7話 崎宮可憐の激ヤバ妄想ディストラクション


 なっ、なんか今日の風切くん積極的……っ!


 急にわたしみたいな女の子と結婚したいとか……もうそれ、わたしでいい、よね?

 むしろ今のは告白、だったの?


 か、風切くんがやけにわたしのこと褒めてくれるのは、やっぱりわたしのことが好きという気持ちの表れ……なのかしら。


「ハンバーグのタネってベトベトするし作るの難しいね? 全国のお母さんはこれを毎回作ってるなんて凄いなぁ」


 ハンバーグのタネ……。

 わたしは風切くんのタネをこの身体で全て受け止めてあげたい……。


「崎宮さん? 急に手を止めてどうしたの?」

「え、あっ、ごめんね風切くんっ」


 わたしったらまたはしたないことを考えて。

 風切くんは清純なわたしのことを褒めてくれたんだから、風切くんと●●●したり●●●する妄想で頭いっぱいなんて口が裂けても言えない。


 さっきはついポロッと「プロポーズ」って言っちゃったけど、結局流されちゃったし……。


 わたしは風切くんのことをこんなに想っているのに、やっぱり風切くんはわたしのことをただのお友達だと思ってるのかな。


「うわ、やっぱりこのベトベト慣れないなぁ」


 風切くんがどう思っているかは置いておいて、とりあえず今は風切くんの手でこねられた、『風切くんの(ハンバーグの)タネ』を食べたい。

 お腹が壊れてもいいから、風切くんの手の温もりが感じられる生でそのタネを……。


「さ、崎宮さんってさ」

「う、うんっ」


 急に話しかけられたわたしは、よだれをすぐに拭いて答える。


「手料理、誰かに食べさせたことあるの?」

「え? うーん、家族には振る舞ったことあるけど、なんで?」

「あっ、えっと……崎宮さんの手料理を食べる初めての男子が、俺なんかでもいいのかなって」

「もぉ、何言ってるの風切くん。なんか変だよー?」

「そ、そうだよね、ごめんごめん」


 ふふっ、風切くん安心して。

 わたしは他の男のことを下等種族にしか見てないの。

 全ての初めてはあなたに捧げるつもり……でもその代わり、あなたの初めても全てわたしに……。


「こんな感じでいいかな崎宮さん? って、崎宮さん?」

「……風切くんこそ、手料理、他の誰かに食べさせたことあるの?」

「え、俺? えっと、一応あるけど……」


 は?

 ちょっと待って。どういうこと?

 風切くんの手料理を食べた女がすでに存在する……?

 ふざけてる。

 風切くんの作ったものを体内に入れた女がいるなんて……許せない。


「あれは高校の時かな。オタク友達に家で焼きそば作ってあげたことあってさー」

「ふーん」


 なんだ……男か。

 もし女だったら嫉妬で狂って喉を掻きむしっていたかもしれないけど、下等種族の男にあげていたなら大丈夫。

 その辺のカブトムシに餌を与えたのと同義な訳だし、それくらいなら慈悲深い風切くんが普段からしそうなことだもの。

 やはり風切くんは優しいわね。


「まぁ、結局あんまり美味しくないって言われちゃって。それから悔しくて少しは料理勉強したんだよ? だからカレーと焼きそばはバッチリ作れるし!」


 わたしの風切くんの料理を美味しくないなんて、やっぱり風切くん以外の男は終わってるわね。

 もしそんなこと言って風切くんが病んじゃったらどう責任を取るつもりなのかしら。

 風切くんはわたしのことを全肯定してくれるほど心が広いんだから、逆にみんなも風切くんのことを全肯定するべきだわ。


 現にわたしは風切くんのことを全肯定してあげている。

 だからもし風切くんがえ、エッチなことしたいって言ってきたらもちろん……ふふっ。


「おーい崎宮さん、ハンバーグのタネもできたし、そろそろ焼こうよー?」

「え、う、うん」

「なんか崎宮さん、今日はやけにぼーっとしてるね」

「そうかな? 普通だと思うけど」


 まずい……風切くんと一緒にいる時間が普段より長い分、風切くんのことばかり考えてしまって違和感を与えてしまっている……!


「バイトとかで疲れてるなら遠慮なく言ってよ崎宮さん。ご飯の準備が終わったらお風呂掃除してくるから、ご飯食べた後すぐ入って! 疲れが取れる入浴剤があったと思うから後で探すよ!」


 風切くん……優しすぎる……っ!


 風切くんは素直で表裏がないのが分かっているからこそ、その優しさが純度100000%だからなおさら嬉しい。

 もう彼氏にしたい種族No.1『風切裕也』でしょ。


「ありがとう風切くん。でも本当に大丈夫だから。わたしが責任を持ってちゃんと美味しいご飯食べさせてあげるから、待ってね?」

「う……うん」


 風切くんのためなら、無限に料理を作れる。

 ああ……付き合って同居して永遠にイチャイチャしたい……。


『ピンポーン』


 わたしが邪なことを考えていると、急に部屋のインターホンが鳴って来客を知らせた。


「ん? お客さんかな?」

「風切くんはハンバーグ見てて。わたしが出るから」

「え、でも」

「いいからいいから」


 わたしはエプロンを着けながら玄関先に向かう。

 もし風切くんのご両親だったらどうしよう。


 家族公認同居になったら外堀は完全に埋まる。

 あとは風切くんとわたしのピンクランデブーの始まり……。


「はい、風切でーす」


 わたしは堂々と風切性を名乗りながらドアを開けた……が。


「……ふふっ、やはり、そうでしたか」


 外にいたのは漆黒のストレートヘアを靡かせた真っ黒な地雷系女子。


 その名は……清水神奈子……ッ!


「なんで、あなたが……っ!」

「さっきぶりですね、崎宮さん♡」



————————

怖い(笑)

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