第33話 義妹の魅力とバブみ系妹
「い、いや、俺は実妹派だから、それを語るのは宗教上の都合で良くないんだよ」
「実妹推しって宗教とかじゃないでしょ」
美優は少しだけ呆れるような顔をした後、再びこちらに余裕のあるような笑みを浮かべてくすりと笑った。
「それでも、分からないってことはないんだよね? 教えてよ、お兄ちゃん」
「そ、そうだな。あくまで一般的に言われていることなら俺もーー」
「お兄ちゃん」
美優は途中で俺の言葉を遮ると、ベッドの方に移動してベッドに深く腰掛けた。
そして、こちらに体を向けて女の子座りをして、上目遣い気味な視線をこちらに向けてきた。
「ベッドに座って、私の目を見つめながら言ってみて」
「へ?」
「言えるよね、お兄ちゃんなら」
微かにこちらを挑発するような言葉遣い。それに伴って少し生意気に細められた瞳から、俺は確実にSっ気さを感じてしまった。
ドS妹に性癖がバレて、それを白状させられる兄の構図がそこにできてしまい、俺は美優の言葉に逆らうことができなくなってしまったのだ。
べ、別に、ドSな妹に何かをされることに興奮してるとかじゃないんだからねっ!
俺は大人しく美優の正面に腰を下ろして、至近距離にいる美優と見つめ合う形になった。
こんな状態で義妹の良さを語るって、色々とアウトな気がしてきたが、ドS系妹がそうしろというなら、仕方がない。
そう、仕方ないのだ。ああ、仕方がない。
俺は意を決して、義妹の魅力を語ることにした。
「義妹の良さというのは、血の繋がりがないことにある。血の繋がりがあることによる葛藤がない代わりに、作品次第ではトゥルーエンドではなくてハッピーエンドを迎えることも可能になるのだ。そして、最近は義妹だけど昔から一緒にいるパターンというのがある。そうすることで、妹の三大要素である思い出を重ねながら、法的に結婚もできるし、付き合えるし、それこそ大人の契りを結んでも何も問題はーー」
「ふーん。お兄ちゃんは、義妹に対してそんなこと思ってたんだぁ」
美優は俺の言葉を余裕のある笑みを浮かべながら聞くと、こちらを挑発してくるように口元を緩めて、そんな言葉を口にした。
そんなえっちな漫画とかゲームに出てくるような妹を前に、俺は動揺を隠せるはずがなく体を熱くさせてしまっていた。
「くっ、これがドS妹の魔力かっ! こ、殺せっ!」
「え、ど、ドS妹? えっと、お姉さん妹のつもりだったんだけど」
俺が心から漏らした声に反応するように、美優は少し驚きながらそんな言葉を口にしていた。
どうやら、美優と俺の間で妹の認識にずれがあったようだった。
あれ? ノリノリだったのって俺だけ?
……いや、ていうか、美優の中のお姉さんのイメージえちえち過ぎないか?
「お姉さん妹? なんだその互いの属性で相殺されそうな属性は。そんな妹は存在しないーーこともないか」
「あるの?」
「お姉さんというよりは、その上だな。バブみ系妹ならいる」
「バブみ系?」
美優は俺の言葉を聞いて、初めて聞く単語を聞くかのように小首を傾げていた。
そうか。もしかしたら、バブみというのはまだ一般的な用語として扱われていないのかもしれない。
確かに、テレビとかで清純派アイドルという文句は聞くが、バブみ系アイドルというのは聞いたことがない。
そうか、まだオタクと一般人の間には高い壁が反り立っていたのか。
俺は言葉の意味を理解していなさそうな美優のため、いつものようにオタク談義をするように口を開いた。
「バブみとは年下の女の子に対して、赤子のように甘えたいという感情だ。これは、年下女性の溢れんばかりの母性に当てられて、つい甘えたくなるという感情を表現した属性だ。これは妹属性と掛け合わせることで、その効果を倍増するものだと俺は考えている。昔からいる家庭的な妹キャラ。これはそのバブみの感情を強く刺激する感情であってーー」
俺がそんなふうにいつも通りにオタク談義をしていると、美優が控えめに俺の服の袖をちょいちょいっと引っ張ってきた。
何だろうかと思ってそちらに視線を向けると、そこにはこちらに両手を広げている美優の姿があった。
そして、美優は優しそうな笑みを浮かべながら、言葉を続けた。
「お兄ちゃん、妹の私に甘えてみる?」
「あまえりゅーー!!」
「え? あっ、お、お兄ちゃん?」
両手を広げてこちらに微笑みかける妹を前に、俺は無意識下で何かを言って美優に抱きついていた。
ちょうど美優のお腹付近にダイブしてしまい、俺は美優の腰に手を回してそのまま制服越しのお腹に顔を埋めてしまいーー
「……はっ、しまった! 深層心理にあるバブみが刺激されてしまった!」
さすがにこれはマズいだろうと思って、俺は慌てて距離を取ろうとした。
しかし、俺が美優のお腹から顔を離そうとすると、慌てたように俺の後頭部に回され手によって、そのまま顔を美優のお腹に押し付けられてしまった。
「美優?」
「い、今、顔上げちゃダメっ」
「えっと、な、なんでーー」
「あと、そこであんまりしゃべらないで。く、くすぐったいから」
美優はそう言うと、俺の頭が離れていかないように、少しだけ強く自身のお腹に俺の顔を押し付けてきた。
ただ時計の音と、美優の呼吸音だけが聞こえる中で、俺は美優のお腹に顔を埋めていた。
そこには美優の制服から感じる微かに甘い香りと、柔らかくもハリのあるお腹の感触だけが残っていた。
呼吸の度に揺れる美優のお腹の感触は妙に煽情的で、俺は何か新たな扉を開けそうになってしまうのだった。
それから少しして、後頭部に回されていた手が少しだけ緩んで、俺の頭を撫でてきた。
温もりと優しさと良い香りが広がる世界で、俺は確かにバブみという感情を刺激され続けることになったのだった。
「もうちょっとだけ、このまま……ね?」
そんな美優の言葉に返答すること代わりに、俺はもう少しだけ強く美優のお腹に顔を埋めたのだった。
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