第14話 透の人形


透は何か持って戻ってきた。

“何だろ?ギシギシ音が聞こえる“

透はそれを私に被せるように着せた。

“どうやら、ワンピースのようだ!“

私が腕を通すと透は背後に周りファスナーをゆっくりと首までも覆う位置まで上げていく。

私は着せられたワンピースを手探りで確認してみた。

スカートは超短い、こんなの着たらお尻が半分くらい見えてしまいそうだ。

そのまま手探りで胸のところまでやってきた。

胸の先にハッキリと分かるチョボが左右に一つずつ。

今、自分で触ってみて焦った。

乳首がこんなにもしっかりと勃起し、ワンピース越しにでもクッキリと分かる。

赤いゴム製のタイツ越しなら尚の事顕著だったに違いないだろう。

透にそれを見られていたかと想像すると、今さらながら恥ずかしくなり顔が火照って熱い。

原因は間違いなく、ワニの着ぐるみを着て胸を床に擦りながら歩いたからだろう。


そんな事を考えていると足元で何かされている事に気づいた。

今度はブーツか、すぐに分かった。

ブーツをそもそも履く事も履かせる事もない透はどう履かせていいのか分からず不慣れな様子。

私は透が途中まで履かせてくれたブーツを引き上げていく。

“え!ちょっと、これ長くない?“

心の中で叫ばずにはいられない。

ブーツの筒は膝を軽く通り過ぎ、太ももの半分より上まで引き上げる事ができる。

おまけにピッタリし過ぎている。

実際には見えていないが、どんなブーツかは容易に想像できた。

こんなブーツ、私は持っていないし、履いていく場所もない。

さらにこのブーツのヒールも想像は出来ていたが念のため触ってみる。

“やっぱり!ピンヒールで、しかも高さもある“

まあ、これで踊ったりする訳ではないと思うので諦めて履いていく。

ブーツのファスナーは透が閉めてくれた。

それにしてもすごいこのブーツ、私のためにオーダーしたかの様にピッタリとしている。

これではまともに歩く事もできるか不安になる。


今度は手を触られた。

“次はなんだ?“

もう、透にトコトン付き合うと決めたからなんでも来いだ。

また、不器用に手袋を嵌められるような感触。

指を伸ばし嵌めやすいようにした。

こちらの手袋もブーツ同様に長い、二の腕まで嵌められているのが分かった。

手首のところにファスナーもついているようだ。


軽く右腕を持ち上げられると、何かに腕を通される。

そして反対側の左腕も、どうやらジャケットのような上着を着せられたようで、前にファスナーがあり、それを上げると腰から上半身が引き締まる。

もう、この服が愛菜ちゃんのライブの衣装だということは容易に想像がついた。


透が何もしてこないので、衣装は全て着用し終えたようなので、立ち上がり両手を広げてポーズを取った。

この衣装は動く度に窮屈さを感じ、ギシギシ音を立てるので、エナメル素材で出来てると思った。

そういえば、愛菜ちゃんのグループ、ENAMEL STYLE 7菜だった。

“だからエナメル素材の衣装かぁ“

今さらながらにそんな事を考えていた。


両手を広げてポーズを取って程なくして、透が抱きついてきた。

そんな透を愛おしく思いギュッと抱きしめ返す。

透は抱きついた私の首元で何かしている。

感触のあった首元を触ると、ワンピースの背中のファスナーの辺り、ファスナーを下そうとするが下りない、ロックされた。

「え!」“なんで?“の後の言葉辛うじて飲み込んだが、声を出してしまった。

透に声を聞かれたのではと、動揺する私を他所に足元で何かしている透。

声を出してしまった動揺から動くのが遅れた。

透はブーツも脱げないようにロックしてしまった。

グローブにもロックしようとした透をなんとか防ぐ事が出来たが、ワンピースとブーツ、その下のゴム製のタイツは脱ぐ事が出来なくなってしまった。


透の声が聞こえてきた。

「さあ、この鍵をどうしようかなぁ?」

目が見えない私が透を捕まえて鍵を奪い取る事はまず不可能。

声のする方向に両手を差し出し頭を下げ、無言のお願いをする。

全く反応のない透。

何度も何度も頭を下げてお願いしてみた。

「じゃあ、鍵をあげよう」

透っていじめっ子的なところはあるけど、なんだかんだ優しいんだよね、そう思いながらウンウンと頷く。

『カチャン、カッチ、ピッピッピッピッぴー』

金属音がした後、何かの電子音がした。

その直後、私の手の上に鍵ではなく、金属の箱が両手の上に置かれた。

手探りでそれが何か調べてみる。

それほど大きくないが、ボタンのようなものがいくつかついたおそらくは金属製の箱。

私が頭を傾げていると、透が話し始めた。

「その箱はタイマー式になっていて、時間にならないと開かないし、中に入れた鍵も取り出せない仕組みになっているんだ」


私は落胆したように、肩を落としたフリをした。

もし愛菜ちゃんなら、そうするだろうと考えたから。

透はジェスチャーだけで、何も話さない私にマイペースで話しかけてくる。

「セットした時間知りたい?」

“まあ、ふつうは知りたいよね“と心の中で呟き。

ウンウンと頷いてみせる。

「12時間!」

透からとんでもない回答。

先の見えない時間を言われて私は床に倒れ込んだ。

12時間と聞いて足に力が入らなくなった。

“まじかー“心の中でまた呟く。

“私、そんなに頑張れるかなぁ“頭の中をさまざまな想像が駆け巡る。


そんな私を見て透が言った。

「ウソウソ、3時間、これはホント」

私は体を起こし考える。

“12時間よりは短いけど3時間かぁ、でも3時間もこの格好で何をしたいだろう、透は?“

そんな事を考えた。



突然、押し倒されて透が私に覆い被さってきた。

突然の事で体が固まって反応出来ない。

そんな私のスカートを捲る透。

“え!何するの、ちょっと待って!“

愛菜ちゃんでない事を透にバレないようにしているので声は出せない。

透が私のお股の辺りを弄っている。

そして、突然私の中へ侵入するものがある。

透の指の様だが、ゴムのような感触。

“え!何?大人のおもちゃ?“

私はこのラバースーツを着てから妙な興奮のせいで濡れている事は薄々自分でも気づいていたが、私の中への侵入物をあっさりと受け入れる事ができるほどとは思ってもみなかった。

しかし、侵入物で堪え切れずに声が漏れる。

「うっ…うぅぅぅぅぅぅ!」

私は手を握りしめて体が強張らせて侵入物に耐える。

私が必死に堪えているのをエナメル素材の衣装が代弁するように音を立てた。


しばらくすると侵入物がゆっくりと後退していった。

「ふっ……ふっ…ふうぅ」

“なんとか、耐えた“


だが、透はまだ覆い被さったまま何かしている。

“透、何してるの?“

私が心の中で透に問いかけた時だった。

さっきの侵入物とは比べ物にならない大きく太いものが私の中へと侵入してきた。

「あっふ……あっ…あっっ…あっ…」

突然の事で声を抑える事が出来ない。

“透、私とH………“

そう思った瞬間、透が激しく動き出した。

私はもう愛菜ちゃんを演じていられる状況ではなくなった。

必死に耐えようとするが、自然と声が、いや喘ぎ声が漏れてしまう。

私は近くにある透の腕をギュッと握った。

“もうダメ、逝っちゃう!“

心の中で呟いたつもりだが、もう堪え切れなくなっていたのだろう。

「あぁぁダメ…逝っちゃう…逝っちゃう…逝くぅぅぅ!」

私は大声で叫んで力尽きた。

そんな私に透はラバーマスク越しにキスをしてきた。

私もそれに応える。

“透、ゴメンね、愛菜ちゃんじゃなくて“

心の中でそっと謝った。

私は透に抱きつき何度も何度もキスをせがんだ。

キスをし過ぎて、ラバーマスクの呼吸穴が少し塞がったけど、構わなかった。


ようやく落ち着いた透は私から離れて、テレビの前へ移動したようだった。

私はもっと透と一緒にいたい、その思いから手探りでソファーを探し当て、透の横へ座り猫のように甘えた。

テレビの音は聞こえるが私には見えない。

透の腕に抱きつき、幸せいっぱいで落ち着いた私は疲れからか急に眠気に襲われ、そのまま意識を手放した。

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