32話 女子との関わり方
清水と、会う……。
高校時代は、修学旅行で一緒のグループになったけどほぼ話したことなかったわけで。
清水と話すのは、少し……いや、かなり気まずい。
「今日はサークルが無いし、うちの学食で会う約束してるんだけど、どう?」
「……俺、清水と会っても上手く話せないと思う」
「そんなことないでしょ、同じ高校だったなら積もる話も山ほどあるだろうし」
「そんなの、ない。あるわけない」
俺は日向の目を見れず、目を逸らしながら吐き捨てるように言う。
「……もしかして、風切って清水ちゃんと喧嘩とかしてた?」
「喧嘩とかそのレベルですらないんだよ」
「ど、どゆこと?」
「なんとなく分かってると思うけどさ、俺、高校時代は友達めっちゃ少なくて、同じ趣味のオタク仲間とかと教室の隅で話すのが多い、ただの陰キャだったんだ。つまり清水神奈子とは真逆の立場だったんだよ」
「でも風切って、あたしといる時はちゃんと話せてるじゃん」
「そ、それは……」
そういや……なんで日向といる時ってこんな自然な感じで話せるんだろう。
日向は崎宮さんと同じく俺には眩しすぎる太陽みたいな奴なのに。
「風切ってさ、相手のことを上に見過ぎなんじゃない? きっとあたしのことはちょっとウザい感じの女子ってイメージだから自然と話せるんしょ?」
「そ、それは確かにそうだな」
「もーっ、確かにって……はぁ」
日向はため息をつくと、ジロッと半目で俺を睨んでくる。
「ほんと、風切はあたしには普通なのに、崎宮ちゃんみたいな周りと比べて抜けてる子の前ではいつも丸くなっちゃってるよねー?」
「そ、そんなつもりはない! ただ、崎宮さんは今までに無いタイプの異性の友達だから、余計に気を遣っちゃうというか」
「分かってる分かってる。でもさ風切、そういう所は直した方がいいよ」
「直す? なんで?」
「あたしは風切の過去とか聞いたから理解できるけど、あたしら女子って普段から想像以上に人間関係に神経使ってるし、人によっては態度が変わる男子とかマジで嫌われる対象っつうか」
「そう、なのか」
別に俺は故意に態度を変えていたつもりはない。
日向の場合はなんていうか、見た目の割に俺みたいな元陰キャでも話し易かったというか。
「まあ風切の場合はあんま女子に慣れてないみたいだし、意図してなくても女子によって態度が変わっちゃってるのは仕方ないかもだけど」
「な、何も返す言葉がない……全部日向の言う通りだ」
「でしょ? でもそれってオタクみたいな見た目の男子ならまだしも、今の風切はダメだから」
「今の、俺?」
「うん。今の風切って、あたしのアドバイスもあって見た目だけなら普通にイケてる男子って感じ」
日向が急に褒めるので、俺は照れて顔が緩みそうになったが、それを遮るように、
「だからこそ、通用しないから」
という日向の鋭い声が飛んでくる。
「イケてる見た目で女子によって態度が変わるヤツなんて女子からしたらただのヤリチン野郎だし、警戒されるからね?」
「やりっ!?」
「なにその図星みたいな反応。風切って本当はヤリチンだったり?」
「ちげーよ! 断じて違う!」
「でしょ? だからなおさらそう思われたくないなら誰にも普通に接しないと」
「……わ、分かった。気をつけるよ」
こんな俺でも他の女子と態度が違うだけでヤリチンとか思われたりするなんて、日向に言われるまで気づきもしなかった。
女子って敏感で複雑な生き物なんだな……。
「じゃ、清水ちゃんにもあたしと話してる時と同じくらいの感じで話しなよー」
「それは鬼みたいにハードル高いんだけど」
「大丈夫大丈夫。講義終わったら学食直行ね?」
「……はいはい」
本当は行きたくなかった俺だが、日向に促されてある程度覚悟を決めた。
「てかさ、今の清水さんってどんな感じなんだ? 高校時代は黒髪ロングのお淑やかな清楚系お嬢様って感じだったけど」
「今の清水ちゃん? うーん、まあ中身は風切の言うお淑やかなお嬢様って感じだけど……まあ、風切なら受け入れられると思うよ」
「受け入れられる?」
「細かいことは会えば分かるからさ」
「?」
なんか言葉に含みがあったが……まあ、いいか。
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