11話 風切くんのハンバーグ
ちゃぶ台に晩御飯を並べ、わたしと風切くんは向かい合って座る。
やっと風切くんと晩御飯が食べれるのね……。
わたしは自分の目の前にあるハンバーグを見つめる。
これは風切くんが作ってくれたハンバーグ。
少し形が不恰好だけど、このハンバーグには風切くんの愛情が100%詰め込んである。
そう思うだけで風切くんを求める身体の細胞がウズウズして……。
「あのさ崎宮さん!」
「え、な、何? 風切くん?」
「そのハンバーグ……俺が作ったやつだよね?」
「え? わ、分からないけど、そうなのかな?」
わかってるに決まってる。
でも風切くんの手でコネコネしたハンバーグを食べたいなんて言ったら絶対風切くんに嫌われちゃう。
だからわたしはグッと気持ちを押し込んで答えた。
「俺の作ったハンバーグって、ちょっと横長で変な形してるからさ。逆に崎宮さんのハンバーグはこんなにも綺麗だから」
「き、綺麗……」
わたしに対して言ったのではないとはいえ、"綺麗"と言われただけでドキドキする。
風切くんはいつもわたしの地雷系ファッションを可愛いとは言ってくれるけど、その反面、綺麗と言われるのには慣れていないのもある。
「なんか崎宮さんの方に俺のハンバーグ回っちゃったみたいだから交換しようよ」
「えっ……?」
そんな……風切くんのハンバーグが……。
皿ごと持っていかれそうになったその時、わたしの手は伸びていた。
「だ、ダメっ!」
わたしは風切くんの手をグッと掴んだ。
「さ、崎宮さん!? て、手が」
「これはわたしが……食べるの」
「え、なんで?」
「なんでもいいから……風切くんはわたしの、食べて」
上手い理由が思いつかずに、ついゴリ押ししてしまう。
風切くんは地雷系なわたしを理解してくれた唯一無二の存在とはいえ、さすがにおかしいと思われたかも……。
もし風切くんにおかしい子って思われたなら……わたし、死にそう。
「お、俺さ、本当は崎宮さんのハンバーグ食べたかったんだ」
「……へ?」
「だから……崎宮さんのハンバーグを食べていいなら、嬉しいよ!」
わたしの中の陰った心に陽光が差し込んだ。
風切裕也という太陽から放たれる光を、わたしは身体中に浴びて今にも浄化しそうになる。
風切くんの純粋無垢な笑顔……やばい……さっきとは違う意味で死にそう……!
「崎宮さん? どうしたの?」
「い、いや、その……わたし」
「もしかして俺のハンバーグ食べるのが嫌だったとか」
「そんなことないから! 風切くんのハンバーグはわたしが食べる!」
「あ、ありがとう、崎宮さん……」
わたしは手を合わせて「いただきます」と言って、念願の風切くんハンバーグを口にする。
これが……風切くんの味っ!
—————————
次回・崎宮可憐、お風呂場にて衝撃の事実を知ることに……
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