言えない告白

 ビアンという言葉がキライ。

 そう強がるのは、自分がその枠に当てはまることが出来ないから。

 だって、知らなかったんだ。

 女の子を好きなままでいても、良いんだって。


 憧れの先輩がいた。

 ボブショートで、ゆっくりめに話す、軽音部の先輩だった。

 キーボードと歌詞を担当していて、とても切ない歌詞をいつも紡ぎ出していた。

 甘酸っぱい、女子高生味が溢れるそれは、私の背中に貼りついて、いつもふわふわと夢を見せてくれた。或いは、妄想を。

 憧れの先輩だった。

 コンビニ行くときに腕を組んだり、嬉しい時は抱き合ってはしゃいだりするときは、同性でよかった、と思ったんだ。

 でもさ、でもね。

 だから。

 高校を卒業して、付き合う事になった男と結婚して、家庭を作った。

 田舎だから、それが当たり前なんだと思っていた。

 まあ、当たり前だったけど。


 先輩が、養子縁組をしたって、聞いた。


 女の子と。いや、養子をとったんじゃなくて、パートナーの女性と養子縁組をして家族になったったって。だって、割に昔のことだもの、パートナーシップ制度なんて、なかったから。


 ビアンなんだって。

 先輩から聞いた言葉だった。

 あんたはバイでしょ?結婚してるし。

 そう言われた。


 先輩はビアン

 私はバイ


 うん、知ってる、分かってる。

 でもね、知らなかったんだ、先輩を好きなままでいても良いんだって。

 ああ、それはやっぱり、私がバイだからなのかなあ。


 先輩のことを好きだって、今更言えやしないんだ。


2023.10.18

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