2nd season『地雷に挟まれる男』

1章 地雷系女子はお隣さんになりたい

地雷系女子がやってきたぞ!【2nd seasonスタート】


 ——7月初旬。

 つい最近まで続いていた梅雨のジメジメが、快晴の空と蝉の鳴き声に変わり、蒸し暑さが込み上げる。

 俺が大学に入学してから3ヶ月が経った。


「……ああ、今日は4限からだったな」


 部屋のカーテンから差し込んだ陽光で目が覚めてベッドから身体を起こす。


 俺の名前は風切裕也。

 大学進学と共に陽キャになることを目指して東京に上京して来た元陰キャオタクだ。


 初日のゼミで大学デビューに失敗したことで大学初日からぼっち生活を余儀なくされたが、同じゼミで、見た目が派手な地雷系ファッションだったからハブられていた、地雷系女子の崎宮さんと友達になった。


 崎宮さんは地雷系ファッションだから周りに距離を置かれているものの、他の女子と比べると抜群に端正な顔立ちをしていてめちゃくちゃ可愛い。

 さらにスタイルも完璧(特に胸)で、すれ違う誰もが振り向くほどの美少女。

 そんな彼女と元陰キャの俺じゃ釣り合わないと思っていたけど、崎宮さんは優しいから俺みたいな男でも友達としていつも隣に居てくれる。


 俺は崎宮さんの隣に立つ男として相応しくなるためにも、日夜陽キャ男子を目指しているのだ。

 そのための一つとして、俺は初めてサークルに入った。

 日向という同じゼミで仲の良い陽キャ女子に誘われて入った旅行サークル。


 本来は女子限定のサークルらしく、俺は手を出す勇気もない陰キャだからという理由(東雲先輩曰く)で特別に入ることができた。


 旅行サークルには崎宮さんはもちろん、2年生の東雲先輩、ゼミも同じの日向と矢見さん、さらに俺と同じ高校だった(こちらも地雷系女子の)清水がいる。


 俺の同級生、清水神奈子……彼女はまだ謎の多い女子だ。

 高校時代はお淑やかなお嬢様だったのに、大学に入ってから急に黒い地雷系ファッションの女子として俺の前に現れた。


「今日は講義の後に旅行サークルの会議があるし、みんな集まるってことは清水も来るんだよなぁ……」


 個人的には清水と崎宮さんの関係が不安だ。


 だってシンプルに地雷系と地雷系が集まったら色々とヤバそうだし。


 崎宮さんは地雷系と言っても、ちょっと裏で好きなものに重い感情を抱きやすいだけで、普段は優しいし……可愛い。

 その一方で清水はお嬢様気質はあっても表情が読めないタイプの女子だから、何を考えているか分からない怖さもある。


「まあ、一緒のサークルで活動してればそのうち清水のことも分かるよな」


 朝支度を終わらせて最後にワックスをキメてから俺は部屋を出ようとする。


 すると——俺が部屋から出る前に、ピンポーン、と部屋のインターホンが鳴らされた。


「ん? マンションのエントランスじゃなくて、玄関のインターホン?」


 普通、郵便などの荷物の場合はマンションのエントランスから鳴らされて、防犯のためにエントランスの映像が部屋の小さな液晶に映し出されるのだが、今はそれが無かった。


 そういえばなんか昨日引越し業者が部屋の前をウロウロしてるのをドアスコープで見かけたような。


 やけに右隣の部屋がうるさかったから、誰か引っ越してきたのかな?


 大学進学前、俺は親と一緒にマンションを選ぶ際に、たまたま両隣の部屋が空いていたこの一室を選んで入居した。


 隣人トラブルって怖いし、初めての東京生活で色々心配だから親から絶対にここにしろと言われたのだ。


 大学から近いしすぐに埋まると思っていたけど、東南大の近くには新築のもっと良いマンションが山ほどあるため、古めのこのマンションは不人気らしい。


 それもあってこの3ヶ月はずっとどちらの部屋も空いていたけど、やっと新しい入居者が決まった。


「てことは、引越しの挨拶かな?」


 俺はすぐに玄関の鍵を開けてドアを開く。


「はーい…………!?」


 玄関先にいた人物。

 夏の日差しと重なるピンク色のストレートヘアに、惹き込まれるようなその大きな瞳と目元の赤味のあるアイシャドウ。

 レースフリル付きのピンクブラウスと、黒のジャンパースカート。


 まるで2次元から飛び出してきたかのように特別な存在感を放つ美少女が、俺の玄関先に……って!


「今日から隣の404号室に引っ越してきた崎宮可憐です。よろしくお願いしますっ」

「さ、ささささ、崎宮さん!?!?」


 隣に引っ越して来たのは超絶美少女(地雷系)との生活が始まった。


【2nd season スタート♡】

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