32話 料理対決はまさかの展開に


 肉料理をテーマとして空前絶後の地雷系料理バトルが始まった。

 あくまで料理の腕を見るための勝負なので、おかず一品を作るだけではあるが、2人のバチバチ感から謎の緊張感があった。


 先攻の清水は、冷蔵庫から鶏肉を取り出して部屋にあった要らないチラシをキッチンの床に敷いた。


「それでは、始めますね?」

「お、おう」


 清水は一言確認をしてから、料理を始める。


 清水は一体、どんなものを作るのだろうか。


「ねえ風切くん」


 部屋のちゃぶ台で一緒に待っている崎宮さんが話しかけて来た。


「どうしたの崎宮さん?」

「清水さんってさ、料理得意なのかな」

「そんなの……知らないけど」

「けど?」


 清水神奈子は名家のご令嬢だ。料理の腕も確かなモノを持っていると見ていいだろう。


 しばらくすると、香ばしい匂いが部屋中に漂ってきた。


 この香り……揚げ物か?


「清水さん、唐揚げを作るつもりなのかな」

「そう、みたいだね」


 先攻後攻に分かれたことで、先攻は好きな素材を使えるのだが、清水が選択したのは唐揚げのようだ。


「うちの冷蔵庫の中にある肉は鶏肉か豚肉だから、必然的に崎宮さんは豚肉になっちゃうだけど大丈夫?」

「うん。それは大丈夫だけど……ちょっと意外だったの」

「意外?」

「豚肉の方が使い勝手がいいというか、もしわたしが先攻だったら間違いなく豚肉を選んでるから」


 言われてみると、確かにそうかも。


 豚肉の方がボリューミーなものを作れそうなものだが、清水が選んだのは比較的ヘルシーな印象の鶏肉。


 確かに唐揚げならボリュームがあるが……よほど自信があるのかな?


 気になることは色々あるが、揚げ物となると少し時間がかかりそうなので、俺と崎宮さんは各々適当に時間を潰しながら待っていると……。


「風切さん、崎宮さん、完成しましたよー」


 清水は大皿に盛られた唐揚げをご機嫌な顔で持って来た。


「おお、これが……って、ん?」

「これ、本当に唐揚げ、なの?」


 揚げ物らしい香ばしい匂いがするが、一つだけ問題が……。


 これ……く、くっっっろ。


 目の前にあるのはどう考えても唐揚げではなく、真っ黒な塊だったのだ。


 まさか清水、料理が下手……なのか!?


「ふふっ……さぁ、お二人とも、食べてみてください?」


「「……っ」」

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