第2話 幼馴染の行方
適当に村の中を散策したあと、俺は街に戻った。あまり長く散策しすぎても村の人たちに怪しまれてしまうかもしれない。
そして俺は一旦昼ごはんを食べるために家に帰った。
「ただいま」
「あら、おかえりなさいリッケ。どこ行ってたのかしら?」
母親であるフローラが出迎えてくれた。
リビングの方からいい匂いがするから、昼ごはんはもう出来ているのだろう。
「えっと…散歩をしてたんだ」
「あらそう。昼ごはんは出来上がっているから食べなさいね」
「うん」
本当は散歩ではなく散策だ。今日調べてきたのは、村の西端にある小さな洞窟だ。小さい頃からあの洞窟には近づかないように母さんから言われていた。
だからこそ興味が湧くものだ。あの洞窟には何かしらの手がかりがあるに違いない。だから俺はあの洞窟に向かったのだが、この村に
どうすればあの洞窟に入れるだろうか…別の場所から穴でも掘るか?でもそんな大胆なリスクを犯すこともできない。夜中にこっそり忍び込むか?いや、もしそれが母さん達にバレたらどうなるか分からない。
そんなことを考えながら昼ごはんを食べ終えた俺は、約束を思い出した。ユーベルとの約束だ。あまり待たせるわけにも行かない。
(とりあえず、ユーベルのところに行くか…)
◆◆◆◆◆
ユーベルに会いに行くために、俺は長老の家に来た。
「ギヌアードさん!」
「なんじゃ、リッケか。何の用かね?」
「ユーベルに会いに来たんだ。どこにいるかな」
俺がユーベルの居場所を尋ねた途端、長老のギヌアードは急に険しい顔になった。
「ユーベル?誰じゃそれは」
「………は?」
おいおい、この人は何を言っているんだ。冗談のつもりか?いや、冗談にしては物凄く圧を感じる。
「何言ってるんだよギヌアードさん、ユーベルだよ」
「知らぬと言っておるじゃろう」
「ギヌアードさんの孫でしょ?」
「知らぬと言っておるじゃほうが!」
ギヌアードは物凄い剣幕で怒鳴ってきた。
(一体、何が起きているんだ?)
「っ…はぁ、もういいよ」
何があったかは知らないが、これ以上この男に構っていられない。
◆◆◆◆◆
俺は村中を探し回った。
よく一緒に遊びに行く見晴らしのいい高台に、よくユーベルがお使いに行くパン屋に…とにかく思い当たる場所を探し回った。
だが、どこにも彼女の姿は見当たらない。
そもそも10歳が、外界を断絶したこの村で、行く場所なんて限られているはずだ。
さっきの長老の様子といい、何かがおかしい。まさか、ユーベルはこの村にまつわる禁忌でも知ってしまったのだろうか?
考えていても仕方がない。ユーベルが戻ってくるとしたら家に訪ねてくるはずだ。一旦家に帰るとしよう。
◆◆◆◆◆
家に帰ると、仕事中のはずの父親、ブライスがいた。
「父さん、今日は仕事終わったの?」
「……いいや。大事な話がある」
「…え?」
このタイミングで話があると言われると、嫌な予感しかしない。
「………ユーベルは、村の生贄に選ばれた」
「……は…‥え……?」
何を言っているんだこの男は。生贄だと?
この村には生贄の風習があったのか?だとしたら、なぜユーベルが生贄なのだ。
父親は物凄い剣幕で俺にこう
「リッケ。お前、村の隅々まで散策しているみたいだな?」
何?なぜブライスがその事を知っているんだ。誰かが俺の動向に気づいて密告をしたのだろうか。
ブライスはリッケの肩を掴み、もう一度問う。
「答えろ。お前、この村の真実について調べようとしたのか?」
「と、父さん?」
「質問の意味がわからないか?お前はこの村から出てはいけない理由を探ろうとしたのか?」
どう答えるべきなのだろうか。この様子だと、「はい、ただの興味だったんです。好奇心だったんです。許してください」なんて言っても許される様子ではないのは察した。
「な、何のことだよ父さん。変なことを言うのはやめてよ」
「……その目は嘘をついているな。お前、自分が何したか分かってないようだな。それは仕方のない事だ。でも、この村の掟を破ってしまった以上は無事では済まないんだ。お前は教団の逆鱗に触れてしまったんだ」
何の話をしているのかさっぱり分からなかった。村の掟?暗黙の了解みたいなものか?
「お前がこの村の禁忌に触れようとしてしまったせいでな、ユーベルは教団に連れ去られた。
(なん…だと?)
「な、なんでユーベルなんだよ。その話が本当だとしたら俺が連れていかれるんじゃないのか?どうなんだよ、父さん!」
「なぜだか知りたいか?」
「ユーベルはお前の身代わりになったんだ」
アボイド・クライシス〜前世で幸せになれなかった俺が村の看板娘と結婚しちゃってもいいんですか?〜 ただの通りすがり @tadanotoorisugari
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