13話 お風呂でパニック!?!?
「崎宮さん! どうしたの!」
俺が風呂場に駆けつけるとそこには——。
「えっ……」
風呂場の折り戸が開けっぱなしになっていて、そこには浴室のタイルで尻餅をついている崎宮さんが……ん!?
「あっ、さ、崎宮さん! はだ、はだ、裸っ!」
背中を向けながら尻餅をついている崎宮さんは、布一枚纏っていない生まれたばかりの姿だった。
湿り気を帯びて一纏めになっているピンク色の長い髪に、びしょびしょになった真っ白で綺麗な肌。
背中向きのため秘部は見えていないものの、背中からでも、脇の隙間から垣間見える横乳がその大きさを物語る。
これが、崎宮さんの、生お、おっぱ……!
「——ねえ、風切くん」
徐に立ち上がった崎宮さんは、折り戸に掛かっていたバスタオルを手に取って、前を隠しながら俺に詰め寄って来る。
まさか、俺が急にお風呂に入って来たから怒ってる!?
「ご、ごめん! 別に俺は裸を凝視するつもりはなくて! 悲鳴が聞こえたから焦ってて、必死になってたというか!」
「そうじゃなくて! このお風呂!」
俺が必死に弁明していたのに、そんなのはどうでもいいと言わんばかりに、崎宮さんは前を隠しながら湯船の方を指差す。
「え? お風呂?」
「こんなのおかしいじゃない!」
「お、落ち着いてよ崎宮さん! あと大切な所が少し見えそうだから!」
さっきから湿ったバスタオル越しに崎宮さんの桃色のアレがチラチラと透けそうに……崎宮さんのアレって、ちゃんとピンク色……。
「そんなのどうでもいいから!」
「よ、よくないよ!」
俺は風呂場のラックにある新しいバスタオルを手に取ると、崎宮さんに無理やり手渡す。
「……あ、ありがと風切くん」
やっと落ち着いてくれた崎宮さんは、バスタオルを身体で一周させて身体を覆った。
バスタオルを纏った崎宮さんと俺は浴室の前で向かい合う。
こうしてタオル越しで見ても、やはり崎宮さんのおっぱいが大きすぎて……。
見るからに両手では収まらないくらいの爆乳を目の前にして、俺は生唾を飲んだ。
そんなことばかり考えているからか、今の状況が飲み込めない。
「それで、話を戻すけど」
俺が崎宮さんのおっぱいに夢中になっていると、崎宮さんはしっかり話を戻して来た。
そうだ、俺は崎宮さんの悲鳴を聞いてここに来たんだった。
決して崎宮さんの裸をラッキースケベ的な展開で見たかったわけではない。(少し見てしまったが……)
「風切くん……わたしに"嘘"ついたよね?」
「う、嘘?」
さっきから俺に肌を見られたことは全く気にしない崎宮さんは、眉を顰めながら俺を見て来る。
自分の裸を見られるよりもショッキングなことがあったのかな。
「あ! もしかして風呂場にGが出たとか?」
「ふざけてないでさっさと白状して」
ふ、ふざけてないんだけど……!
バスタオルを纏った崎宮さんは、鬼気迫る表情で目を細める。
これ、マジで怒ってる……こんなに怒ってる崎宮さんは初めてだ。
俺がついた嘘……一体なんのことだ?
崎宮さんには全て正直に話しているし、嘘をつくことなんて無いはず。
思い当たる節がなさすぎて、どうしたらいいのか分からなくなる。
「ごめん崎宮さん、俺には何のことやら」
「お風呂」
「え?」
「さっきお風呂から出た時、風切くんは『良いお湯だった』って言ったよね?」
「う、うん」
「でもあの湯船……どう考えても風切くんが入ったとは思えない」
それを聞いた瞬間に、俺はビクッと身体が反応してしまう。
「風切くんの後風呂の割には、あの湯船には風切くんの髪一本浮いてないし、真っ白な入浴剤で誤魔化してるけど、あまりにもお湯が綺麗すぎる」
「ぐっ……」
「それに湯船のお湯が湯張りの設定温度と変わらないくらい温かいのも違和感があるの。普通、人が入ったら少しぬるくなるものなのに、追い焚きもしていないお風呂がこんなに温かいのはおかしい」
「ぐぐっ……」
推理ゲームの犯人になった気分だ。
そう、全て崎宮さんの言う通り。
先に風呂をいただいた時、崎宮さんから汚いと思われたくなかった俺は、湯船に浸からないという選択肢を見出した。
そもそも湯船に浸からなければ、髪の毛や垢も浮いてこないし、崎宮さんに汚いと思われることもない……そう考えたからだ。
「風切くん、入ってないのね?」
やっぱり崎宮さんは頭が良いなぁ。隠し事はできないや。
「ご、ごめん崎宮さん……俺、崎宮さんに汚いとか思われたくなくて、湯船に入らずシャワーで済ませちゃったんだ」
「…………」
「嘘ついたこと、怒ってる?」
「うん。風切くんがこんなことするなんて……本気で怒ったよ」
そんなことで怒るなんて……じゃあさっきは自分の裸を見られることより俺が湯船に浸かってなかったことに怒ってたのか。
「わたしに遠慮してお風呂に浸からないなんて、わたしがそんなこと気にする気の短い女って言ってるのと同じじゃん!」
「そんなこと無——」
「あるよっ! 結局風切くんにとってのわたしって、そんなものだったの!」
そんな……風呂に入らなかっただけでこんなことになるなんて。
このまま喧嘩になって、疎遠になったら……そんなの嫌だ。
俺はこんな形で喧嘩したくないっ!
「違うよ……違うよ崎宮さん! 俺は……崎宮さんに嫌われたくなかっただけなんだ!」
「嫌われたくない?」
「崎宮さん細かいこともすぐ気にするから、俺の後風呂が汚いとか思われるのが怖くて! 清潔感ある男アピールしたかったし、お、俺は、いつでも崎宮さんの前ではカッコつけたいから! だから! 必死で!」
俺は頭に浮かんだ言葉を無理やり紡いで必死に伝える。
無茶苦茶だけど、これが俺の本心だ。
「崎宮さんに嫌われたくないから! 俺、嘘ついたんだ。だから嘘ついたことは謝るよ……ごめん、崎宮さん」
「か、風切、くん……」
俺は涙目になりながら頭を下げた。
はぁ……カッコ悪いな、俺。
やっぱこの前まで陰キャだった俺じゃ、カッコつけることすらできないんだな……。
辛くて涙を拭こうとした時、顔に柔らかい何かが飛び込んできた。
崎宮さんの……お、おっぱ。
崎宮さんの両手が俺の肩に回されて、俺はバスタオル越しに崎宮さんのおっぱいに抱きしめられていた。
崎宮さんの張りのあるおっぱいに顔が挟まれて、今にも呼吸困難になりそうだ。
これが……女の子の、お、おっぱいの感触……。
「風切くんは、いつもカッコいいよ?」
「え……」
顔を上げると、崎宮さんが慈愛に満ちた笑顔でこちらを見下ろしていた。
「そりゃ風切くんはいつも必死だけど、いつもわたしの隣にいてくれて、いっぱい可愛いって言ってくれて、誰よりも優しい。そんな必死な風切くんは、誰よりもカッコいいからっ」
「さ、崎宮さん……っ」
バスタオルを纏った崎宮さんに抱きしめられながら、俺は目から溢れて来た涙で崎宮さんの胸元を濡らした。
「もぉー、風切くん泣かないでよ」
「だ、だって! 崎宮さんに嫌われたんじゃないかと思って!」
「そんな、風切くんのこと嫌いになんてならない…………けど」
「けど?」
「それはそれとして、嘘をついた風切くんにはしっかりお仕置きをしないと、ねっ♡」
「え……?」
———————
次回、エッチなお仕置き不可避?
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