28話 風切くんのプレゼント♡
さっき買ったプレゼント、崎宮さんに渡さないと。
ちょうど矢見さんが支払いをするためにレジへ行ったので、そのタイミングを見計らって俺は崎宮さんに話しかける。
「さ、崎宮さんっ!」
「へ?」
「少し、店の外に出て待ってようか」
「う、うん……」
覚悟を決めた俺は、崎宮さんと店から出る。
「風切くん?」
崎宮さんは俺の顔を覗き込むように見てくる。
多分、俺の顔が緊張で真っ赤になっているから気を遣ってくれているんだ。
でもごめん、崎宮さん。
今は体調不良とかじゃなくて単純に……。
ぷ、プレゼントってどうやって渡すんだ……!?
という童貞らしい問題に直面していた。
俺はまだ人生で一度も女子はおろか友達にすらプレゼントを渡したことがない。
そもそもプレゼントを渡すシチュエーションになったことがないのだ。
誕生日も友人と「おめでとー」って言い合うくらいで済ませてたし。
よ、よし。いいから落ち着け俺……。
「あのさ、崎宮さん」
「?」
崎宮さんは俺がプレゼントを買ってることを知らない。
だから急に渡したらびっくりさせちゃうかもだけど……崎宮さんなら喜んでくれるはずだ。
大丈夫、大丈夫。
「俺……」
パクパクドキドキが止まらない。
大丈夫、大丈夫大丈夫大丈夫。
「崎宮さんに、わ、わわ」
だ、大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫!!!!
「渡したいものがあって!」
い、言えたじゃねぇか……。
俺は心の中で安堵した。
「わたしに渡したいもの?」
俺はすぐにバッグの中からラッピングされた小さな箱を取り出す。
そして崎宮さんの前に両手で差し出した。
「これ……わたしに、プレゼントってこと?」
「うん。し、知り合ってからずっと、俺に新しいことを教えてくれたり、今日だって矢見さんのことで頼んだら、ちょっと色々あったけど、なんだかんだで受け入れてくれて……崎宮さんみたいに凄い可愛い子が、俺なんかの友達でいてくれることが心から嬉しくて。その気持ちを、形にしたいと思ったんだ。だから、受け取って欲しい」
俺がそう伝えると、崎宮さんは見て取れるくらい驚きの表情を浮かべながらも、ゆっくりと俺のプレゼントを受け取ってくれた。
「開けても、いい?」
俺は唇をグッと噛み締めながら緊張の面持ちで首を縦に振る。
崎宮さんが包みを解く音が、ドキドキを加速させた。
喜んでもらえると……いいけど。
「こ、これって」
「うん、ノンホールピアス。崎宮さんって、いつも耳には何も付けてないみたいだったから、今持っているアイテムと被らないかなぁと思って。形は崎宮さんが好きなピンク色のハートを選んだから」
「風切くんが、わたしのために? このプレゼントを?」
「うん! いつもお世話になっているお礼」
艶感のあるピンク色の金具で縁取られたハートモチーフのピアス。
離れてみると小ぶりに見えるが、崎宮さんの小さな耳たぶとちょうど重なるくらいの大きさだ。
崎宮さんはすぐにそのピアスを耳につけてくれて、俺に見せてくれる。
「風切くん……わたし、本当に嬉しい。今まで貰ったプレゼントの中で一番。ううん、今後もずっと風切くんがくれたこのピアスが一番だと思う」
「そ、そんなに? あはは」
そう言ってもらえるとかなり嬉しいけど……ちょっと重い、かな。
「……うっ、うう」
「え、さ、崎宮さん!?」
崎宮さんが急に両手で目を押さえながら呻くので俺はすぐに手を差し伸べるが。
「お待たせでーすっ!」
最悪のタイミングで矢見さんが店から出てきてしまった。
これ、もしかして勘違い……。
「ちょっと風切さん! なんで崎宮さんが泣いてるんです!」
「いや、その、俺は」
「女の子を泣かせるなんてサイテーですよ! さっきまでは優しいお方だと思っていたのに、見損ないました!」
「そんな!? ご、誤解だって! ね、崎宮さん!」
「風切くん……風切くん風切くん風切くん風切くん風切くん風切くん風切くん風切くん風切くん風切くん……」
「な、なんで風切さんを連呼してるんです?」
「俺にも分かんないよ!」
むしろ俺の方が泣きたかった。
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