第6話 独り占め計画 決行

昼休憩の間に薬で眠らせた本物のワニを準備する。

俺の心臓は屋外プールと室内プールを仕切る扉の向こうにいるワニの着ぐるみの中にいる愛菜に聞こえるのではないかと、思うほどドキドキしている。


ジッと飛び込むタイミングを伺う。

マネージャーがウエットスーツに着替えて戻って来た。

もうすぐだ。

物凄い緊張感が走る。


“バッシャーン“と大きな音を立てて、マネージャーがプールに飛び込んだ。

現場にいる人の視線がマネージャーに注がれる中、俺の視線の先には愛菜の入ったワニの着ぐるみしか見えていなかった。


扉を開けて本物のワニの尻尾を引っ張り、愛菜の元へ。

ワニの着ぐるみの口を大きく開けると、ハンカチを放り込んだ。

ハンカチには即効性の睡眠効果のある液を染み込ませておいた。

愛菜と入れ替えるように本物のワニを置いて、素早く室内プールの扉の向こうへ戻った。


そのまま愛菜の入ったワニの着ぐるみは抱き抱え男子更衣室へ走り込み、すぐに鍵をかけた。

睡眠効果のある液が効いているようで、愛菜は全く動かない。

ワニの着ぐるみから愛菜を引っ張り出す。

小柄な愛菜はゆうゆう引っ張り出せた。

続けてウエットスーツを脱がせていく。

細身な体に似合わない巨乳で、勃起してくる。

水着も脱がせて裸にした愛菜。

美し過ぎる、今すぐにでも飛びつき抱きしめたい。

そんな衝動を必死に抑えて別の衣装を着せる。

それは俺好みの真っ赤なラバースーツ。

愛菜のパーソナルカラーでもある。

プロフィールや色々と手を尽くして集めた愛菜のサイズから特注で作った衣装。

まずはマスク、鼻と口の所に目に見えないほどの細かな呼吸穴が複数あるが、目は見えない。

おまけにこのマスクトップスと一体になっているので、マスクを被ると胸まで隠れてしまう。

そして、全身足先から指先まで全てを覆ってしまうネックエントリータイプのラバースーツ。

着せやすくする為に潤滑剤をしっかりと体に塗って着せた。

俺の目の前には、真っ赤なゴム人形が横たわる。

見事なプロポーションのゴム人形に感動しながらもそれほど余韻に浸ってる時間はない。

赤いゴム人形になった愛菜に再度潤滑剤を塗る。

ワニの着ぐるみの中はラテックスで出来ている。

先程、愛菜を引っ張り出す際に確認した。

おおよそ、水の中に入ってもいいように作られているのだろう。

愛菜を滑らせるようにしてワニの着ぐるみへと戻す。

そして、ワニの口をラップでぐるぐる巻にし、尻尾を股の間から頭の方へと曲げて、軽くラップを巻いてドラムバッグに詰め込んだ。


一度は計画を諦めていたが、念のため用意しておいて良かった大きなドラムバッグ。

そして、愛菜が失踪したように見せかける為に、別の俺好みの衣装を用意しておいたことも。

水着とウエットスーツの処理は後で戻ってから考える事にした。


時間的にはどっきりのネタバレの時間だ。

俺のロッカーと壁の隙間にドラムバッグを押し込むと急いで屋外プールへと戻った。


ネタバレは終わっていて、検証を始めるところだった。


そして何食わぬ顔で撮影現場に戻る。

もう、屋外プールに入っても構わないと言われたので、屋外プールの脇で撮影を眺める。

足元にいる本物のワニはまだ、眠っているようで動かない。

検証をやっているうちに、滴り落ちるほど、かいていた汗はすっかりひいた。

最後に全員集合するため、ゾロゾロと集まり始めたのを見計らい本物のワニの尻尾を引き摺り、室内プールへと戻す。

頭から水に落とされたワニはすぐに目覚めビックリして水の中で暴れたが、虚しく沈んでいった。

泡だけがプールの水面に浮かび上がる。

それをしばらく眺めていたが、水中で暴れもがいてる様子がないので、ちゃんと目覚めた事を確認しウンと一つ頷くと更衣室へ向かった。


つなぎの作業着から私服に着替えると、ロッカーと壁の隙間に置いて置いたドラムバッグを持つと足早に車へと向かう。

助手席のリクライニングを倒し、ドラムバッグを寝かせるように置いた。

シートベルトをしようかと思ったが、人に見られて勘繰られても困るので、そのまま車を発進させた。

信号で停車する度にドラムバッグの中身が気になる。

どこか途中でカバンを開けて愛菜の様子をみようかとも考えたが、誰かに見られでもしたら大変だ。真っ直ぐ帰る事にした。

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