22話 メイドのご奉仕はもちろん……
「ご、ご奉仕って……なんなの?」
俺は生唾を飲み込んで聞き返す。
薄らとした灯りだけのムーディーな部屋で、ご奉仕。
もしかしてエッチなご奉仕なんじゃ……。
俺は期待半分、不安半分でソファに座りながら緊張する。
「ふふっ……そんなの」
清水はノンアルコールワインをグラスに注ぎながら、俺の隣にそっと座る。
「オムライスに決まってますの」
「ぬぁっ!」
清水はどこからか出来立てのオムライスをテーブルの上に出すと、新品のケチャップも添えた。
ご奉仕……エッチなのじゃなかったっ!
歓喜なのか落胆なのか分からないが、少し肩の力が抜ける。
清水の雰囲気がエロすぎて勘違いしてしまったが、やはりエッチではなかった。
逆に、もしエッチなのだったら清水とそういうことしたのか俺!?
ただでさえ崎宮さんのことで悩んでる時に、別の女の子とそんなことするとか最低だ!
俺はエッチなのを期待してしまった自分を心の中で殴りながら、清水の方を向く。
「えと、オムライスってことは」
「はい。何をお描きしましょうか?」
元オタクではあるが、栃木の田舎にメイド喫茶は無かったので、メイド喫茶に来たのは初めて。
オムライスに描いてもらうもの、か。
「じゃあ、俺の顔、とか」
「ふふっ、かしこまりました」
冗談半分でオーダーしたのだが、清水はケチャップを使って黄色のキャンパスに俺の顔を描き始めた。
「清水、器用だな……」
清水は慣れた手つきでケチャップを扱い、アニメ調で俺の顔をオムライスの上に描いた。
オムライスの上には乙女ゲーとかに出てきそうな鼻の高いイケメンの顔……これが俺の顔って、美化されすぎだろ。
「それでは風切さん? 一緒におまじないをかけましょうか」
「え゛」
「美味しくなーれ、美味しくなーれ、萌え萌えきゅーん」
「もっ、萌え萌え、きゅーん」
半ば強引におまじないをやらされる俺。
ああ、恥ずかしい。死にたい。
「はい風切さん、あーん」
「えっ!」
「いいですから、あーんしないとめっですよ?」
清水は俺の頬っぺたをツンっとつつきながら、スプーンで俺の口元にオムライスを運ぶ。
「あーん……」
「ううっ……あんっ」
俺は仕方なくそれを受け入れる。
高校の同級生にあーんしてもらうというカオスな状況。
ああ、恥ずかしい。死にたい(2回目)。
「それではそろそろ本題に入りましょうか」
「この空気で入れるかよっ!」
渾身のツッコミが飛び出した。
—— —— —— —— —— —— —— ——
祝70話!長い作品になったなぁ。
これからもよろしくお願いします!
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