25話 約束したい、キミと。
店内のテーブルで矢見さんとフラペチーノを飲んでいると、バイト終わりの崎宮さんが声をかけてくれた。
そこで、ちょうどいいから地雷系ファッションの上級者として崎宮さんに矢見さんの地雷系ファッションを選んでもらうことに……なったと思ったんだけど。
「嫌……」
珍しくムスッとした顔の崎宮さんは、眉間に皺を寄せながらそっぽを向いた。
崎宮さんはなかなか首を縦に振ってくれないのだ。
「お、お願いします! 私、崎宮さんに憧れてて!」
「わ、わたしに……憧れてる? 何が?」
「崎宮さん自身もそうですけど! わたしは崎宮さんのファッションに憧れてて……!」
「ふーん」
崎宮さんはいつになくクールな受け答えをする。
怒ってる時の崎宮さんって少し口調強めなのかな?
そもそもの話、どうして崎宮さんは怒ってるんだろう。
矢見さんみたいな地雷系が好きな子となら、崎宮さんも同志ができて喜ぶのかと思ったんだけど……。
女子の気持ちって本当に難しいなぁ。
「でもそれなら風切くんとここに二人で来た理由は? そこだけ矛盾が生まれるんじゃない?」
「へ?」
「わたしが目的なら、一人で来ても問題ないよね?」
「そ、それは……風切さんが崎宮さんと仲良さそうにしてたので、話を合わせやすいかなって」
罰が悪そうな顔になりながら小声で答える矢見さん。
異性とスノトに来てみたかったとか、この状況で言えないもんなぁ……。
このままじゃ矢見さんが可哀想だし、ここは俺も空気を読んで話を合わせないと。
「そうそう! 俺は崎宮さんと友達だから頼まれたんだよ」
「ふーん? ……その割には、やけに二人で楽しそうにフラペチーノ飲んでたね?」
崎宮さんの鋭い眼差しが今度は俺に向けられる。
怒りの矛先が、お、俺に……。
「なんで楽しそうにしてたの? 教えてよ風切くん」
「べ、別にそれはいいじゃん! 今日の崎宮さん、ちょっとおかしいよ」
「は? それなら風切くんの方がおかしいよ。わたし以外の女子とあんなデレデレデレデレデレデレデレデレ」
「え? 風切さんは私にデレデレしてたんですか?」
「し、してないよデレデレなんて!」
なんか会話が拗れてさらに面倒な方に向かっているような……。
「とにかく!! 崎宮さんお願いっ!」
「風切さん……」
「矢見さんも本気で崎宮さんみたいな可愛いファッションをしてみたいらしいんだ。だから、力を貸して欲しい!」
「…………」
崎宮さん、ちょっと怒り気味だから、断られるかもだけど……俺の知ってる崎宮さんなら。
「……はぁ。風切くんがそこまで言うなら」
やっぱり……折れてくれた。
崎宮さんは少しだけ気難しいところがあるけど、心は優しいもんね。
「でもその代わり風切くんは今後この店舗に来ないこと。これを約束してくれるならついて行ってあげる」
「え? なんで! 俺、崎宮さんの仕事するところまた見たいんだけど!」
「ダメ!」
「ええ……」
崎宮さんのバイト服姿(と、
「とにかく! その約束を風切くんが守るなら行ってあげる」
よ、よく分からないけど……まぁ、ここは矢見さんのためにも約束しておこう。(頸は夏になればまた見れるかもだし!)
「わ、分かったよ。もう来ないって約束するからお願いしてもいいかな?」
「……うん」
こうして崎宮さんと約束を交わした俺は、矢見さんの買い物に3人で行くことになった。
店から出て大通りを歩きながら崎宮さんの行きつけのショップとやらに向かった。
「それで矢見さん? 今回の予算はどれくらないなの?」
「えと、お洋服のためにバイトで貯めたお金があるので、予算の方は特に気にしない感じで大丈夫です」
崎宮さんの質問にそう答える矢見さん。
「矢見さんは何のバイトしてるの?」
「保育補助のお仕事です! 私、子供たちと遊ぶのが好きなのでっ」
矢見さんが子供たちと……。
子供と間違えられそう、と思ったことは黙っておこう。
「風切くんそれは失礼だよ」
「ちょっ、脳内読まないでよ!」
「なんですか??」
矢見さんは首を傾げていた。
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