5章 地雷系は道連れ世は情け♡
31話 風切くんは無自覚系主人公
「崎宮さん……今日は来ないのかな?」
崎宮さんにプレゼントを渡した翌日の講義で、同じ講義を受けるはずの崎宮さんの姿が見当たらない。
講義開始まであと5分。
いつもなら崎宮さんは前の講義が終わる3分前くらいには必ず講義室の前にいるのに、今日はいなかった。
俺は中央にある席に座り、入り口の方をずっと見つめる。
もしかして昨日の一件で俺のことを嫌いになったから、俺と同じ講義に来ないとか……?
「いやいや! 矢見さんのlimeが本当なら、崎宮さんは喜んでくれていたわけだし! すぐ悲観的になるな俺!」
もう俺は前までの陰キャじゃない。
ゼミでいっぱい友達(女)もできたし、サークル(女子ばっかり)にも入る予定だし!
ついに俺も大学陽キャデビューに成功したんだ。
いつまでもネチネチ考えるのはやめよう。
「前向きに、前向きに」
「——おっはよー風切っ!」
「どわぁぁっ!」
ブツブツ考え込んでいると、背後から抱きつくような勢いで日向に肩を掴まれる。
「ひ、日向っ!」
「なんでそんな驚いてんの?」
いつも通りスッキリしたショートヘアの日向は、白のニットセーターと黒いタイトスカートというシンプル且つ大人びた服装で、黒のレザーバッグを片手に俺の前に現れた。
崎宮さんといい日向といい、スタイル良すぎだろ。
それに日向の場合は、シンプルな色合いだからこそ変に服に目がいかずスタイル良さが際立つファッションで、本人の性格がよく現れている。
「どしたの風切? あ! もしかしてあたしに惚れちゃったの!?」
「なんでそうなる!」
「だってさ、あたしのことジィッと見つめながら何も喋らないから」
「そ、それは……」
どれだけ陽キャになりきっても、陰キャ時代からの癖である女子を凝視してしまうのは治ってないらしい。
「それより隣いい? 今日一緒に講義受ける子いなくて寂しかったんだよねー」
「あ、ああ。いいよ」
俺は一席左に移動して、日向に席を譲る。
コミュ強の日向がぼっち講義……か。
「あのさ、一緒に受ける子いないって……前に愚痴ってたあの一件と関係あったりするのか?」
「うーん、まあそんな感じ? なんかゼミ内の空気的に、あたしと矢見ちゃんと崎宮ちゃんは女子グルからハブられてるからねぇ」
「そ、そうなのか」
日向は他の女子のことを考えて男子たちに物申したようだが、次の日にはその女子グルからハブられる羽目になるとは……。
女子の世界って色々大変だよな。
「ま、風切も男子グルからハブられてるワケだし、お仲間お仲間〜」
「……は? お、俺ってハブられてんの!?」
「多分ね。だってこの前のゼミの時に、後ろの席から風切のことを『地雷系女子と普通に喋ってるヤベェ男』ってわざと聞こえるように陰口言ってた奴いたし」
「うわ、マジかぁ……」
昨日は崎宮さんの胸が机にずっしり乗っているあの光景に目が集中してしまい、周りの声が入ってこなかったから全然気づかなかった。(我ながら最低だとは思う。でも男の性なんだ。許して崎宮さん)
「残念だったね。風切」
「はぁ……でもまあ、今更あの男子グループに入りたいとは思わないし、言わせておけばいいか」
「そうなの? てっきり風切ってあのグループ行きたいんじゃないかと思ってた」
「そりゃ最初はそう思ってたけど……陰口を叩くような奴らと仲良くするより、日向や崎宮さんと話してる方が俺は楽しいからいいよ」
「風切…………ぷっ」
「え?」
「あははっ! あはははっ」
「お、おい! なんで笑うんだよ! 俺、結構良いこと言ったのに!」
「いやぁ、ごめんごめん!」
日向はケラケラ笑いながら白い歯を見せる。
「やっぱ風切は面白いよ。普通ならハブられたあたしたちなんかと仲良くしたいとか思わないっしょ?」
日向は水色のネイルで笑いで目に浮かんだ涙を払った。
「ほんと、風切って不思議だわ」
「そ、そんなこと言ったら日向の方が不思議だろ。そんなコミュ強の陽キャ美少女なのに、俺みたいなオドオド陰キャ男子と話して!」
「び、美少女? あたしが?」
「当たり前だろ。なんだ? 無自覚系主人公にでもなったつもりか?」
「……う、ううん。そうだよね、あたしって美少女だよねー。スタイルも超良いしー?」
「自分で言うなよ」
すぐ増長する所も、日向らしいというかなんというか。
「……どっちが無自覚なんだかねー」
「は? それどういう意味だ」
「なんでもなーい。それより風切、この講義の後ってヒマ?」
日向は頬杖をつきながら隣に座る俺を覗き込んでくる。
「この後は5限に講義があるくらいだから暇って言ったら暇、だけど……どこか行くのか?」
「あ、デートお誘いだと思った? ざんねーん違うよ」
「お、思ってない!」
「思ってたくせにー」
「要件を言え要件を!」
俺はデートだと思ってしまったことを誤魔化すために必死に言い張る。
最近崎宮さんや矢見さんと立て続けに出かけてたから、ついその誘いだと思っちまった。
「実はこの後ね、
「清水と……?」
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