第10話 魔法
「では、始めよう。
先ずこの世界の魔法について知ってる事を教えて下さい」
「はい、魔法には火、水、風、土の4属性が有ります。
その他に無属性と呼ばれる魔法が有ります。
ここからは私見になりますが、無属性魔法は生活、支援、神聖魔法等が言われています。
何をもって無属性と言われるかは決まりは無く、属性以外だから無属性だと言う者もいます」
以外と大雑把だな。
「更に、時空、精霊、召喚と言った個有魔法と呼ばれる魔法も有ります。
特別な魔法で使える者は非常に少なく、膨大な魔力と緻密な制御を必要としますが、その効果は絶大だと聞いています」
「魔法を使いそれを生業にしている者は魔法使い<魔法士<魔導士<魔導師と呼ばれます。
大半は魔法使いと魔法士で、その境は曖昧で誰でも名乗れます。
魔導士と魔導師を名乗るには魔法組合の承認が必要で認定証携帯が義務であり、名誉と権限が与えられています。
魔導師が強く、魔法使いは弱いと言う階級ではなく、どれだけ魔法に精通し、正しく行使出来るかって事です。
当然、魔導師は強いですが、魔法使いや魔法士でも強い方はおられます。
品位を落とせば降格や剥奪され、組合を追放される場合もあります。
因み私は魔法士です」
「全ての魔法発動は個人の力量に作用します。
魔力が少なければ威力が弱く、上手く制御出来なければ使う魔力程の威力は出ません。
力量以上の魔法発動はほとんどが不発で終わり、稀に自死する事が有ります。
最悪は暴走を起こし、自分だけではなく周囲を巻き込み被害を拡大させます。
記録として、魔物の大氾濫に対して、ある老魔導師が住民を逃して魔物を町に引き込み、自らの命と引き換えに魔法暴走を起こし、魔物共々町1つを壊滅させて侵攻を防いだと言われています」
・・・長かった。
「お姉さんは風魔法を使うけど、どんな魔法が有るの?」
「私が主に使うのはウィンドカッター、ストリーム、エアバレットぐらいかな」
風の刃に強風、風の弾と言ったところか。
「他の属性は使えるの?」
「一応エルフなので使えるんだけど、得意じゃないから、好んで使わない」
「得意と得意じゃないの違いは同じ魔力使っても威力が違うから?
それは制御の問題?」
「そう、制御しやすいのは適性って言われてる。
逆にしにくいのは適性がないって事になります」
「それは魔法を発動して威力みて適性判断してるの?」
「いえ、魔法組合に適性を測れる魔道具があります。
両手で持って魔力を込めると適性順に表示されます」
「魔力は生まれ持った力のみ?
後からでも魔力は上がる?」
「生まれ持った魔力が多い程、後の努力で上がりやすいです。
加齢よって体力と共に魔力も下がる者がほとんどです。制御も使えば使う程上手くなりますが、使わなければ下手になっていきます。
鍛錬で魔法を使い続けると、魔力が加齢による下降より下がらない者もいます」
「努力とはどんな事するの?」
「一般的には魔力を限界まで使う事です。
ただ闇雲に使うより制御しながら使う方が、魔力と制御両方上がるとされています」
「ここに来てからやってる?」
「十分には出来てません。
心像鍛錬は行なっています」
「心像鍛錬?」
「色んな場合を想定して、魔法を発動させずに魔力だけを使う練習です」
イメトレみたいな事ね。
「この世界のエルフは元々魔力は人族よりも少ないです。
適性が高い為に制御が上手く、低い魔力をカバーしているのです。
また寿命が長い為に他の種族よりも長く魔法に接するから、魔力も徐々に増えて制御も上手い、魔法=エルフになっているのです」
逆なのか、エルフは魔力が多いと思ってた。
「大体理解出来た。
魔力は人族の方が高くエルフは低い。
制御力はエルフが高く人族は低い。
エルフが長い寿命で魔力を人族並に増やせれば、制御力が高い長寿のエルフが魔法が上手いという事になるのね。
逆に人族は寿命が短いから魔法を使う時間が限られ、制御は上手に成りにくい。
だから生まれた時から多くて増やしやすい魔力を努力で更に増やし、低い制御力を多い魔力でカバーすると言う事ね」
「その通りです」
「人族は上級魔法をバンバン撃ってイキる。
エルフはいざって時には上級を使うけど、中級でも結構威力が有る。
上級など使うまでもないって言ってエルフの体裁を保つって事か」
「その通りかと」
「なら魔法についてやれる事は、低い魔力を増やす事と制御力の更なる向上になる。
これは話しを聞いてると、普通に日々の努力で上手になれるみたいだけど」
「それでは時間がかかり過ぎます。
それに魔力と制御力が上がって中級魔法を魔力の続く限り数を撃っても強い魔物には効果が薄いです。
全魔力を使っての上級魔法の1撃で牙猿を倒したい。
出来るだけ早く牙猿を討ちたいです」
「いざって時に使う魔法をいつでもにしたいって事ね」
「そうなりたいです」
「手が無い訳ではないが、僕の考えや行動、感情に賛同出来る者にしか力を与える気はない!」
「私は君と共に生活し、基本的に賛同出来ると思ってる。
時には違う意見を言う事もあるとは思う。
でもそれは君を否定する意味ではない。
自分と違う視点で考慮して欲しいからです。
感情の赴くまま生きるのではなく、他者の思いを知った上で、自分の考えで行動する人に成って欲しいからです」
「まぁいいだろう」
僕の事を考えての言葉のようだし。
「それじゃあ」
「あぁ、強くする。
お姉さんの体への負担軽減の為に徐々にだけどね。
強くなったからと言って傲慢にはなったり、鍛錬を疎かにしない事。
力を与える事が出来るなら、それを奪う事も出来るって事を知っておく様に!」
「前にも言った様に、君に助けられた命だ、誓いもある。私はどんな事があっても常に君の傍で寄り添う」
重いよ。
「気持ち的にはいいけど、身体的には距離をとって見守る程度でお願いします」
「無理!心と体は一体!」
あっ、そうですか。
「早速やるから寝室に移動」
「はい」
「上着脱いで背中出してベッドにうつ伏せに寝て」
不審な目で見てくる。
普段は一緒に風呂に入るのに、服を脱げと言うと恥ずかしがり不審な目で見てくる。
この感情が理解出来ない。
俺と同じ魔力量と制御力迄上げられる様に魔法陣を描く。
全属性を上級までと回復、鑑定、空間、飛行、転移、身体強化もその内使える様に先に魔法陣を描いておく。
最後に今後教える刀の剣術の他に体術、弓術も達人級迄上げられる様に描く。
緻密に正確に描いていく。
時間が掛かる。
お姉さんは人の苦労も知らず、呑気に寝息を立てて寝ている。
終わった。
非常に疲れたが、あとは魔力を注入して固定する。
魔力が吸い取られる。
ヤバい!
と思ったら、ベッドの上で寝ていた。
「びっくりしました。
起きたら気を失って倒れてました。
焦って体を揺らしたり、頬を張ったりしたんですが反応無くて・・・
呼吸を確認出来て、ホッとしてベッドに寝かせました」
どうやら魔力を失い気を失っていた様だ。
「ありがとう。魔力を使い過ぎて気を失った様だ」
「良かったです。
私のお願いを聞いて貰っといてなんですが、無理をなさらないで下さい」
「ごめん、ごめん。
初めての事だから、自分でもこれほどまで魔力を吸い取られるとは思ってなかったよ」
「上手くいったんですか?」
「まだ出来てない!
残りは明日やる!」
「もういいです!
命を縮める様な事はおやめ下さい」
魔力枯渇=命を縮めるの世界だからか。
「大丈夫!もう要領は得た。
同じ過ちは2度しない!
それに今止めると何も変わらないぞ。
僕を信じろ!」
「わかりました、信じます。
ですが、今日はこのままお休みください。
晩ご飯もお風呂の用意も私がしておきますから」
「お言葉に甘えて休ませてもらうよ。
後のことはよろしく」
シルヴィーは自分の中に少年の存在を感じていた。
お互いの魔力の相性が良い=お互いの相性が良い。
だから少年の魔力=存在を感じると勝手に解釈していた。
間違いではないが、合ってる訳でもなく、願望である。
コンコン。
「晩ご飯出来たよー」
「ん、ありがとう」
テーブルに生姜焼きが出来ている。
「「いただきます」」
「うん、味付けちょっと濃いけど、焼き加減は良いから美味しいよ!」
「良かった!
沢山あるからいっぱい食べて」
「僕はいつも通りでいいから、お姉さんがしっかり食べて」
「では遠慮なく、いただきます」
モグモグ、ムシャムシャ。
やっぱり遠慮はしないのね。
「「ごちそうさまでした」」
歯磨き終わりに、
「お風呂で倒れたら危ないから一緒に入りますよ」
何?その理由付け、いつも問答無用で一緒なんだけど・・・
髪、体を洗ってもらい、背中に柔らかい感触を感じながら湯船にどっぷり浸かる。
「ふぅ〜、いい湯だ!
魔力の枯渇のせいだけど、気を失ったのは初めてだった。
久しぶりにここまで大量に魔力を使ったわ!」
「魔力の枯渇は命を縮めると言われています。
何回したらとかは分かりませんが、魔力量を増やす為、繰り返し魔力を枯渇まで使ってた魔法士が、そのまま亡くなった事例があるそうです」
「怖い、怖い!
欲深いと碌な事にならない」
「全く、その通りです」
「逆上せる前に上がろう」
お姉さんが髪を乾かしてる間に先にベッドに。
後からしれっとベッドに入って、抱きついて寝る。
「「おやすみなさい」」
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