第13話 いつも通り(?)が一番

 使う教室や場所への移動は慣れた。


 俺は多分友人だと言える人達と一緒に昼食を食べるため、約束の場所に向かった。


 「おー来た来た」


 「こっちだぞ」


 山本と佐藤と言う、他クラスだけど同じ部活で親睦を深めた友人である。


 互いに種族は明かしてない。そのような流れになったら俺は全力で止める。だって手の甲の紋章見せる流れになるもん。


 何が悲しくて自分の種族がサキュバスと告発しないといけないのか。


 それに良くも悪くもコイツらも男子高生だ。


 「土日何してた? ちなみに俺は二層で迷って、助けてもらったんだ。美人に」


 「まじかよヤマモト!」


 「まさか⋯⋯」


 ヤマモトの発言に俺とサトウは戦慄する。


 「ああ。仲良くなれた⋯⋯と思ってた」


 「何があったんだ?」


 ヤマモトは飲み物を一口飲んで、深いため息と遠い目を同時にする。


 「告ったら笑われた。その時なんて言われたと思う?」


 「勘違い男」


 「整形して出直せ」


 「お前ら辛辣すぎないか?」


 結果として何の成果も得られなかった土日にため息を漏らすヤマモト。


 「ブスが調子に乗るな。彼氏の目の前だから猫被っただけに決まってる、だってよ」


 「それは⋯⋯」


 「ウケ⋯⋯残念だったな」


 コイツはモテるために探索者になったらしいが、現状モテている様子は無い。残念だったな。


 「じゃあ次は俺だな。俺まぁ、普通に稼いだな」


 「激闘とかはなかったと」


 「そうだな。強いて言えば、パーティを誘った人間全員に断られた事くらいか⋯⋯ヤマモト、俺とパーティを組まないか」


 「女が逃げそうだからヤダ」


 サトウが俺を見て。


 「ヤジマは?」


 「絶対ヤダ」


 「お前ら俺の友達だよな?」


 そのままの流れで俺が話す番だ。


 俺の土日は⋯⋯。


 「まぁ、色々とあったよ」


 「そうか」


 「お前も苦労してるんだな」


 察してくれたのか。コイツらは何も言わずに俺の肩に手を置いた。


 その優しに俺は感激をあら⋯⋯


 「あ、キリヤはっけーん! 珍しく教室の外で食べるからびっくりしたぞ⋯⋯友達?」


 後ろから飛びついてきたアリス。


 その様子を見た二人が固まった。


 「そうだよ」


 「そっかー。ついにキリヤにも友達が⋯⋯お姉ちゃん嬉しい」


 「誰が姉だ誰が」


 そう文句を言うと、ワナワナと震えるのは男二人。


 どうしたのだろうか?


 「あ、はじめまして。キリヤの幼なじみであるナグモです。よろ」


 「ええよろしくお願いします」


 「こちらもヤジマとは仲良くさせてもらっています」


 未だに俺にくっつているアリスに対して、紳士的な振る舞いをしだした。


 声をイケボに近づけている気がする。⋯⋯ぶっちゃけ鳥肌モノ。


 「そのつかぬ事を聞きますが」


 「お二人は恋人関係で?」


 アリスと目を合わせて、同時に鼻笑いをする。


 「「コイツと恋人? ないない」」


 指を互いに押し付けながらそう言うと、二人が青筋を浮かべる。


 二人に引っ張られて、人気のないところに移動した。


 「被告ヤジマキリヤ、何か弁明はあるか?」


 「弁明など不要。即死刑だ」


 「イエスボスぅ」


 俺を本気で殺しそうな殺意が当てられる。


 なぜだ!


 「おい待て。俺が何をしたって言うんだ!」


 「お前は俺らが魂を売ってでも親しくなれないあんな美人な人と」


 「肉体的接触してキャキャしている! これは重罪だ!」


 「なにぃ!」


 「何が土日色々あった、だ! あんな人が近くにいて良くもそんな事を口にしたな!」


 「どこまで進んでいるんだ、あぁ?!」


 二人が鬼となり、俺は何も言えずにただ、時間を過ぎるのを待っていた。


 この二人にとっては俺達の関係が羨ましいようだが、やはり分からない。


 「どったの三人とも。昼の時間無くなるよ?」


 「ええ。少し大切な話をしてまして」


 「そうですとも。どうですか? ナグモさんも」


 「あ、良いの? じゃあおじゃましようかな」


 そして俺を置いて三人が机のある場所に戻った。


 放心状態から戻った俺も向かい、さっきの席に座ると両サイドにヤマモトとサトウが座る。


 ドンッと座り俺に威圧をかけてくる。本能的に何かしたら死ぬ、そう感じた。


 「ん〜今日も美味しい。いつもありがとねキリヤ⋯⋯あれ? 皆またどっか行ったの?」


 再び人気のない場所に移動させられた。どこからか持って来たシャベルを突き立てられて。


 深い事は聞かないでおこう。どこから持って来たとか。


 「どう言う事だ?」


 「⋯⋯栄養管理をしっかりしている俺がついでにアリスの弁当を作っている、それだけだ!」


 「本当だねヤジマくん。嘘だったら⋯⋯」


 「嘘をつくメリットを俺に教えて欲しいね」


 無事解決? して戻った。


 アリスが呑気に「おかえり」と言って来て、少しだけイラッとしたのは気のせいだろう。


 これはアリスのせいじゃ⋯⋯ないよな?


 「ヤジマさん」


 後ろから話しかけられた。透き通った声音だ。


 この声の主を俺どころか、両サイドの野郎達も知っている。


 クジョウさんだ。


 「どうしたのクジョウさん」


 ふ、二人の殺気が。


 「いや。見かけたから話しかけたんだけど⋯⋯ダメだった?」


 「ダメ⋯⋯じゃないです」


 その後なぜかアリスが話しかけて二人が仲良くなり始めた。


 そして俺達の友情に亀裂が入った。


 時間が過ぎ去り、俺の前に二人が歩いて、時々こっちを見ては中指を立てて来る。


 「裏切り者め」


 「仲間だと思っていたのに⋯⋯」


 「待ってくれ。二人の話についていけない」


 部室に入って、荷物を置く。


 「平然な顔して美人二人と普通に⋯⋯」


 「塩まけ塩」


 俺はコイツらに嫌われてしまう事をしてしまったのだろか?


 別に俺が直接何かした訳じゃないけどな。


 「あ、ヤジマさんこんにちは」


 「あ、クジョウさんさっきぶりこんにちは」


 おっと。なんか殺気が強まった。


 適当な席に座り、部長が挨拶を始めて今日は何をするかと言う話になる。


 隣にクジョウさんが普通に座ったせいか、ヤマモト達からの殺気がずっとこちらに向けられている。


 肌がその殺気をバチバチに感じて鳥肌が止まらない⋯⋯反撃しそうになる。


 「今日はダンジョンに行ける気分じゃないな」


 帰り道にそう呟いた。


 アリスも部活終わる頃だろうし迎えにでも行こうかな。


 そう考えてテニスコートまで歩こうとしたら、後ろから蹴りが突き出されたので、横ステップで躱した。


 「ヤマモトかサトウかしらんが、不意打ちとは卑怯なり!」


 俺が振り向くと、そこには金髪碧眼のロングストレートヘアの無表情な女性が立っていた。


 昼の事もあり警戒していたのだが⋯⋯あいつらでは無いのか?


 それはそれでなぜか身の危険を感じる。


 てか、気配の読みが甘いな。精神的な影響が出てるのかな。


 「⋯⋯その人達とは友人じゃなかったの?」


 「昼の事でそれが怪しく感じてます」


 「そう。帰ろうか」


 そうだな。帰るか。


 「いや、ナチュラルに帰らさないからね! なんで不意打ちを!」


 「歓迎会の模擬戦で一撃も与えられなかったから」


 「模擬戦でもなんでもない不意打ちで一撃与えられてクジョウさんは満足ですか?」


 「そうね。ごめんなさい。今後は正々堂々、真正面から攻撃するわ」


 「できれば模擬戦でお願いします」


 校門まで一緒に歩いて、そこからアリスが合流して途中まで三人で帰った。


 途中でクジョウさんが抜けた。


 「⋯⋯あの子めっちゃ可愛くない! ヤバくない! あんな人がキリヤごときに話しかけるってヤバくない!」


 「ナチュラルに貶すなおい」


 夜、俺は自分の部屋で正座していた。


 飛行練習を考えているのだ。


 種族の肉体を使いこなすのも、強くなるには重要な事である。


 「防具は破いて翼広げちゃったし、服は脱ぐ必要あるよね」


 俺は上着を脱いで、サキュバスになる。⋯⋯やっぱ外でもサキュバスぅ!


 「⋯⋯これがサキュバスの初期衣装⋯⋯もう下着やん!」


 布面積少ない!


 俺は飛行練習を部屋の中だけではできなかったので、諦めて人間に戻り寝た。




◆あとがき◆

お読みいただきありがとうございます!

★、♡、フォロー、とても励みになります。

この作品を始めてから一週間経ちました。

なので、今日の午後8時くらいにもう一話投稿します。

来てくれると嬉しいです。

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