21話 メイド喫茶で萌え萌えきゅん♡(地雷系)


 清水と話すためにカフェへ向かっていたのだが、到着したのはメイド喫茶『Heavy♡Lovers』……ってちょっと待て。


「なんでメイド喫茶なんだよ! どう考えてもおかしいだろ!」

「何もおかしくないですわ。ここはわたくしの職場ですもの」

「職場? ……え、清水はここで働いてるの?」

「はいっ!」


 い、意外すぎる。

 東大生のバイト先は、専門家の研究室とか家庭教師とか、とにかく勉強方面のイメージが強かったが……。


「ほら風切さん、入りましょ?」

「え、でも俺、メイド喫茶なんて入ったことなくて」

「そんなに身構えなくてもですわ。わたくしが懇切丁寧におもてなし致しますので」

「き、清水が?」

「ふふ、そうですわ」


 よ、よく分からないが、とりあえずここに入らないと話ができないわけだし……入ってみよう。


 ドアを開けると、中には——ピンク色の世界が広がっていた。


 全面ピンクの壁紙に支配された店内は、完全に萌え系の、アキバにありそうなメイド喫茶だった。

 目がチカチカする……すっごい内装だな。


「「「おかえりなさいませっ、ご主人様」」」


 入り口で待っていた3名のメイドが、入って来た俺たちに向かって綺麗なお辞儀を見せる。


 巨乳ゆるふわメイド、メガネロリ、ショートカットボーイッシュと、全く違う特徴を押し出したキャラクター性のメイドが俺たちを出迎えた。


「このお店、入店時に入り口で待っていたメイドさんを選んで誰にご奉仕してもらうか指名できるんです」


 ご、ご奉仕……指名……出てくるワードがなんかえっちだ。

 っていうか清水もここで働いているなら、清水もご主人様にご奉仕しているのか……?


 清水がオムライスにハートを作ったり、萌え萌えきゅんしたり、それを食べさせたりする姿を想像してしまう。


 わ、悪く……ないな……。

 お淑やかなイメージの清水が恥じらいながらご奉仕する様子はかなりグッと来るものがある。


 清水を指名とか、できないのかな……?


「ふふっ、もう風切さんったら」

「え、え、何が?」

「今わたくしで変な妄想しませんでしたか? 顔に出てましたよ?」


 やべっ! 顔に出てたか!?


「しかしながら残念ですわね。風切さん」

「残念? 何が?」

「わたくし、普段はお店にメイドとして出ていませんの」

「え? でもここで働いてるんだよね? 裏方のキッチンとか?」

「ふふっ……わたくしはここのですので」

「お、オーナー!?!?」


 理解が全然追いつかない。

 え、じゃあ働いてるっていうのはここを経営してるってこと?


「東大に合格した際のお祝いで、お父様からこちらのメイド喫茶の経営を譲り受けたんですわ」


 東大合格のお祝いがメイド喫茶の経営権……んなもんあげるなよ! 父親!

 ツッコミどころは満載だが、俺は話を進める。


「えっと、とりあえず俺はこの3人のメイドさんの中の誰かを選べばいいの?」

「本来ならそうですが……」

「本来なら?」

「風切さんはわたくしの大切なご友人ですので、特別に奥にあるVIPルームへどうぞ。ほら3人とも、わたくしは少し準備をしますので、ご主人様をVIPへ」


「「「はいっ」」」


 清水は足早にどこかへ行ってしまう。

 び、VIPルーム……?

 客人専用の部屋とかあるのか?


「ご主人様、こちらへどうぞっ♡」


 俺は迎えてくれた3人のメイドに連れられ、メイド喫茶の奥にあるVIPルームへ通された。


 VIPルームの中には黒いソファーと背の低いガラスのテーブルが置かれており、部屋の電気も少し暗めでムーディーな雰囲気を醸し出している。

 さっきの目が痛くなるようなキャピキャピメイド喫茶とは打って変わって、ここはキャバクラみたいな大人の雰囲気がある……行ったことないけど。


 ガラスのテーブルの上にはノンアルのワインが置いてあった。

 ノンアルのワイン……? 清水が自分で飲むつもりだったのだろうか。

 それとも最初ハナから俺を……?


「こちらで神奈子様がいらっしゃるまでお待ちいただけたら。あっ、それまで私たち3人と遊びます? ツイスターとか」

「だ、大丈夫です」


 ゆるふわ巨乳のメイドが時間潰しにノリ良く誘ってくれたが、俺は丁重にお断りして、部屋に一人にしてもらった。


 あんな可愛いメイドさんたちとツイスターなんて……俺の精神が持たない。


 俺はとりあえず黒いソファに座りながら、薄暗い部屋の中でVIPルームを見渡す。


 なんか高級そうな置き物とか、家具とかも置かれていて、少し生活感もあるな。


「風切さん——お待たせしました」

「おお、清水……っ!」


 漆黒の髪にホワイトブリムを乗せ、黒いハートのアクセサリーが広がったスカートと、黒と白のコントラストが映えるメイド服を着て現れた清水神奈子。

 襟元や袖口に施されたレースは白いが、ドレスとエプロンは真っ黒という、清水が好きな黒がとにかく強調された独特のデザイン性は、逆に清水の白い肌を強調させながらも、彼女の趣向を強く感じさせた。


「風切さんはご主人様ですので、本日はわたくし清水神奈子が誠心誠意ご奉仕させていただきますわ」

「清水の、ご奉仕……」


 俺はつい胸元に目を向けてしまう。

 それを察したからか、清水はソファの前まで移動すると、胸元に手を当てる。


「実はわたくし、また胸がキツくなってしまって。服も下着もすぐ合わなくなってしまうので大変ですわ」


 清水は自嘲気味に言いながら小さく笑った。


 む、胸…………。

 清水の胸、まだ成長してるのか……?


 横から見ると、とんでもない膨らみのある清水の胸元。

 これでまだ成長してるって……デカすぎんだろ。


「もう風切さん、さっきからわたくしの胸を見過ぎですわ」

「えっ! あ、ごめっ」

「別に構いません……わたくしは風切さんのメイド、ですのでお好きなように」


 これは……ヤバい。

 部屋のムーディーな雰囲気を相まってエロい意味にしか、聞こえないんだが。


 俺は本題に入る前に理性が保てなくなりそうだった。


「それではさっそくご奉仕を……ふふっ」


 清水は言いながらペロッと唇を濡らした。



—— —— —— —— —— —— —— ——

次回で70話という事実。

楽しいねぇ……。

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