中途半端

 実は女の子の方が好きなんだよね。

 そう、軽い感じで告白したのは、彼女がバイセクシャルなんだって言うから。

 でもあれは、今思えば、ただのパフォーマンスだったのかも。

 自分は人とは違うからっていう、線引きのための、ただ、それだけの。

 だって、彼女は既婚者だ。事の真相なんて確かめる術はないじゃない。

 だから、私は軽い感じで告白した。のに。


「へえ」


 彼女の眼が妖しく光る。

 あ、これは。

 その眼を見て悟ってしまった。

 

 あの言葉は、やっぱりパフォーマンスだったんだ、て。


「ねえ、じゃあさ」


 彼女は頬を少し赤く染めながら私に近づいてきた。

 興奮しているんだ。

 そう思えば、錯覚してしまいそうになる。

 でも違う、この興奮は、ただ単に、面白いおもちゃを見つけた、というやつ。

 だから。


「ちょっと、私にやってみてよ」


 ブラウスのボタンを緩く外しながら、笑っている。

 赤く熟れた唇を、ちょろりと舐めた。

 わかってる、これは単なるパフォーマンス、或いは好奇心。或いは。


「いやだよ」


 それでも、胸がドキドキする。

 だって、憧れてた。

 好きだった。

 でも


「あんた、ダンナいるじゃん」


 だから、だったのに。

 それなのに、彼女は。


「女同士で浮気になるわけないじゃん」


 て、ケラケラ笑うから。

 

 知ってたよ

 あの言葉はパフォーマンスだったんだって

 分かってるよ、彼女はそういう人間なんだって


 だから


「そうだね」


 私は、中途半端に、嘘を吐く。



2023.10.16

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