20話 カフェってそういうコト!?
悩んだ末に、俺は清水に相談することにした。
それが正しいのかどうかは分からないが、崎宮さんと同じく地雷系女子の女子の清水なら、何か有用なアドバイスを貰えると思ったからだ。
「それでは風切さん行きましょうか? あっ、東雲先輩はどうします?」
「あたしはゲームやるから行かん。どうせ処女のあたしが行ったところで無駄だからな」
「あらあら、拗ねちゃってますね。そんなことを言ったらわたくしも純潔は守っておりますに」
清水神奈子が男性と付き合った経験が無いというのは意外だった。
嘘かと思ったが、清水はお嬢様だから本当なのかもしれない。
栃木の名家・
家柄的に、将来の相手くらい決められているだろうな……。
「風切、はやく行けよ」
俺がボーッと突っ立っていると、東雲先輩が俺の尻をパチンと平手打ちした。
「ちょ、わ、分かりましたよ! ていうか、東雲先輩はどうしてちょっと不機嫌なんです?」
「察するに、風切さんの肉●が見れなかったからでは?」
「き、清水っ! ●棒とか言うなよっ」
「別に風切の肉●なんぞ見たかないわ! ただ、崎宮が気絶するほどの肉●ってのが気になっただけで」
つまりそれ、結局俺の●棒を見たかったってことなんじゃ。
東雲先輩もロリな顔してなかなかマセてるよな……。
「ふふっ、お気持ちは分かりますわ」
いや、分かるなよ!
と、心の中でツッコミを入れながら俺は清水と一緒に部室を出た。
「それで、行きつけのカフェって?」
「ふふ、風切さんにとって楽しい場所ですわ」
俺にとって楽しい……?
意味も分からないまま、とにかく俺は清水について行くことに。
変なところに連れて行かれなければいいが……。
東南大から一番近い駅から地下鉄に乗り、2駅先にある東大前駅で降りると、天下の東都帝国大学の前方にある大通りを歩く。
清水の地雷系はシックな色合いなのにやけに目立つ。
それでも清水の場合は悪目立ちではなく、美少女モデルのように映るのは、彼女の容姿があまりにも良すぎるからだろう。
顔とスタイルが良ければどんな服も似合ってしまう……これを『ジョジ●現象』と呼ぶことにしよう。
「ふふっ……風切さん、さっきからわたくしのこと見過ぎではないですか?」
「えっ! そう、かな? ごめん」
「いいえ。お好きなだけ見ていただいて構いません」
清水は黒いスカートを両端を軽くつまみ、お嬢様がよくやるカーテシーを見せた。
見た目こそ派手な地雷系なのに、一々気品があるところが他の女子と違いを見せる。
「でもわたくしは、こうやってまた風切さんとお散歩をできるなんて、考えても見ませんでした」
「え、また?」
「はい。京都でわたくしのストラップを探している時も、こうやって二人で並んで歩きながらお散歩したじゃありませんか」
ああ、またその話か。
そういえば再会した時も同じことを言ってたな。
俺と清水が高校時代、唯一接点を持った2年生の修学旅行であったとあるトラブル。
あの時はたしか……清水がクロコちゃんのストラップを失くしたんだっけ?
同じグループの他メンバーがあまりにも清水に冷たいから、俺は放っておけなかった。
別に清水に良い顔をしたいとか、そんな気持ちは微塵も無くて、あの時の清水は大切なものを失くして今にも泣きそうなのに、誰も親身になってくれないのがあまりにも可哀想だったのだ。
「あの時見つけてもらったたストラップは机にしまっております。もう二度と、落とさないように……」
「お、おお……」
なんていうかさ、今さらなんだけど。
清水って一言一言が重いな……。
「大学で再会した時、風切さんがわたくしのこと覚えていてくれたことが本当に嬉しかったです。わたくしはあなた様のことを片時も忘れておりませんでしたから」
「清水……」
重いな。
ただキーホルダーを拾うのを手伝っただけだよな俺?
暴漢から助けたり、運命の出会いとかも別にしてないよな!?
「風切さんには心より感謝申し上げます。もし風切さんがよろしければ、夏休み一緒に栃木へ帰省しませんか? 風切さんのことはお父様やお母様にも紹介済みですので、あの時のお礼も兼ねて、特別に我が家へご招待しますよ?」
えっ! 清水邸に、俺が招待っ!?
清水の実家は栃木で1、2を争うほど半端ない豪邸で、地元では『清水邸』と呼ばれ、一つのシンボルになっている。
豪邸は西洋建築で某有名建築家に造らせたらしく、庭園や大型のプールなんかもあると噂で聞いた。
あの家に立ち入ることが許されているのは、親族と何十人もの執事、さらにごく僅かの信頼された人間のみと言われているが……俺なんか部外者中の部外者だろ。
一体清水は両親にどんな紹介したんだ?
「風切さん?」
「え、えっと! さすがにあの豪邸に俺みたいな一般人が行くのは、ちょっと気が引けるというかー」
「え……? わ、わたくしの家に、ご不満があるのですか?」
「いやいや、そういう意味じゃなくて」
「それなら夏休みまでに風切さんが安心できるような世間一般的な住宅を建築させますっ! それならわたくしのお家に来てもらえますよねっ?」
「い、いい! 分かった! 行かせてもらうから! 建てなくていい!」
「ふふっ……風切さんったら、最初からそうおっしゃってくださればいいのに。シャイですわね」
ダメだ、やはり生きてる世界が違う。
「風切さん、そろそろ行きつけのカフェが見えて来ますわ」
「お、おお……」
一緒に歩いてるだけでかなり(メンタル的に)疲弊してるんだ……が? ん?
到着したのは東都帝国大学の近くにある小さなビルだった。
少し古そうな6階建てのビルで、ビジネスライクなビルとは少し違うような雰囲気がある。
「このビルの3階にありますわ」
「へ、へぇ……」
「エレベーターで行きましょうか」
俺は言われるがまま清水とエレベーターに乗り、そのカフェとやらがある階に移動した……のだが。
「おい清水、ここって」
俺は目の前に現れた店を指差す。
「はい。こちらはわたくしが勤めているメイド喫茶ですっ」
「メイド喫茶っ!?」
ボロビルにしては3階だけピンク色のタイルと壁紙に覆われており、エレベーターの真ん前にある店の入り口には『♡おかえりなさいませ♡』というドデカ看板と、入り口のドアにはピンク色のクソデカリボンが飾られている。
ドアの窓からメイド服を着た可愛い女の子たちがあくせく働いているのが見えた。
なんで天下の東都帝国大学の近くにこんな浮ついたメイド喫茶が……。
「メイド喫茶『Heavy♡Lovers』へようこそ、風切裕也様っ」
「清水……本当に俺の話聞く気あるのか?」
「ふふっ、もちろんあります。でも……少しわたくしで楽しんでからでも、良いではありませんか?」
「は、はぁ……」
なんか清水も崎宮さんと同じで俺の想像のはるか上を行くなぁ……。
俺は半ば強引にメイド喫茶へ入店するのだった。
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今日の一言
「清水もええ子やんなぁ。(激重)」
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