17話 女子という生き物
「よろしくね、矢見さん」
「はいっ。風切さん」
矢見さんとの初顔合わせを済ませると、グループを組む俺たち4人は、前の方に固まって座った。
日向と矢見さんが一列前の席に並んで座り、その後ろの列に俺と崎宮さんが座る。
日向の友達って言うくらいだから、日向と同じくスポーツ女子っぽい明るい性格の女子をイメージしてたんだけど……矢見さんはガッツリ可愛い系でなおかつ若干ロリっぽい子だ。
くりっとしててまん丸な可愛いらしい目と、少し幼く映るハーフアップの髪。
何より体型が中学生と見間違えるくらいだし、崎宮さんと比べるとなんともまあ……。
俺は隣に座る崎宮さんの胸元をチラッと見る。
お、おおお……。
スマホをイジる崎宮さんのたわわな果実が教室の長テーブルの上に乗っている。
そのピンク色ブラウスの上からでも分かる胸元の果実の大きさ。
前の列に座る二人は机と胸の間にスペースがあるのに、崎宮さんの場合は空間など無い。
隣に座られるとそればっかりに目が行ってしまう。
「ん? どうしたの風切くん?」
崎宮さんは小首を傾げ、左隣に座っている俺の顔を覗き込んできた。
や、やばい……! おっぱいガン見してたとかバレたら色んな意味で死ぬ!
「な、なんでもないよ!」
「……ふーん」
崎宮さんは不思議そうな顔でそう答えると、再び手の中のスマホに目を移した。
あ、危なかった……。
崎宮さんは俺がエロいこと考えてないって信じてくれてる。
だから
俺が反省の意を込めて瞑想していると、前に座っている日向がこっちに振り向く。
「あ、そだそだ。ずっと気になってたんだけどさ、崎宮ちゃんって何カップあんの?」
「は?」
お、おいぃぃぃぃいいいいい!!
日向ぁぁぁあああああっっ!!! なんてこと聞いてんだ!!
「ひ、日向さん……! 風切くんの前で言うのは恥ずかしいよっ」
「当たり前だよ! なんてこと聞いてんの日向!」
「だってさぁー、あたしや矢見ちゃんとは色々とレベルが段違いだから。矢見ちゃんも知りたいよね?」
「私も知りたいです!」
「ちょっと矢見さんまで」
こんなの、悪ノリにも程があるよ!
ただでさえ崎宮さんは、そういう感じのノリが嫌いで——。
「え、H、かな」
………は? え? え?
え、Hって言ったか?
Hっていうのは、ABCDEFG……の次ってことだよな?
え、H……?
「Hカップ!? 崎宮ちゃんマジで!?」
さ、さささささ崎宮さんんんんん!?
なんで言ったの!? てか、え、Hって……!
それってグラドルとかでよく見るサイズのGカップより上ってことだよね……?
俺はゴクリと生唾を飲み込む。
お、落ち着け。
今ここで下半身に血を回したら、崎宮さんのことをエロい目で見てる事になってしまう。
俺は崎宮さんと純粋な気持ちで友達になりたかったんだ。
俺は下心で崎宮さんのことを見ているわけじゃない。それは本心だ。
崎宮さんをえっちな目で見てはいけない……!
俺がそんなことを考えていると講義の時間になってチャイムが鳴り、ゼミ担当の薄井先生が入ってきた。
「第二回の基礎ゼミの始めます」
相変わらず時間ぴったりだなこの人。
「本日から4人グループを組んでもらって課題に取り組んで貰います」
グループを組む件に関しては、どうやら日向が先輩から聞いていた通りみたいだな。
でもどうして日向は俺たちと組もうなんて言ったんだろうな?
教室をぐるっと見回すと、初日に日向が属していた女子グループの数人が、陽キャ男子たちと組んでいた。
あれ? なんで男子グループと組んでるんだろう……。
前に日向から聞いてた愚痴の内容だと、ゼミ初日の後に親睦会で、男子グループの自慢話を女子たちがドン引きで聞いてたって話だったのに……。
俺なんかが知ったこっちゃないが、女子グループの中でも何かあったりしたのかな?
俺が気になっていると、崎宮さんがツンツンと俺の肩をつついてきて、俺の耳元に顔近づける。
ち、近いっ……!
それに崎宮さんの香水、甘くてスッキリしててすっごい良い匂い……。
「グループの件は、あんまり考えすぎない方がいいと思うよ……」
崎宮さんは俺の耳元でボソッと呟く。
「崎宮さん……? なんで俺の考えてること分かるの……?」
「だって風切くん、さっきからずっと後ろの後ろのグループを見てたし」
「え……? あ、そうだよね。分かっちゃうよね」
俺と崎宮さんは隣同士でコショコショと耳打ちをし合う。
「この前、日向さんが愚痴ってた男子たちがウザいっていう話。女子の中にはそれを特に悪く思ってなかった女子がいたのかも」
「悪く思わなかった? なんで?」
「えっと、今回の件に当てはまるのか分からないけど、女の子の中にはご飯を奢ってもらえるならどれだけウザい自慢話でも聞ける、って子もいると思うから。その点で日向さんと意見が食い違ったのかも」
な、なるほど……さすが崎宮さん。
つまり女子グループ内でも価値観の違いがあって、それでゼミの女子グループが分かれたと。
「まぁ、わたしは日向さんの気持ちの方が分かるよ。だって男なんて……」
「え?」
「……ううんなんでもない。それよりあんまり気にしない方がいいよ」
「う、うん」
崎宮さんが言っている通りなら、最初は6人だったゼミの女子グループから、日向と矢見さんは陽キャ男子たちの絡みが嫌になって離れた、と。
それで、残った4人は2人ずつに分かれて陽キャ男子たちと組んでいるんだな。
女子って大変な生き物なんだな……。
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