第12話 刀
テーブルに並べて、
「「いただきます」」
「美味しいです。
ご飯もこうやって食べるとすごく美味しい!」
「ご飯には、炊き込みに混ぜご飯、ソース焼き飯、ピラフにパエリアやリゾットなど。
いろいろバリエーションがあるんだよ」
キラキラした目で
「それはいつ作るんですか?」
「この前鍋のシメで雑炊は食べたけど他のを食いたい?」
「はい!」
「じゃあ、今晩作るか!」
「はい!」
元気がいいな。
餃子にはビールだが、酒類は一切出さない。
ドワーフではないにしてもこのエルフが、飲みまくり、出せ出せと催促しまくり、酔っ払って絡みまくる未来が見えるからだ。
などと俺が思ってる間に、
「美味しかった。
ごちそうさまでした!」
えっ、無くなってる。
「あ、あ〜、ごちそうさま」
食うの早ーな。
並んで片付け、洗い物しながら、
「この後は素振り練習をするから。
一通り教えて素振りを練習してる時に、僕はお姉さん用のドラゴンの骨の刀を作ります。
主武器は弓ですが、接近戦では邪魔です。
なので、接近戦の主武器として作ります。
前にあげた刀は出来次第返してもらいます。
あれは今の僕の体に合った長さで作ってるから、お姉さんでは短いからね」
「はい、喜んでお返しします。
新しい刀楽しみです。
素振り、頑張ります!」
小屋の前で木刀、全長110cmの重さが300g、500gと違う2種類用意した。
握り方、持ち方からすり足、初歩をやって見せ、上下素振りを軽い方から始める。
振りかぶった時に左手の薬指小指が緩んでないか?
手の内が崩れてないか?
両手は正中線上を守れているか?
動作の度に頭と体が前後に傾斜してないか?
肩は大きく動かし剣先は円を描けているか?
振り下ろし後に腕はしっかり伸ばせているか?
手首が抜けてないか?
先ず正しい型を意識して50本やらせてみる。
その後、重い方の木刀でも同じ事をやって今日は終わりにした。
森豚や草原牛の皮を大量に使って人型に模した打ち込み人形を作った。
「どう使うんですか?」
「言うより見た方が分かりやすいから見てて」
準備運動で前後正面素振りを始めはゆっくり、段々早くする。
人形の正面に立ち、中段より起こすと同時に飛び込み人形の頭頂部を打つ。
素早く元に戻る。
繰り返し10度ほど打ち込んで終わりにする。
「こんな感じに敵に見立てて打つんだ。
お姉さんは先ず型を体に覚えてからね」
「はい、今までは剣を相手に向けて振り回してただけでした。
頑張って習得します!」
と言って軽い木刀で上下素振りを始めた。
ゆっくりでいいから正しくを意識して、もう1セットだけしたら弓と魔法をする様にと伝え、倉庫に行き刀の材料を持って作業部屋へ。
亜空間でアースドラゴンの骨と固体化した骨髄を想造魔法の加工を使い超微細粉末加工する。
2つを混ぜて融解させた後に固結、更に熱硬化して芯にする。
芯に骨の超微細粉末を耐高熱被膜しながら超高真空状態で高密度で芯と結合させる。
超高真空状態を元に戻し、高温化する。
高濃度で大量の魔力を流しながら高圧縮焼結して刀を成形する。
急速水冷させる。
刀身は赤黒く、連樋部分にアースドラゴンの骨の白い微細粉末を被膜したり
刃長は74cm。
もちろん、お姉さん以外が所持出来ない、手元に戻って来る様に認証の魔法文字を茎に書いておく。
持ち手部分と鞘はトレントを使う。
2枚のトレント板を茎に合わせて削る。
2箇所に目釘の穴位置に印をしておく。
がたつきがなく抜き差しが出来る様にする。
合わせて草原牛の皮とシルクスパイダーの糸物で仮止めする。
握り具合はお姉さんに聞かなきゃ。
「お姉さん、ちょっと来て握って、細いか太いか握りやすいかみて」
調整しながら太さを決める。
「ついでに鞘の色と柄糸、鍔等好きな装飾を決めて」
鞘は深緑、平巻きの柄糸は朱、鍔は深緑に朱の透楓柄風、柄の皮は白、下緒は朱、柄頭は深緑、鐺は朱。
鞘は刀身が直接当たらない様にする。
刀にハバキを付け、鯉口を合わせる。
固すぎず緩すぎず調整する。
組み合わせて完了。
差すのは俺と同じ仕掛けで剣帯風の革で深緑色でいいか。
体に装備して抜刀し型の動きをして納刀を繰り返す。
やっぱり長いが、風切り音が心地いい。
見た目は派手たが、物は凄くいい。
お姉さんがじーっとこっちを見てた。
「私もそんな風に扱ってみたい」
「きちっと型通りに動ける様になったらね」
と言ってベルトを外しお姉さんに渡す。
「アースドラゴンの骨で作った1振りの刀。
拵全長105cm、刃長74cm、反り1.8cm、元幅3.4cm、先幅2.3cm、重ね0.8cm、抜身重さ620g。
鞘は深緑色の漆地、柄糸と鍔、下緒の朱が目立つ造りだよ」
「綺麗!」
「ベルトして、抜いて見て。指切らない様に」
「わぁ、赤黒い刃に白の筋!
これも綺麗!」
「ゆっくり上下素振りやってみて。
重心を手元にしてるから、振りやすいと思う」
「重い方の木刀と同じぐらい?
木刀より軽く感じる。
これが私専用の刀、めちゃくちゃ嬉しい!」
小躍りして振り回す。
危ねー!近くに人が居るから振り回すな。
「良かった!苦労して作った甲斐があったよ」
距離を取る。
「また魔法陣の追加を描くからお腹出して」
「えっ、外で?」
そっちか?
「じゃあ、小屋に入って」
はいっとお腹を出してくるから、サクッと描く。
ちょっと前までの恥じらいが懐かしい。
「晩ご飯にリゾット作ろう」
ベーコンとタマネギは5mm角のみじん切り。
しめじは石づきを落としてバラしておく。
フライパンに中火でオリーブオイルとニンニクのみじん切りを入れる。
ニンニクの香りがして来たらタマネギを入れる。
タマネギがしんなりしたらベーコンとしめじを入れて炒める。
生米を入れ弱火で半透明になるまで炒める。
別鍋で水とコンソメの素と牛乳を入れ温めておいたスープを水分量を見ながら分けて入れる。
バターを入れよく混ぜ、好みの固さになったらチーズを入れよくかき混ぜる。
塩胡椒で味を整える。
「ハンバーグも作るよ」
森豚肉と草原牛肉を粗めのみじん切りにしてよく冷やしておく。
タマネギのみじん切りをバターで薄っすら色付くまでの炒めこれもよく冷やす。
タネは肉に塩胡椒して粘りが出るまで混ぜ、牛乳にパン粉、溶き卵を入れ、手早く混ぜる。
混ぜたタネを適当な大きさに分け、叩いて空気を抜き、小判形に作り真ん中を窪ます。
中火のフライパンで片面に焼き色が付くまで焼く。
少し水を入れ蓋して弱火で7分程蒸し焼き取り出す。
空いたフライパンにソース、ケチャップ、醤油、バターを混ぜ合わせ軽く煮詰める。
ハンバーグにかけ、付け合わせは千切りキャベツとトマトで出来上がり。
「しめじのたっぷりチーズリゾットとハンバーグをどうぞ」
「「いただきます」」
「ちょっとチーズが多かったか。濃いな」
「私にはちょうどいい」
濃い味が好きだな〜。
「口に合って良かったよ。
ハンバーグの粗挽きは食べ応えがあっていいな」
「肉肉しいです。
前までの味付けは塩だけだったから、ここでの食事はどれも美味しくて、前の食事には戻れないです」
涙は出て無いが泣いている。
「うん、それは大変だね」
「だから、料理覚えるの必死なんです。
いろいろ教えてください」
「僕もあんまり凝った料理は出来ないけど、一緒に作りながら覚えていこう」
「ふ〜っ、お腹いっぱい」
「「ごちそうさまでした」」
「お風呂の湯は入れた?」
「はい、もうじき貯まると思います」
「歯磨きしたら、風呂に入る」
「ご一緒しても?」
「あぁ、いいよ。
一緒に入るか」
「どうしたんですか?
いつもなら1人で入る〜って駄々こねてたのに」
「なんか疲れちゃって、早く寝たい」
「今日は300本の矢に魔法漢字を書きましたし、刀も作りましたから疲れたのでは?
私はいつも通りにしてますから、ゆっくりお休みください」
風呂に浸かり明日のやる事を考える。
「弓に関しては既に合格なんだけど、魔法は風属性を活かしきれてない。
接近戦はこれから」
「模擬戦をやって気付ける事が多いです。
矢を風に、風に矢を合わせると効果があります。
これで決着させられる所までは磨きたい!」
「なら、明日の模擬戦は当てに行くから。
より実戦に近くするから、多少の怪我は覚悟しとく様に」
「あわわわ!」
「当然だろ!
攻撃して来ない相手と模擬戦しても、必死にはならん。
殺気を当てられ恐怖し、怪我して痛みを感じ、それを克服してこそ実戦で戦える。
と言う事だから」
「覚悟しておきます」
「昼までは模擬戦の問題点の洗い出しと反復訓練。
昼ご飯後は魔法と刀の訓練。
主に刀ね」
と言って風呂から上がる。
体を拭いてもらい、部屋着は自分で着るが、髪は乾かしてもらった。
「あとで行きますけど、おやすみなさい」
やっぱり来るのね。
「あぁ」
布団の中で、今のままでは時間はかかるわ、たいして強くはならないわで、俺には何もいい事なしだ。
さっさと遺跡探索に出かけたいのだ。
もう少し強くなってやっと下位の魔物と互角ぐらいか・・・
スキルで感知しまくって、守りながらの探索なら出来るが、俺が楽しくないのだ。
いきなりの遭遇とか、何が居るのか有るのかとかの、ハラハラドキドキがしたいのだ。
索敵や感知を使って何処何処に何々が居るとか、先に分かってしまって何が楽しい?
全くロマンがない!
ならこのままかと言われたら
「もう暫くは」としか言えない。
ガチャっと、
「さぁ寝ましょ」
と言って入って来て、
さも当たり前の様に抱き枕にされる。
「「おやすみなさい」」
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