第9話 何処で貸しを作ってくるんだよ!
散々待たされて、本気で帰ろうかと思う事何度も。
大人の対応を心掛けないとと思いながら、涼しい顔の片山とチャットアプリで会話中。
『どうする?本気で帰ろうか?』
『このままホテル直行で良ければ帰りましょう!』
『却下!違約金が発生しかねない。』
『出直しなら、言い訳が立ちますが。』
『もう一度来るのは嫌だ。』
『じゃぁ、大人しく待ちましょうか。』
本気で待つのに飽きてきたぞ。
「片山君、もう一杯コーヒー飲むか?」
「この裏に個人経営のコーヒーショップがありまして。自家焙煎のオリジナルブレンドが最高だそうですよ。」
「………………………………………いつも思うんだが、どこからその情報を仕入れてくるんだ?」
「情報は大事ですよ。価値を決めるのはその情報を使う人次第ですけどね。」
「おいっ、答えになってないぞ?」
「情報源は黙秘します。」
雰囲気で誤魔化されてるような気がしないでもないが。
コイツと会話でバトルしても勝った試しが無いから、そろそろ暇つぶしも潮時かな。
『銀行、間に合うのか?』
『待たせます。一つ貸しが有るので。』
………………………………………………チャットアプリで会話再開したら、恐ろしい答えが返ってきたぞ。
『何処で貸しを作ってくるんだよ!』
『あちこちで、作れますのよ。』
『でも、社長が来ないと話が先に進まないからな。』
『じゃあ、無理矢理進めましょうか。』
おや?何処へ電話してるんだ片山君よ。
「…………………………山朽コンサルティングの片山と申します。暁社長でいらっしゃいますか?」
………………………………………何で社長の直通電話番号知ってるんだよ!
「………………………………………はい、午後一でアポ取りしたのですが、社長がご不在でしたので………………………………………」
不穏な内容の通話を、わざと周りに聞こえる大声で続ける片山君。
本気でコイツ、怖いんですけど。
「盛山さん、暁社長は今海外だそうです。帰りましょうか。」
………………………………………帰っていいのかな?
「では、暁社長、私達はこの件から手を引かせていただきますね。」
返事も聞かずに通話を切断した片山君。
「さあ盛山さん、ホテル予約の九時までどうやって時間潰しましょうか?」
「………………………………………潰す必要、無くない?みなとみらいなら、普通に買い物して散歩で良くないか?」
「でも、その前に銀行だけ確認のために行きましょうか。」
手を引くにしても、やることだけやって報告書だけは出さないと不味いか。
仕方ない、さっさと行って終わらせましょうか。
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