第16話 抵抗
ようやく2人とも呼吸が落ち着き始めた時、透が言葉を発した。
「お前、誰だ?」
やっぱり聞こえていた。
私は透に背を向けて体を丸めた。
それはそうだろう、囁いたレベルではない、大声で叫んだのだから。
体が気持ちよくなり、理性が利かなくなっていた。
だから細かい事を頭で考える事ができなくなっていた。
いざ、透に顔を見せるとなると、ドキドキする。
ドキドキはいい意味ではない、悪い意味だ。
透を騙した事が今後の仕事にも支障をきたしかねない。
職場の同僚として、どう振る舞えばいいのかも今は想像出来ない。
それ以上に透の事が好きだけど、私の事を透が好きかどうかは分からない。
“どうしよう?素直に顔を曝すべきか、それともどうにかしてこの場を逃げ切るべきか、はたまた透の理解を得るように弁解すべきか“
到底、今の私にどれが正しい判断か出来る訳がなかった。
「なぜ、俺の名前を知ってるんだ!」
透は語気を強めて私に迫ってくる。
そんな透に恐怖すら感じ、話す事も動く事も出来なくなってしまった。
お互いラバーマスクで視界が封じられて見えていないが、私は透にガッチリハグをされている。
ハグから逃げ出せそうではあるが、目の見えない私は透の部屋から逃げ出せないだろう。
それにこんな格好で外へは逃げられない。
私の服は?そう考えて固まった。
職場の男子更衣室の空きロッカーの中。
透に謝って許してもらうしかなさそうだ。
でも、職場での事、透への気持ちを考えると踏ん切りがつかない。
「正体を明かさないなら、待つよ、いくらでも」
そう言いながら、透は私の足元で何かを始めた。
でも、私は恐怖からか体が動かない。
なにか袋のような物が体を覆っていく。
首元まで来た。
首の辺りで透は何かしている。
“え?透は目が見えるの?“
私がそう思った時、大きな音とともに足の裏が吸われる感触がした。
そして、どうなっているのか、何をされているのか考えている内に私の体は真空パックされたようで腕や足はもちろん指も動かせなくなってしまった。
「さぁて、拷問の時間だ!正直に白状しろ!」
透の怖い一面を今、肌で感じている。
もう私は透にされるがまま、不安で怖くて悲しくて動く事も話す事も出来なくなった。
私は半分ヤケクソになり流れに任せる事にした。
透は動けない私のアソコに何かを置いて固定している、それが電マである事はすぐに分かった。
スイッチが入れられ振動し始めたからだ。
こんな状況でも体は感じてしまう。
さっき、透と交わり逝ったばかりなので、全く抑えが効かない。
すぐに絶頂を迎えそうになるのを必死に堪える。このまま逝ってしまうと、意識を失ってしまいそうだ。
そうなれば、透は私の正体をラバーマスクを脱がせて確認するだろう。
意を決して私から透にお願いする事にした。
“まずは謝って、私の事を嫌いにならないように精一杯お願いしよう“
そう考えたのも、何か別の事を考えていないと快楽で壊れてしまいそうだったから。
「ごめんなさい!」
私が言葉を発した途端、電マが止まった。
“やったー、次の言葉、次の……“
「うぅぅ、うぅ、ううううぅ」
突然、私の言葉が奪われた。
口の中に強制的にボールのような物が入ってきた。
透は私の後頭部でそれを固定している。
私は言葉も奪われた、こんな事なら早く白状しておけば良かった。
後悔しても今更どうしようもない。
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