15話 重いあなたとグループを組みたい


「俺と崎宮さんをゼミのグループに?」

「うん、どうかなって」

「でもさ、グループワークなら日向は初日に一緒にいたあの女子グループと一緒にやるんじゃないの?」

「え? ま……まぁなんて言うか……」

「?」


 日向は罰が悪そうに顔を逸らすと口篭らせる。


「ちょっと色々あってさ。あたしとー、あと、もう一人余っちゃってんだよねー」

「色々って?」

「あのさぁ、そこは普通ノータッチでしょ! 喋りたくないから伏せてんの!」


 日向は両手の人差し指でばってんを作ると、唇に当てる。

 ちょっとお茶目な感じがして可愛いかった。


「色々は色々なんだから、察して」

「お、おう」


 色々……マジでなんだろう?

 女子グループ内で人が溢れちゃったとか?

 そもそもゼミのグループって何人で組むのか知らないし、何より……。


「どうして日向はゼミでグループを組むことを知ってるの? ゼミの掲示板にはそんな連絡なかったと思うんだけど」

「うーんと、それに関してはサークルの先輩に聞いたっていうか」

「サークルの先輩? 薄井ゼミの先輩ってこと?」

「そうそう、薄井ゼミって1年生の基礎ゼミと3年生のゼミの2つがあるみたいだから」

「へー」


 この東南大学では一年生の時に「基礎ゼミ」と言う、基本的な知識やグループワークの流れを学び、3年生4年生になってからは本格的に論文を発表したり、グループ研究をする「学術ゼミ」が始まるカリキュラムが用意されている。


「1年の時に薄井ゼミで、3年になってからも薄井ゼミを選んだ先輩が言うには、薄井ゼミって毎年2回目の講義で4人グループ作るらしくて、前期は基本的にその時作ったグループで色んな課題に取り組ませるんだって?」

「じゃあ前期は俺と崎宮さん、日向ともう一人の子の4人のグループで取り組むってこと?」

「そそっ。崎宮ちゃんと風切もどうせ組むならあと二人欲しくなるっしょ? だからwin-winじゃない?」


 確かに日向の言う通り俺と崎宮さんはおそらく組むことになっていたから、ありがたい話ではあるけど……。


「崎宮さんはどうかな?」


 俺だけの意見で快諾するわけにはいかないし、崎宮さんの意見もしっかり聞いておかないとね。


「わたしも、オッケーかな。このままわたしと風切くんの二人だけだったら余っちゃうところだったし」

「お、俺も同じく」


 崎宮さんも同意見ならいいかな。


「でも一つだけ、日向さんに確認したいんだけど」

「なーに崎宮ちゃん?」

「日向さんのお友達ってなんでしょ?」


 女子であることを強調して日向に訊ねる。


「そだよー?」

「……ふーん、なら大丈夫。かな」


 安心した顔で言う崎宮さん。

 崎宮さんはどうして女の子であることを確認したんだろう……?


「ま、そーいうことだし、風切はハーレムってワケ。嬉しいっしょ?」

「は、ハーレム!? 俺はそんなこと気にしてないから! グループワークはあくまで授業の一環なんだし」

「えー? でも周りに女子だけだし、華やかで良かったじゃん」

「それは、そうかもだけど!」

「…………」


 俺が日向から揶揄われていると、隣に座る崎宮さんが眉を顰めた。


「崎宮さんどうしたの?」

「……風切くんに……虫が」

「え、虫?」

「ううん、なんでもない!」


 崎宮さんはカバンから取り出したスマホに目を落とす。


 なんだったんだろ?

 もしかして俺以外女子のグループだから、男の俺は邪魔とか……?

 いやいや、崎宮さんがそんなこと言うわけないだろ!


 でもそれならなんであんな難しい顔してたんだろ?


「この後のゼミでその子紹介するからさ、そろそろ行こっか」

「う、うん」


 俺は頷くと日向と崎宮さんと一緒にゼミの講義室に移動した。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る