第10話 お手柔らかにですか?
午後三時前。
暁商事のメインバンクの応接室にて。
コンサルタント業務を請け負った事と、即時解約せざるをえない状況になった事を伝える為だけに足を運んで待っていた。
「………………………………………お待たせしました。副支店長の瀬先と申します。」
「山朽コンサルティングの盛山と申します。こちらは片山です。よろしくお願いしますと言いたいところですが、業務開始前に撤退する事になりそうでして。」
「………………………………………どういうことでしょうか?」
瀬先副支店長は、三十代半ばだろうか。
複数いるであろう副支店長の中でも、最年少ではないだろうか。
逆に言えば、我々が軽く見られていると言うことだろうな。
「暁社長と面会のアポ取りしたのですが、半ば騙し討のような形で空振りしまして。社内の意思統一が出来てない以上は、手を引かざるを得ないでしょうから。」
「………………………………………貴重な情報、ありがとうございます。」
今この瞬間に、暁商事の運命が決まったようなものかな。まあ、普通ならだけどな。
「と、言いたいところですが、ここから巻き返したいのでご協力願えますか?」
※※※※※※※※※※
「盛山さん、あれで良かったんですか?」
「良いも悪いも、手付金貰ってる以上は、最低限の事はやっておかないとね。」
「………………………………………あれが、盛山さんの、『最低限』なんですね?」
副支店長との打ち合わせは、予定よりも一時間以上長引いて。
最後には、瀬先副支店長の顔は引き攣っていたけどな。
「まあ、これで、乗っ取り防止と資金ショート対策は終わったから、暁社長が帰国するまでは持たせられるだろう。片山君は、暁社長に概要を知らせておいてもらえるかな?」
「………………………………………私の業務外ですので、高くつきましてよ?」
駐車場まで歩きながら、片山君の手を取って握りしめながら、
「ん、お手柔らかにな!」
「こんなに硬い手を出してきて、お手柔らかにですか?」
「ん、指を絡めながら言うセリフじゃ無いぞ?」
「せっかく、これからデートなんですから、許しましょう。」
………………………………………なんか違うような気がするけど、明日の朝までは片山は僕のパートナーだからな。
「ん、許す。」
「あ〜、偉そうに!」
どつちが偉そうか、後で勝負しないとな。
目指せFIRE!モブ山イッチの、コンサルティング業見習い、修行中? じん いちろう @shinn9930
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