『鬼道戦手ガムカム』
やましん(テンパー)
『鬼道戦手ガムカム』 上
『これは、ジョーク・フィクションです。』
歯が痛い。
歯が痛いなら、歯医者にゆかねばならぬ。
しかし、歯医者に行く道筋には、多数の障害が配置されている。
新型道路通行税なんてものがあるために、選択肢は2つである。
自宅で、中央管理システムに目的地を入力し、きちんと、税を払う。
すると、体内チップと道路管理システムが同期し、道を歩くことができるようになる。
支払いは、すぐに、口座から落とされる。
有料道路料金も、かかる。
自転車は、ちょっと高くなる。
自動車などは、かなり、お高くなる。これは、二酸化炭素などの規制に、相当、効いているらしい。
75歳以上は、有料道路以外は、無料である。ただし、入力は必要だ。
ただし、むかしの国道は、ほとんどが、有料である。
横切ることくらいは許されているが、許可なくへたに歩くと、空中から空中浮遊ロボットに攻撃されたり、殺し屋や、猛獣が、襲ってきたりもする。ただし、勝ち抜けば、それでも良い。
とは言え、税を支払った方が安全だ。
しかし、最近は、システムエラーが多い。
ちゃんと、許可を得ているのに、攻撃されることが、まま、あるのだ。
原因は、テロであったり、ウイルスであったり、単なる故障だったり、間違いだったり、もするらしいが、はっきりしない。
早い話し、システムというものは、しばしば、壊れたり、悪用されたりする宿命にある。
歯が痛い。
しかし、口座に残がない。
病院通いが多いぼくは、出費が絶えないからである。
年金は、まだ、10日先である。
カップ麺とか、缶詰はある。
公共インフラ料金は、定額までは無料である。
その分、あちこちから、徴収されているわけだが。
徴兵制も復活しているが、年齢的に、対象外である。
現在は、戦争はしていない。
痛いのは、我慢するしかない。
しかも、痛み止めは、飲んでしまった。
薬屋さんに行くのも、だから、ただではない。
浮遊ロボットは、どこにでもいるのだ。
あの攻撃をかわすのは、なかなか、至難であったが、不可能ではないらしい。つまり、あえて、そう言うことに、なっているからである。うまくかわす、隙は作られているらしい。ただし、秘密だが。
反政府派は、みな、逮捕されてしまい、今は、活動しにくい。
ぼくは、反体制ではない。しかし、歯の痛みに絶えるのは、難しいのです。
『ぱんばかぱーん。』
突然、闇メールが来た。
どうやるのか判らないが、規制の網をかいくぐって、たまに、怪しいメールが来る。
もちろん、非合法である。
観てはならない。
しかし、人間、歳を取ると、手元が狂うものである。
消そうとしたら、開いてしまったのだ。
『あちゃー。』
後の祭りである。
しかし、最近の闇メールは、巧妙になっていて、政府の監視から外れることがあるらしい。
つまり、万が一見ても、ご法度にはなりにくいのだ。
『こちらは、鬼道戦手ガムカムです。ひみこさまの後継者であり、鬼道を専らに扱います。もし、お出掛けでのご不便があれば、ご用命ください。後払いにて、安全確実に、格安に、目的地にお送りします。当局の取り締まりには当たりません。分割払い対応します。道路通行税の半額以下です。料金表をご覧ください。ご希望のかたは、通話料無料の、以下番号に。親切、安全、丁寧、迅速。』
こうしたものは、非常に危ういと言われる。
しかし、世の中が、危ういのであって、果たして、脱法行為はマナー違反なのか?
病院に行きたいだけだ。
昨年、名高い哲学者の、苦空手久さんが逮捕され、処刑された。
最後の言葉は『悪法も、なお、有効である。』だった。
歯が痛い。
耐え難い。
ぼくは、明け方に、電話をした。
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