11話 人と人の繋がりは重たくてとても良い


 どうして日向は俺のlimeを……?


 ちなみに俺のlimeアカウントを知っているのは、高校時代の同級生でオタ友の2人と両親……そして大学で友達になった崎宮さん。

 つまり、可能性としては崎宮さんから聞いた線が濃厚だが、崎宮さんはゼミのメンバーから避けられてたし(あまり悪い言い方はしたくないが)大学では俺と同じ"ぼっち"だ。


 だとしたら、崎宮さんから日向へ俺のアカウントが流れる可能性はゼロ……なんだよな。


 俺はとりあえず駅のホームまで移動して、電車を待ちながら日向に俺のアカウントを知っている理由を訊ねる。


『風切:どうして日向は俺のlime知ってるんだよ? 連絡先、交換してないよな?』


 俺がそう聞くと、limeの既読がすぐについて、返信もすぐに送られてきた。


『日向:風切ってさ、宇都宮南西高校出身でしょ?』


 ……は?

 ど、どど、どうして日向は俺が南西高校出身ってことまで知ってんだよ!


『風切:日向って、俺のストーカーだったりする?』


 冗談めいた感じで聞き返すと、既読がついてからしばらくして、日向から少し長めの返信を送られてくる。


『日向:実はさ、あたしが入ってるサークルに他の大学の子で風切のことを知ってる子がいてさー。その子から高校時代のグループlime見せてもらって、風切のアカウント教えてもらったわけ。ね、驚いたっしょ?』


 な、なるほど……?


 大学で俺と同じゼミの日向と、俺と同じ高校の同級生がばったり会うとか……そんなの驚くに決まってんだろ。


『風切:で、その同級生って誰のことなんだ? 男子か?』


 俺のことをネタにするなんて、同じクラスの陽キャ男子どもと相場が決まってる。

 オタクグループにいた俺たちは、いつも陽キャ男子ども馬鹿にされてきたからな。


『日向:ううん。すっごく可愛い女の子』


「は? すっごく可愛い?」


 まさかの返事に、俺はスマホを見る目を丸くした。

 一軍女子の日向が「すっごく可愛い」だなんて褒めるくらいの女子なんて、同級生にはいなかったと思うが……。


『風切:悪いが俺の高校にはお前の言うほど可愛い子はいないぞ』


 俺は半分日向のことを疑いながらそう返す。


(やっぱ俺の同級生から聞いたなんて話、嘘なんじゃ——)


 と、思っていたら。


『日向:ほらちゃん! 風切、覚えてないの?』


「き、清水……? はぁぁぁあああ!?」


 き、きき、清水きよみず……神奈子かなこっ!?


 その名前を見た瞬間に、俺は驚きを隠せず丸くなっていた目が飛び出そうになった。


 清水神奈子きよみずかなこ——俺の高校で生徒会長をやっていた黒髪セミロングの女子生徒。

 温厚で人当たりが良く男子からも大人気でその上、成績も常にトップという、まさにパーフェクト一軍女子だった。

 大学も現役で東大に行ったって聞いたけど……。


「い、いやいや、その前にどうして清水さんが俺みたいな陰キャのこと知ってんだ?」


 俺が進学した大学だって知る由もないだろうに……。


「ん、待てよ? そういえば2年の時に清水さんと修学旅行の班が一緒になったことがあったよな?」


 その時に連絡用で作った修学旅行のlimeグループから抜けた記憶ないし……清水さんが見せたのは多分それだな。


 てか、清水神奈子なんてもう二度とその名前を聞くことがないと思ったが……まさかの所から名前が出てきたな。


『日向:風切って崎宮さんといい可愛い子ばっかり繋がりがあって凄いねー? あたしも含めて〜』


 うん……最後のは余計だな。


 でも日向って崎宮さんのことちゃんと可愛いって思ってるんだな? ちょっと意外。

 他のゼミ生たちと同じように地雷系ファッションに引いてるのかと思ってたし。


『日向:ねえねえ、風切が崎宮さんをどうやってナンパしたのか聞きたいからさー、ゼミの日に崎宮さんも学食連れてきてー?』


 さ、崎宮さんを……?


 この前の件で二人はちょっぴり険悪な感じだったし、これを機に上手いこと友達になれたり……?


「ダメだ。友達の友達が友達になれるわけない。これは陰キャ歴の長い俺の経験則だ」


 でもまあ……聞いてみるだけ崎宮さんに聞いてみよう、かな?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る