29話 お泊まり会は修羅場に


 飛び出して来ちゃった……。


 風切くんに水道とガスのことを聞かれそうになり、逃げるように部屋から出て来て近くの公園のベンチに腰を下ろす。


 風切くんとの半同棲が始まってからと言うもの、ちょっと強引な面が風切くんにバレ始めている。


 水道とガスを止めたのなんて、真っ赤な嘘だし……。


「今もバイトって嘘ついて出て来ちゃった」


 いつまでもこんなことしてたら風切くんが困っちゃうよね。


 でも……風切くんが悪いんだよ。


 風切くんがわたし以外の子とも仲良くするから……わたしは心配で心配で。


 わたしはスマホにある位置情報共有アプリで風切くんの位置情報を見る。


 もう夏休みに入っちゃったんだもん、風切くんと旅行の話もじっくりしたいし……何より清水さんのこと、どうにかしないと。


 あの子は間違いなく風切くんを狙ってる。

 そうじゃないと隣に引っ越して来たりなんてしないもの。


「はぁ……そろそろ戻らないと」


 バイトはシフト明日だった、とか言えばいいし……あれ?


 スマホに風切くんからlimeが入る。

 なんだろう、と思ったら。


「……は? 清水さんがお泊り?」


 ☆☆


 崎宮さんがバイトで部屋から出て行って、入れ替わるように清水が来て数十分。


「…………」

「…………」


 清水とちゃぶ台を挟んで向かい合う俺。

 崎宮さんに『清水が泊まることになって部屋にいる』と送って、既読がついてから10分が経つ。

 バイトだからあと数時間は来ないと思うけど……一応な。


「さっきから黙ってしまって。崎宮さんを待っているんですか? わたしと二人では不安だから」

「……別に」


 正直言ってそうだ。

 お泊りの約束をしたものの、やはり清水と二人きりなのは空気的にマズい。

 崎宮さん、助けて……。


「風切くんっ!」


 息を切らして現れた崎宮さん。


「え、バイトは!?」

「来ましたね、崎宮さん」


「……泊まるから! わたしも!」


 やばい、もっと修羅場になっちまう。

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