第34話 突然の妹キャラにはご注意を

「……やっちまったぜ」


 俺は自室にて、ろくに着替えもしないでベッドに寝転んで、昨日のことを思い出していた。


 昨日、俺が義妹のラノベを読んでいた流れから、バブみ系妹になった美優の誘惑に負けてしまい、俺は美優のお腹に抱きついてしまったのだ。


「まさか、美優にあんなにバブみを感じるとは」


 一体、どれくらいの時間そうしていただろうか?


 落ち着くといった感じよりも、突然の事態に戸惑って緊張してしまっている美優の動悸が伝わってきて、こちらも胸の音がいつもよりも激しくなってしまっていた。


 当然、あの後に何ともないように接することは難しく、美優はすぐに俺の部屋を後にしてしまった。


 そして、なんともないように朝も一緒に登校はしたのだが、心のどこかで昨日のことを気にしてしまっていた。


「それに、俺の持っているえっちなゲームが3つもバレてしまったしな」


 結局、俺が義妹系のラノベも持っていて、義妹の良さを語る羽目にまでなってしまった。事の発端は、俺が常に実妹の良さを語り過ぎていたことだろう。


 あとは、机の上に義妹物のラノベを放置したからか。


「そういえば、まだ美優の部屋に行ったことなかったな」


 俺だけこんなに秘密を持たれるというのも不公平だ。一度くらい、妹の部屋にお邪魔してもいいじゃないだろうか?


 そんなことを考えていると、玄関の方で物音が聞こえてきた。


 今日は美優の方が俺よりも遅く帰ってきたので、ちょうど昨日とは逆だった。


 いや、逆というのなら俺は美優の部屋の中で待つべきか?


 いやいや、さすがに妹の部屋で兄が待っているのは色々とマズい気がする。今までやってきたゲームから察するに、そのパターンは誤解しか生まない。


 そんなことを考えていると、階段を上る音が少しずつ近づいてきたのが分かった。


 このまま変な感じを引きずるのもよくないだろうし、ここは逆にグイグイと行ってみるか。


 そう思った俺は、美優が自室に入った音を確認してすぐ、体を起こして美優の部屋へと向かった。


 そして、勢いに任せるように軽やかなノックを数回して、美優が部屋から出てくるのを待つことにした。


 待つこと数秒。すぐに美優の部屋の扉が開かれた。


「お兄ちゃん?」


「ああ、お兄ちゃんだ。今、妹の部屋にお呼ばれされるイベントが発生した」


「お、お呼びした気がないのは気のせいかな?」


 帰宅してすぐにやってきしまったので、当然美優は制服姿のままだった。


 さすがに、急すぎただろうか?


 そんなことを考えて美優の表情を確認すると、美優は突然の訪問に戸惑いながらも、小さな笑みを浮かべていた。


「あれだ。前に俺の部屋の探索はやったけど、美優の部屋の探索はしてないだろ? それをやるのはどうかなと思ってさ」


「そういえば、そうだったかも」


 美優自身も忘れていたのだろう。


美優は少しだけ視線を上に向けて、思い出したようにそんなことを言った後、こちらにじっと視線を向けてきた。


「まぁ、でも、うん。そっかそっか」


「ん? どうした?」


 何かに納得するように頷く美優の様子に俺が小首を傾げていると、突然美優が心の底から漏れだしたような笑みを浮かべていた。


 嬉しさによって頬は淡く染められ、優しく細められた目は微かに揺れていた。


「お兄ちゃんが義妹である私に興味持ったんだなって思って、少しだけ嬉しいかな」


 あまりにも自然な流れでのブラコン妹。


 サウナから上がってぼうっと立っていたら、背後から膝カックンではなくローキックを浴びせられたかのように、俺はその場に崩れ落ちていた。


「くっ、突然ブラコン妹をぶつけてくるとは、やるな美優よ」


「え? ブラコン妹?」


「あれ? 違ったのか?」


「……ううん。多分それで合ってるよ」


 美優は崩れ落ちている俺に呆れるような笑みを向けながら、その頬の温度を少しだけ上げたようだった。


「ほら、お兄ちゃん。入って入って」


 そして、美優に招き入れる形で、俺は義妹の部屋に初めて入ることになったのだった。


 不思議とその頃には、今朝感じていたような気まずさはなくなっていたような気がした。


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