23話 崎宮ちゃんは嫉妬狂い
「ちょいちょい崎宮ちゃん、手止まってるよ」
「…………」
「おーい崎宮ちゃん?」
「…………」
「地雷系〜、ワガママプリンセス〜」
「…………」
「むぅ。こうなったら……! 崎宮ちゃん、サボるならバイト代減らすよー」
「いつもサービス残業してるんで少しは許してください」
「なんだ聞いてんじゃん」
「フルシカトしてただけです」
「ひどっ! あたし店長なのにぃー!」
蒲池店長からだる絡みされながらも、わたしはフラペチーノを作るふりをしながらテーブル席の二人を見ていた。
風切くんって、わたしのロリータファッションが好きなわけだし、見た目がロリッぽい子の方が好きだったりするの……?
風切くんと矢見さんがテーブルで楽しげに話しているのが本当に嫌。
胃袋に穴が空きそうなくらい……嫌なの。
「おやおや? 急にお腹押さえてどしたん? 生理?」
「それ、セクハラですから」
「いや、本当に生理なら店長として心配だし。てか今日はやけにイライラしてるよね? ……あ、イライラはいつもか」
「殴りますよ」
「それパワハラ〜」
蒲池さんはケラケラと笑いながらも、わたしの代わりに素早い手つきでフラペチーノを作ってカウンターへ流した。
一応説明しておくと、蒲池さんはただの店長じゃない。
全国で数人しかいないスノー・トップスで一番の名誉とされるゴールドエプロンの保持者であり、敏腕女性店長として業界では名が知れている。
ま、わたしにとってはただのセクハラ上司なんだけど……。
「さっきからあっち見てるけどさ、もしかしてあそこに座ってるカレが崎宮ちゃんの彼ピッピ?」
「……はい」
「いや絶対嘘でしょ。なんで彼ピなのに他の女と楽しげにフラペチーノ飲んでるのに許してんのよ。ったくどんなNTRカップルだよ」
やれやれと言わんばかりに蒲池店長は呆れたため息を吐きながら、ナチュラルにわたしの胸をタッチしてくる。
「あ、相変わらずおっぱいの張りが凄い……」
「蒲池さん」
「なーに?」
「わたし、彼とあの女の子が楽しそうにしてると吐きそうになるんです」
「へぇ……」
わたしがそう打ち明けると、蒲池さんはフラペチーノを作りながら目を細めた。
「崎宮ちゃんはあの男の子のこと好きなん?」
「好きというか……彼にとっての"可愛い"が、常にわたしであって欲しくて」
「うんうん」
「できるなら彼の全てをわたしが管理してあげたいというか」
「う……んんっ?」
「最近必死にお金を貯めてるのも……できるなら彼の隣のマンションに引っ越したくて」
「……うん。想像の150倍重いねぇ」
重い? 何が?
世の中の女性はみんな男子にこんな感情を抱くんじゃないの?
それに風切くんは、その辺の下世話な男子と違ってピュアでふわふわしてる男子だからわたしが守ってあげないといけない。
恋なんてしたことないけど、少なくともわたしはそう思う。
間違ってないよ。だってわたしは風切くんの1番の友達なんだから。
「仕事に集中できないなら仕方ない。崎宮ちゃん、今日は早めに上がっていいよ?」
「え? ほんとですか?」
「崎宮ちゃんにはいつも新人育成で残業してもらってるし、タイムカードはちゃんといつもの時間で切っとくからさ安心して」
「蒲池さん……ありがとうございます!」
「あたしは崎宮ちゃん応援してるからさ。女子高時代の崎宮ちゃん知ってるからなおさらね」
蒲池店長は珍しく太っ腹なことを言っていた。
とりあえず風切くんを矢見さんから守らないと。
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