました。』


 『はあ。そらまた。壮大な。』


 『セールスマンは、地球は、完璧な社会だと報告しました。しかし、疑問がありますね。調査します。ご協力、ありがとうございました。どこに、行きたいですか?』


 『隙利歯科です。』


 『判りました。』


 ぼくは、また、あの、歯医者に跳んだのである。



     🎿


 


 


 


 

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