あなたじゃないと








 認めたとしても、できることなんて、何も、ない。












 大好きな人がいる。

 いつもその人の事ばかりを考えている。

 元気なんだろうか、とか。

 また、体調を崩していないだろうか、とか。

 その人は、大好きな私の推しの書き手様。

 月に1度ぐらいの頻度で、私好みの小説を投稿してくれる。

 あまりにもマイナーなジャンルだったから、とても嬉しくて。

 嬉しくて。

 小説を楽しみにしてますってコメントを送って。

 返信が来たときは、床の上を転げまわってしまった。

 ほんの数行の言葉が、とても甘くて、とても愛しい。

 どんな人なんだろうと想像してみても、まったくわからない。

 それはそうだ。

 でも、パソコンではなくてスマホ打ちで小説を書いているとか。

 そんな事を想像すれば、酷くドキドキする。

 指をスッスッとスライドさせて生み出される、あの官能的な言葉の羅列はキーボードから製作されるよりも、生々しく感じる。

 だって、一つの指で、紡がれるのだ。

 

 唐突に投稿された一文。

 体調不良のため、しばらく冬眠します。

 皆様、お元気で。


 そんな一方的な挨拶で、酷い。

 いかないで、おいていかないで。

 もしも手が届くなら、その裾を掴んで離さず、縋り付いてみっともなく泣き叫んで、きっと困らせて、困らせて、閉じ込めてしまう。

 寂しい、とても寂しい。

 最近は、他にも推しの小説を投稿してくれるひとはいる。

 だけど、違う。嫌だ。この人がいいんだ。

 

 

 大好きな人がいる。

 いつもその人の事ばかりを考えている。

 元気なんだろうか、とか。

 






  あなたじゃないと、満たされないのだ、とか。







2021.4.13

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