1話 地雷系女子が隣に引っ越して来た件
玄関先にいたのは地雷系ファッションの美少女・崎宮さんだった。
俺は崎宮さんを見た瞬間に驚いてしまい、後にたじろく。
「ど、どうして崎宮さんがここに……!?」
「え? か、風切、くん!?」
崎宮さんも俺を見て驚いたようで、持っていた化粧箱に入った引っ越し蕎麦を、ポトンと足元に落とした。
「な、なんで風切くんが、お隣に!?」
「それはこっちの台詞だよ崎宮さん! って、お隣?」
「うん。今日からわたし、この部屋のお隣に引っ越して来たの。だから引っ越し蕎麦を渡してご挨拶をしようと」
さ、崎宮さんが俺の隣の部屋に引っ越してくるなんて。こんなこと……あるの!?
この周辺のマンションには腐るほど部屋があるし、その中でよりにもよって俺の隣の部屋なんて……運命とかそんなレベルの話じゃない。
「凄い驚いちゃった……まさか風切くんがお隣さんになるなんて」
「お、俺もだよ!」
こんなラブコメのご都合主義的展開が起こるなんて、そりゃ嬉しいけど、一周回って怖いくらいだ。
「えっと……このまま立ち話だと悪いし、良かったら俺の部屋入る? 色々聞きたいし」
「う、うん」
お互いに驚きを隠せないまま、俺は崎宮さんを部屋に招き入れた。
今日は講義に行ってる場合じゃないし、出席無しの講義だからサボるとしよう。
大学に行くつもりで準備をしていたのがある意味良かった。
寝起きの姿を崎宮さんに見られたら人生終わる。
「風切くん、講義に行かなくても大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。4限は出席無しのノート取るだけの講義だから後で日向に聞くよ」
「そっか」
崎宮さんは頭が良いから俺の講義のスケジュールも覚えてくれてるみたい。
心配してくれるなんて……やっぱり崎宮さんは優しいなぁ……。
「あ、ちょっと待ってね崎宮さん」
「う、うん?」
俺は廊下から部屋に繋がるドアを開ける前に、ちょっと崎宮さんに待ってもらう。
もしかしたら臭いかも……。
生活臭が残ってることを心配した俺は、先に部屋に入って消臭剤のファイブリーズを噴き、窓を開けて換気する。
「これでいいかな……」
俺は部屋を見渡す。
意外とミニマリストなので家具以外に部屋に置いているものは少なく、物干し竿に干していた洋服もしっかり畳んで仕舞う習慣があるため、散らかってはいない。
これなら崎宮さんに見られても大丈夫だな。
俺は廊下に出ると崎宮さんを部屋に迎える。
「お邪魔しまーす……わぁ、風切くんのお部屋って凄いスッキリしてる」
よく言えばそうなのかもだけど、悪く言えば何もないんだけなんだよなぁ……。
逆に崎宮さんの部屋はピンク一色なのかな?
「と、とりあえずここに座ってもらえれば」
「ありがとう風切くん」
部屋の中央にある背の低いテーブルの前に座椅子を置き、崎宮さんに座ってもらう。
俺は冷蔵庫から麦茶を出してコップに淹れると崎宮さんの前に出す。
「まさか崎宮さんが隣に引っ越してくるなんて思っても見なかったから、さっきはびっくりしたよ」
「わたしもびっくした。風切くんがこのマンションだったなんて……ふふっ、運命みたいだね?」
運命……なのかな。
「崎宮さんはどうして引っ越しを?」
「えーっとね、前のマンションのお隣さんが、ちょっと怖いロックな感じの人で……騒音被害が酷いから引っ越すことにしたの」
「それは、大変だったね」
引っ越しするくらい困ってたなら相談してくれれば良かったのに……。
俺ってまだそこまで崎宮さんに信頼されてないのかな。
「前のマンションがそうだったからこそ、こうやって引っ越し蕎麦でお隣さんとも仲良くやれたらと思ったんだけど……風切くんがお隣さんで凄い安心した。もし困ったことがあったら頼れるし、何より風切くんだから」
「さ、崎宮さん……」
崎宮さんは俺を信頼してくれてくれてる……。
「困ったことがあったら何でも言ってよ! ほら、荷解きとかダンボール捨てたりとか! 俺、なんでもやるから!」
俺は嬉しくて興奮気味に言ってしまう。
崎宮さんはそんな俺を見て小さく笑う。
「ふふっ、ありがとう風切くん。じゃあ、さっそくなんだけど」
「うんうん」
「実は、お引越しの時にちょっとしたミスをしちゃって」
「ミス?」
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ミスとは、一体……!?
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