33話 黒光りする地雷系唐揚げ


 く、食うしか……ないよな。


 目の前に出されたのは、真っ黒な鶏の唐揚げだった。


 お料理対決の先攻で圧倒的に有利な豚肉を使わず、ヘルシーな鶏肉を使った清水だったが……この唐揚げ、清水が料理を失敗したってことか?


「さあ風切さん、召し上がれっ」

「……う、うん」


 崎宮さんも食べようとはしているが、なかなか箸が進まないようで、俺が口にするのを待っている。


「か、風切くん、先に食べなよ」

「崎宮さん……ずるいよこんな時だけ」

「だって。見た目が」


「お二人とも、何をコソコソ話しているんですか?」


 俺たちが尻込みしていると、ニコニコした清水が一言入れて来る。


 ええい……なんとかなれっ!


 俺は箸を使って唐揚げを一つ口に入れる。

 すると……っ。


「え……?」


 唐揚げを口に入れた瞬間——ジュワッ! と肉汁が口いっぱいに広がり、唐揚げの旨みが伝わって来た。

 なんで、この唐揚げ……炭になっていたんじゃ……ん?


 良く味わってみると、この唐揚げからはやけに不思議な味がする。


 これは……もしかして、か?


「こちらは岐阜のご当地グルメである、ひじきと椎茸を用いた黒唐揚げです。鶏肉はもちろん、冷蔵庫でたまたまひじきを見かけたので、私らしく『黒』を基調とした肉料理をテーマに作ってみました」

「こ、これ……美味いよ清水。見た目からは考えられないくらいに」


 俺が舌鼓を打つ隣で、崎宮さんも黒唐揚げを口にして驚きを隠せない様子だった。


「悔しいけど……お、おいしい……」

「ふふ。見た目で判断してはならない。それは我々地雷系女子にも言えること、ですよね?」

「……それは、まぁ」

「崎宮さんも、自分の中の地雷系を料理に表してみたらいかがです?」


 地雷系女子のお料理対決だからって、地雷系をテーマに入れる必要性はなかったはずなんだが……。


「まぁ、崎宮さんの場合はピンクですから? 生肉を出した方がお早いかもしれませんね」

「りょ、料理バトルにしたのに舌戦に持ち込もうとするなよ清水」

「いいよ。わたしは、わたしの地雷系ピンクをお料理で表現してあげる」

「え、ちょ! 崎宮さん!?」


 まさか本当に生肉になるじゃないよな!?

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